59 お隣さんと串カツ
お隣さん家の部屋のなか。
そこで真祖吸血鬼ハイジアがうんうんと唸り声をあげていた。
「これでどうかえ?」
手元のノートを開いて前に突き出す。
そこにはヨレヨレの文字で『ハ 人ツ゛ァ』と書かれていた。
「ぶっぶー。ダメね、ぜんぜん読めないわ」
赤ペンを持ったフレアが、文字の上に容赦なくバッテンをする。
「なッ、なんじゃと!? うぬぬ……しからばこれでどうじゃッ!」
ハイジアがノートに視線を落とす。
震えるペン先で殴り書きされた文字は『八 ィツァ゛』だ。
「はい、アウトー」
間髪入れずにまたもバッテンがつけられる。
ハイジアはノートに咲き乱れたいくつもの赤いバッテンの花をみながら、ムムムと眉根を寄せる。
「ええい、もう疲れたのじゃーッ」
筆記具とノートが放り投げられた。
ハイジアがゴロンとうしろに身を倒す。
手足を大きく投げ出して大の字だ。
「なにゆえ妾が、このように苦労をせねばならぬのじゃ!」
膨れっ面でジタバタし始めた。
頬杖をついたフレアがやれやれとため息をつく。
「なにゆえって、貴女から言い出したことなのよ? もう少し真面目におやりなさいな」
「ふんッ、もうやめなのじゃ!」
「懸賞に応募するんでしょう? あと少し頑張りなさいな」
「貴様が妾の代わりに書けば済むことなのじゃ!」
「はいはい、名前以外はあたしが代筆してあげるから。ほら、あとちょっと頑張るのよ」
「いーやーなーのーじゃーッ」
ハイジアがうつ伏せになる。
座布団に顔を埋めて足をバタバタさせる。
「まったくもう、このお子さまったら……」
「おう、フレア」
「なぁにお兄さん?」
「ハイジアのやつ、どうしたんだ?」
俺はひとり黙々と飲みの準備をしながら、寝転ぶハイジアに目を向けた。
ハイジアは不貞腐れてブーブー言っている。
「それがねぇ。この子ったらなんでも、雑誌の懸賞に応募したいらしいのよ。それで文字を教えてって言ってきたんだけど……」
「ほう。つか自分から何かを学ぼうだなんて、偉いじゃねえか」
「それはそうなんだけど、この体たらくじゃねぇ」
フレアがもう一度ため息をついた。
話しながらも俺は、箱からある器材を取り出してテーブルに設置する。
延長コードを引っ張りだして、電源をつなぐ。
「まぁ長い目でみてやればいいじゃねえか。別に今日中に覚えなきゃなんないわけじゃねえんだろ?」
「そうねぇ」
「つかそれよりフレア。アンタはもうこっちの字は書けるんだな?」
「あったりまえよ! あたしを誰だと思ってるの? ひらがなとカタカナはもう完璧で、簡単な漢字だって覚えたんだから!」
「へえ、そりゃ凄えなッ」
フレアはこう見えて頭がいい。
さすがは大魔法使いといったところか。
まだこっちに来てからそんな経ってねえのに、大したもんだ。
「ま、それくらいはね。……それよりお兄さん」
「ん、なんだ?」
「さっきから何をゴソゴソとしているの?」
フレアがテーブルに置かれた器材を繁々と眺める。
そこにあるのは大きめの四角い器具だ。
女魔法使いがスラリとした人差し指で、その器具をツンツンと突く。
「えっと……料理用の器材、かしら?」
「おうッ、こいつはなぁ、『電気フライヤー』だ!」
「電気フライヤー?」
「ああ、揚げモンを揚げるための道具だな。つか今日はこいつで、揚げたて熱々の串揚げを肴にビールでも飲もうかと思ってな!」
ハイジアの耳がピクリと動く。
不貞腐れて寝そべっていたガキンチョが、ムクリと体を起こした。
まったく耳ざとい吸血鬼だ。
「……コタローよ。それは美味いのかえ?」
「ああ、勿論だ! うんまいぞーッ」
串揚げは最高だ。
揚げたての串をビールで流し込むところを想像する。
それだけでゴクリと喉がなる。
「ほぅ……、貴様のその様子だと間違いはないみたいじゃな」
「ああ、間違いなく旨いッ」
「ふふん、それは楽しみじゃな。じゃが妾の舌はそんなに安くはないぞえ?」
「じゃああたし、マリベルやみんなを呼んでくるわねッ」
「おう! 頼むわ!」
