65 お隣さんと夏祭り
「ほれ! シャルルに杏子、妾に続くのじゃ!」
「いえーい、あっちの屋台いくのですよー!」
「あ、ちょっと待って下さいよー!」
浴衣姿のハイジアが、同じく浴衣を着た2人を引き連れて駆けていく。
「なんじゃこの珍妙な料理はー!?」
「ふふーん。これはですねぇ……」
はしゃぐ彼女たちの手にはフルーツ飴が握られている。
定番のリンゴ飴からイチゴ飴、果てはブドウ飴。
色とりどりのそのフルーツ飴が、同じく色鮮やかな浴衣姿によく映えている。
「おう! あまり遠くにはいくんじゃねーぞ!」
「はーい、わかっているのです!」
時刻は夕暮れ。
そしてここは、近くの神社の境内。
いま俺は、お隣さんを連れて夏祭りへとやってきていた。
通りを挟んで右手左手に、たくさんの祭り屋台が軒を連ねている。
多くの客でごった返すその通りを、ハイジアとシャルルが人混みを縫うように走り回る。
なんとも器用な走り方だ。
そんな2人にひいこら息を切らして追いついた杏子が、したり顔で屋台のアレコレを説明している様子が、なんとも微笑ましい。
「ふふ……シャルルのヤツ。嬉しそうにはしゃぐではないか」
俺の隣に並んだマリベルが、眩しげに目を細めた。
夏祭りの今晩ばかりは、この女騎士も聖騎士の装いを脱ぎ捨て、浴衣姿になっている。
「……お、おう」
マリベルが金の髪を耳に掻き上げた。
その仕草や見慣れない格好に、トクンとひとつ胸が脈打つ。
彼女が着ているのは、白の生地に青椿の花が所狭しと描かれた、清涼感のある浴衣だ。
それは楚々とした立ち振る舞いのマリベルに、よく似合っている。
「ふふふ……」
笑みをこぼした彼女は、流れるような綺麗な髪をアップに纏めている。
衣紋から僅かばかり覗く、白いうなじが艶めかしい。
俺は少しの間ポケーッとして、マリベルの姿に目を奪われる。
「コタロー。……おい、コタロー?」
「お、おうッ!? なな、なんだ!?」
思わず見惚れてしまっていた。
「ボーッとしていたぞ? 大丈夫か?」
「な、なんでもねえよ!」
つい誤魔化すように乱暴な口調で受け答えをして、そっぽを向いてしまう。
だがすぐに俺は、照れたように鼻の頭を指で掻きながらマリベルに向き直った。
「……つかマリベルもアイツらに混ざって、屋台見物でもして来たらどうだ?」
「ふふ、まぁそれも一興ではあるがな」
マリベルは遠くまで投げかけるような視線を向けて、賑わう通りを眺める。
「私はこうして、のんびりと歩いて回るくらいで丁度いい」
「……おう。そっか」
会話が途絶えた。
そのままマリベルと肩を並べて通りを歩く。
そんな俺たちの少し後ろを、フレアとルゼルが屋台を冷やかしながらついてくる。
「…………これ、なに?」
「それはねぇ。確か『ミルクせんべえ』だったかしら?」
ルゼルは祭り屋台はこれが初めてだ。
キョロキョロと物珍しげに辺りを見回すルゼルに、初詣で俺たちと屋台を既に経験済みのフレアが、あれこれと教えている。
「ふはははは! 見よ、これが妾の真の姿なのじゃ!」
「わたしも! わたしも、この狐のお面が欲しいのです!」
「うわー! ハイジアさんもシャルルさんも、そのお面、似合ってますねぇ!」
アイツらも楽しんでいるようだ。
今度はお面屋を賑やかしている。
店番のおっちゃんも、笑顔で彼女たちを見守っている。
少し歩みを速めて、俺はハイジアたちに近づいた。
「よし、オヤジ! その仮面をくれ!」
「あいよ、毎度」
「つか、杏子ちゃんも好きなお面を選べ! ほら!」
「えー!? 私もいいんですかぁ?!」
「おう! もちろんだ!」
オヤジに代金を支払う。
買ったばかりのお面を被って、彼女たちは上機嫌だ。
振り返ればマリベルが、騒ぐ俺たちを眺めて微笑みながらついてきていた。
夏の夜というのは、ある種独特な雰囲気があるように思える。
それは湿った草の匂いだったり、肌に感じる空気の蒸し暑さだったり、喧噪に紛れて聞こえてくる鈴虫の鳴き声なんかも、夜の情緒を彩ってくれるものだ。
そんな空気を楽しみながら、俺はのんびりと祭りの境内を歩いて回る。
手に持った缶ビールを煽りながら、いくつもの屋台を冷やかし歩く。
祭りの日のビールは最高だ。
「んく、んく、んく……ぷはぁあッ!」
屋台の鉄板からむわっとする熱気が感じられた。
そこかしこから漂ってくるソースの香り。
スマートボールや射的に輪投げ、金魚すくい。
古めかしくも趣深い遊戯に夢中になる子どもたち。
飲み歩きながら、自分がいま、夏祭りのただ中に身を置いていることを実感する。
(こういうのも乙なもんだなぁ)
賑わう人々を横目に流し見ながら、境内をゆっくりゆっくり歩いて回る。
隣を歩くマリベルも、同じようにして祭りの雰囲気を肌で楽しんでいるようだ。
「おい、コタロー」
「おう、どうした?」
「あれはなんだ? 初詣のときには見なかったが」
マリベルが慣れない浴衣の袖を気にしながら、ある屋台を指差した。
「へえ、つか最近はこんなものも売ってるのか」
キュウリの一本漬けに完熟トマトや水茄子。
そんなものを売っている涼しげな屋台だ。
氷の上に晒されて、キンキンに冷やされた野菜が美味そうである。
これは夏真っ盛りの、この時期にしか見ない屋台だろう。
「おう、ちょっと貰ってみるか! 兄ちゃん、キュウリを2本くれ!」
「あざまっすー」
受け取ったキュウリの1本をマリベルに手渡した。
彼女は手に持ったそれをしげしげと眺めたあと、思い切りよく齧り付いた。
「いざッ!」
パキッと軽快な音を立てて、キュウリがポッキリと折れた。
小気味の良い音だ。
マリベルはそのまま奥歯で、ポリポリとキュウリを噛んで味わっている。
「ふむ……面白い食感だな。んぐんぐ」
マリベルはふた口目を囓りながら、口をもごもごと動かしている。
「というかコレはアレだな。スライスされたのを食べたことがあるな」
「そういやそうだな。つか、だからいつもの『くわっ!』てのは、やんねーのか?」
「……ん? 何を言っているんだお前は」
無自覚なやつめ……。
そんなことを考えながら、俺も一本漬けに齧り付いく。
――パキンッ
氷の上に晒されて、キンと冷えたキュウリが心地よい。
浅漬けの優しい味と、瑞々しいその食感を楽しみながら、奥歯でシャクシャクと噛み砕いていく。
つかこれは、ビールが飲みたくなるな。
「んく、んく、んく……」
ビールでキュウリを喉の奥に流し込む。
「……ぷはぁ!」
こういうのもアリだ。
満足げに息を吐くと、マリベルが羨ましそうに俺の顔を眺めていた。
「なんだコタロー。お前だけそのように、美味そうにビールを煽りよって」
「お? おう、悪い悪い。ほら、アンタも飲むか?」
片手に持ったビールを差し出してやる。
すると途端にマリベルの挙動が怪しくなった。
「んあッ!? の、飲むかって、お、お前ッ!?」
マリベルがビールを受け取らない。
それどころか、顔を赤くしてなんかワタワタし始めやがった。
「どうしたマリベル? つか飲まねーのか?」
「ん、んぁあ……それは、お、お前が飲んでいたビールだろうッ!」
「――あッ!?」
言われてからやっと自分の行動に気付いた。
気恥ずかしくなって、伸ばした手をおずおずと引っ込める。