ジュッと小気味の良い音がする。
次いでパチパチと油のはねる音が鳴る。
「じゃんじゃん揚げてくぞー」
言葉通りに次々と大容量の電気フライヤーに串を投入していく。
具材は基本の豚肉から牛肉、アスパラ、うずら、いか、たこ、玉ねぎ、エリンギ、貝柱――そして海老。
珍しいところでは、まぐろの頬肉なんかも串にして仕込んできた。
「コ、コタローさん、そろそろ揚がったのですか?」
「まぁ待て。つか慌てんなシャルル」
「おい、コタローッ。この串などはもう出来ているのではあるまいかッ?」
「まだだ。ちゃんと浮いてくるまで待て」
女騎士が姉妹揃ってそわそわしている。
訓練あがりでちょうど腹が減っているのだろう。
ふたりのお腹でギュルルと腹の虫がなく。
「うしッ、揚がったぞ!」
フライヤーから網を引き上げた。
ホクホクに揚がった様々な具の串を、ステンレス製のバットに並べていく。
まだ衣に纏った油をパチパチさせる串揚げは実に美味そうだ。
「おうッ、ジャンジャン食ってくれ! ソースの二度づけは禁止だかんなッ!」
串を浸せるほどのソースも用意してある。
てんこ盛りにしたキャベツだって準備した。
四方から我先にと手が伸びる。
「あちッ」
声をあげたのはシャルルだ。
揚がったばかりの串揚げは当然串も熱い。
ギュッと目を閉じて串を摘んだ指先をふーふーしている。
「おうッ、大丈夫かシャルル?」
「は、はいッ、あちち…………でも平気なのです!」
「そっか。アンタらも串が熱くなってるから――」
注意を促そうとしたが、もうすでにみんな平気な顔で熱々の串を掴んでばくばくと食べていた。
サクッと衣を噛む小気味のよい音がそこかしこから聞こえてくる。
「はむッ……んぐんぐ。こ、これはッ! んー、美味しいわねえッ」
「フレア貴様ッ、それは妾が狙っておった串なのじゃぞ! なッ、ルゼルッ! 貴様までッ、それは妾のじゃ!」
「…………早い者勝ち」
凄い勢いで串揚げがなくなっていく。
「あー、みなさん食べ過ぎなのですよ! わたしの分が無くなっちゃうのです!」
「つか心配すんな! ジャンジャン揚げるからなくなりゃしねーよッ」
電気フライヤーに次から次へと仕込んだ串を突っ込んでいく。
揚げ物を揚げたときの、食欲をそそる香りが部屋に漂う。
「ビールよビールッ! ルゼル、ちょっとそこの缶ビールを取って頂戴なッ」
「…………ん、はい」
「ありがと。うッふふーん、この肴にはビールが合うに違いないわよ!」
カコンッとプルタブが引き上げられた。
缶ビールを片手に持った女魔法使いが、サクッとアスパラ串を一口食べてから、ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを飲む。
「んく、んく、んく、ぷはぁッ! ッぁ最ッ高ね!」
「…………私もビール飲む」
「妾にも一本寄越すのじゃッ」
「ハフ、ハフッ! 熱いけど美味しいのです!」
美味そうに串を食べ、ビールを煽る。
みんなのそんな姿に満足しながら、俺も串揚げに手を伸ばした。
まずは基本の豚肉、いわゆる串カツからだ。
「おう、んじゃ俺も、いただきます!」
ソースにドボンと浸けてから、衣がへたる前に素早く串に齧り付いた。
サクッとした感触が歯からアゴに伝わる。
複雑で鮮烈な味のソースが舌を痺れさせる。
次に感じるものは熱さだ。
フワッと小麦が香る衣からジュワッと染み出した熱々の油が、口内を容赦なく焼いていく。
「――――ホフッ」
思わず息を吐いた。
火傷をしそうなほどに口内が熱い。
その熱に負けじと奥歯で噛み締めれば、たしかに感じる豚肉の食感、そして口一杯に広がる旨み。
それらを一緒くたにして、まとめてゴクンと飲み込む。
「たまらん! ビールだッ、ビールッ!」
カコンと蓋を開けて勢いよく缶を傾けた。
喉に直接叩きつけるようにビールを流し込む。
キレの良い苦味が口のなかを洗っていく。
「くあーッ! つか、うんめええーーッ!」
やっぱり揚げモンにビールは相性抜群だ。
次はどの串を食おうか?