もしかしたらいま、ちょっと顔が赤くなってるかもしれん。
「なになに? なんなのお兄さん? マリベルとふたりして雰囲気だしちゃって!」
「…………コタローの魂から、いい匂いがする」
背後からフレアとルゼルが囃し立ててくる。
「う、うっせーよ!」
その言葉にうまく言い返せずに、俺たちは顔を赤くしたまま俯いた。
雑踏の中に見知った顔を発見した。
「あれ? 虎太朗先輩じゃないですか」
むこうもこちらを見つけて声を掛けてきた。
小都だ。
「げっ、ルゼル!?」
どうやらサタンも一緒のようだ。
どちらも浴衣姿である。
(ほう……案外似合ってるな)
小都はともかく、サタンもしっかりと浴衣を着こなしていた。
くるりと巻いた山羊の角。
ボーイッシュな短めの白髪に褐色の肌。
男にも女にも変じることが出来るサタンは、今は女の子の姿だ。
ひまわり柄の黄色い浴衣が、活動的な見た目によく似合っている。
「おう、おふたりさん! 奇遇だな!」
「…………サタンちゃん」
そそくさと逃げだそうとするサタンを、小都が捕まえた。
挨拶を交わして2人と合流する。
「よう、サタン。今日は女の子なんだな!」
「ん? ああ、これか。……だって男の姿をとると、コトが騒がしいんだ」
「も、もう、サタンちゃん! 虎太朗先輩に、変なこと言っちゃダメじゃない!」
小都が慌ててサタンの口元を押さえる。
そんな様子に俺は内心ホッと胸を撫で下ろした。
なんだかんだで、仲良くやってるみたいだ。
今日だってふたりして祭りに出掛けてきているくらいだし、サタンを小都に任せた件については安心していいだろう。
「おい、コタロー。こっちの子どもは誰だ?」
そう言えばコイツら、あんときは酔い潰れてたからサタンとは実質初見か。
ハイジアにしても二日酔いでダウンしてたし、あんまり覚えてないだろう。
俺は好き勝手散らばっているみんなを呼び寄せて、サタンを紹介することにした。
「おう! コイツはサタンだ! つかサタン! アンタもよければ、自己紹介をしてくれ!」
全員の視線がサタンに集まる。
注目を浴びた彼女は「うッ」と呻いてから目を泳がせ、キョドり始めた。
なかなか自己紹介をしようとしない。
「…………サタンちゃん、自己紹介は?」
「ひぅぃッ!?」
ルゼルの言葉に小さな褐色の体がビクッと震える。
サタンはルゼルを気にして若干挙動不審になりながらも、おずおずと名乗り始めた。
「ぼ、僕はサタン。七つの大罪の一つ『憤怒』を司りし大悪魔。欺瞞に満ちた世界を惑わす神の敵対者。七大悪魔王が筆頭にして黙示録の赤き竜。そ、そこにいるルゼルと同じ、悪魔王だ!」
ルゼルがサタンに近づいて、いい子いい子と頭を撫でた。
だが手に頭を置いたとき、サタンがまたビクッと体を縮めたのを俺は見逃していない。
「ほう、悪魔王か……」
マリベルが呟いたのを皮切りに、お隣さんたちも名乗りだす。
「我が名はマリベル。聖リルエール教皇国、破邪の三騎士がひとり。竜殺しの聖騎士マリベルだ!」
「そしてはわたしは、その妹のシャルルなのです!」
「可愛い巻き角ですねー! あ、私は杏子ですよー」
「あたし? あたしはフレア。レノア大陸四方に聳える守護の塔。そのひとつ、西方『煉獄の塔』の管理人。通称、赤の大魔法使いフレア・フレグランスよ!」
「妾は真祖吸血鬼ハイジア! 永久の闇が渦巻く夜魔の森。その支配者たる真の女王なるぞ――って、貴様。どこかであった気がするのう? はて……? どこじゃったかの……?」
相変わらず訳の分からん自己紹介だ。
俺は若干引き気味になる。
サタンもますますキョドりだした。
「な、なあ? つかなんか目立ってねえか?」
通りを歩く人々が足を止めて、不審者を見る目つきで遠巻きに眺めてくる。
これはちょっと移動したほうが良さそうだ。
「おう! 立ち話もまぁなんだ! よかったら小都とサタンも一緒に飯でも食わねぇか?」
みんなを誘って、すぐ側にある座敷を設けたテント屋台へと足を向けた。
「おーい! こっちタコ焼き、焼きそば、イカの姿焼きに焼き鳥。そんで牛串、豚串、焼きもろこし。あとはワンカップを8つくれ!」
テント屋台の料理を端から順に頼む勢いで注文していく。
程なくして酒と一緒に大量の料理が運ばれてきた。
テーブルに所狭しと並べられた屋台料理をまえに、各自手に持ったワンカップを掲げる。
「んじゃま、かんぱーい!」
酒をカチンとぶつけ合ったあと、各々好き勝手に食べ始めた。
「あ! 貴様フレア! それは妾の狙ってた焼きイカなのじゃ!」
「ふふーん! 知らないわねぇそんなことは。むぐむぐ……あぁ美味しい!」
「お姉ちゃん! わたしたちも負けてられないのです!」
「うむ! 箸を持てシャルル!」
「んくんく、ぷはぁ! いやーワンカップもなかなか美味しいですねー」
「…………タコ焼き。タコ2つ入ってた。嬉しい」
お隣さんたちの盛り上がりを眺めながら、俺は小都やサタンと酒を酌み交わす。
「小都もワンカップで良かったのか?」
「ちょっとだけなら、大丈夫ですから」
そういや、酒嫌いだった小都も少しずつ飲むようになってきたんだったか。
「小都もサタンもガンガン食ってくれ。早くしねーとアイツらに全部食われて、なくなるぜ?」
「それはそうなんですけど……ちょっと怖いというか」
「ぼ、僕はビビってないからな!」
言葉とは裏腹に2人とも尻込みしてしまっている。
だが無理もなかろう。
酒や肴を前にしたお隣さんたちの勢いは、祭りの雰囲気も相俟って、ある種異常だ。
「よし。ちょっと待ってろよ」
何皿か料理をかっ攫ってしまおうと腕を伸ばす。
するとそれより早く、お隣さんたちの輪から料理を手に持ったルゼルが寄ってきた。
「…………サタンちゃんも食べる」
「ル、ルゼルッ」
ルゼルはそのままキョドりだしたサタンの隣に座って、彼女の口にタコ焼きを詰め込んだ。
「うわッ、なにをする! やめろ――ムギュッ!」
「…………美味しい?」
「ムギュゥ……つ、詰めひょむな! んぐッ!?」
「…………もっと、食べる?」
これはある意味仲が良いんだろうか?
まぁ古い付き合いみたいだし、コイツらは放っておくことにして、小都と酒を酌み交わす。
「つか、こうして小都と差し向かいでワンカップを飲める日がくるとはなぁ」
「まだちょっとしか飲めませんけどね」
「それでも、だ。なんか嬉しいわ。……んく、んく」
口に含んだ酒がやたらと美味い。
今日は良い日だ。
「ぷはぁ! それでどうだ? サタンちゃんの様子は?」
「うまくやってますよ。サタンちゃんもお酒好きだから、いま先輩とこうしているみたいに、2人でよく晩酌してるんです」
「そっか。楽しくやってるんだな」
「ええ。サタンちゃん凄い食いしん坊なんですよー! お料理を食べながら、いっつも『美味しいぃッ……』って涙ぐむんです」
思い出したみたいに小都がクスクスと笑う。
本当にうまくやってるみたいだな。
「それはそうと、サタンがさっき言ってた、『男の姿をとるとコトが騒がしい』っつーのは何の話だ?」
「そ、それはッ――!?」
小都が慌て始めた。
「え、えっと……サ、サタンちゃん食べてるー?」
話を逸らすようにサタンへと振り返る小都。
視線の先では、ルゼルとサタンが交互にタコ焼きを摘まんでいた。
どうやらルゼルももう、無理やり食べさせるのは止めたようだ。
「お、美味ひぃ……、美味ひぃぃぃッ……」
「…………サタンちゃん大げさ」
「ルゼルお前! こんな美味しいものを食べて、感想はそれだけか!」
言うなりサタンは、またひとつタコ焼きに楊枝を刺して、ひょいと口に放り込んだ。
「ふわぁあ……美味ひぃぃいッ……。僕のほっぺた、落ちちゃうよぉ……」
サタンは頬に手を当てて、目をうるうると潤ませている。
「ね、虎太朗先輩? 可愛いでしょう?」
振り返った小都は、ホクホクした笑顔だった。
――ヒューン…………ドンッ、ドンドンッ
大いに酒を飲み、大いに肴を搔っ食らっていると、空から大きな音が聞こえてきた。
「ん? つか、花火か?」
――ヒューン…………ドンドンッ、パァンッ
「そうみたいですねぇ」
返事をした小都の顔は、酒のせいで少し赤くなっている。
「へぇ。いいタイミングで始まったじゃねーか……。おう、みんな! 花火だぞ、花火! ちょっと見てみようぜ!」
お隣さんたちを促す。
ちょうどそろそろ、河岸を変えて飲み直そうと思っていたところだ。
「花火とはなんじゃ、コタリョー? ……ヒック」
「ドンドンパフパフ鳴ってますねー! キャハッ!」
「……んあ?」
「なんだもう酔っちまったのかよ、アンタら! ほら、マリベルも呆けてないで! 花火みるぞ、花火!」
会計を済ませて座敷を立つ。
テント屋台から通りに出ると、いつの間にか暗くなった夜空に、丸い割物花火がちょうど大輪の華を咲かせたところだった。
「たーまやぁー! あははは」
「かーぎやぁー! えへへへ」
はしゃぐ子どもたちの掛け声が、どこからか聞こえてきた。
古風ゆかしき風情を感じる。
「わぁ……綺麗ですねぇ、虎太朗先輩」
「おう!」
「…………サタンちゃん見える? 肩車する?」
「ぼ、僕を子ども扱いするな!」
――ヒューン…………ドンッ、パラパラ……
「お! つか今のは確か万雷っつー花火なんだぜ!」
「なになに? あたしも撃っちゃっていいかしら?」
「ダ、ダメなのですよ、フレアさん!」
通りで大勢の人出に混ざって、夜空を彩る美しい花火を楽しむ。
何発もの見事な花火が、俺たちの目を楽しませてくれる。
そうして眺めていると、最後に一際大きな花火が夜の空を照らして、打ち止めとなった。
「わぁあ……」
どこかから感嘆の声が聞こえてきた。
通りの人々はみんな黙って空を見上げている。
俺たちも無言で夜空を眺めて余韻に浸る。
しばらくそうしていると、静かだった周囲の人々が口々に花火の感想を話し始め、通りは再び喧噪を取り戻した。
「……おう。凄かったな、花火!」
お隣さんたちも、小都たちも、みんな楽しそうに花火を語り始めた。
つか、そうだ。
この時期コンビニでも、花火売ってたよな。
「おう! 俺たちも公園で花火すっか!」
「いいのお兄さん? あたし凄いの撃っちゃうわよぉ?」
「だ、だからダメなのですよ、フレアさん!」
「…………私はもう少し飲みたい」
「花火をしながら飲めばいいのじゃ。……ヒック」
「みなさん、へび花火しましょうよー! うにょうにょー、キャハッ!」
「…………んあ」
お隣りのみんながワイワイと騒ぎながら、俺の提案にのってきた。
「虎太朗先輩。私とサタンちゃんもご一緒していいですか?」
「もちろん構わねーぞ! つか、元からそのつもりだ!」
「げっ!? ル、ルゼルと一緒!?」
ぞろぞろと祭りの夜道を歩き出す。
こうして、俺たちの夏の夜は更けていく。