貝柱なんかもサクッとしてモチッとした食感が楽しい。
俺は次々と串を揚げながらも、みんなに負けじと揚がったばかりの串にサクサクと食らいついた。
ふと視線を隣に向ける。
すると今しがたタコの串揚げをビールで胃に流しこんだばかりのマリベルと目があった。
目ヂカラが強すぎてちょっと引いてしまう。
マリベルはみているそばから次々と串に手を伸ばす。
サクッと食べてはカッと目を見開き、ぶつぶつと何かを呟いている。
その異様な様子はぶっちゃけ怖い。
たが俺は意を決して尋ねる。
ここは聞かねばならないところだ。
お約束というヤツなのだ。
「おうッ、マリベル! どうだ、美味いか?」
マリベルがゆっくりと首を回してこちらを振り向いた。
ギギギと擬音が聴こえてきそうだ。
「美味いか、だと……?」
「お、おう…………」
女騎士がクワッと目を見開いた。
「美味いに決まっておろうがッ! そもそも美味い不味いの話しではないッ! そのような考えかたはこの串揚げに対する冒涜だッ。語るべきは美味いか、より美味いか、さらに美味いか、その点に尽きるッ! そしてその観点からするとこの串揚げはさらにさらにさらに美味いッ! まず私が最初に手に取った串は海老だッ。一口噛むだけで見切った! これは美味いッ。サクサクとした歯ざわりのよい衣とプリっとした海老の食感。鮮烈なソースの味と淡く慎しみ深い海鮮のハーモニー! 次に食べたのは、イカにタコ! どれを取ってもまさに至高ッ! 三つのこの具材を内包した鋭い串は、まるで海神ポセイドーンが手に持つ三叉の槍が如き穂先の鋭さをもって私の胃袋を貫き通してしまったわッ!」
「それだけじゃないよお姉ちゃんッ! この串揚げには食感や様々に味わえる食材以外にも着目すべき点があるッ。それは『熱』! 十分に火の通った熱々の具材は外の衣にしっかりと守られて熱を外に逃がさないッ! だから噛み締めたときに内側から溢れ出す熱が、口のなかと一緒に心まで熱く焦がすんだよッ!」
「そこに気付くとは流石は我が妹よッ、天晴れだシャルル!」
ふたりの女騎士が向きあい、口を大きく開いて行儀悪く叫び合う。
正直ドン引きだ。
「…………お、おうそうか。つか今回は、いつもよりちょっと長かったな」
叫ぶだけ叫んだふたりは満足気な表情だ。
もしかすると最近あまり叫んでなかったから少し溜まってたのかもしれん。
俺は頰を引攣らせながら引き気味に応えた。
「ふぃー、食べた、食べた。もう食えんのじゃー!」
ハイジアがぽっこりと膨れたお腹をさすりながら、ゴロンと寝転んだ。
「また貴女はすぐ横になって。そうやって食べてすぐ寝転ぶと牛になっちゃうらしいわよ?」
「なんじゃ牛とは?」
「太っちゃうっていう意味よ。……そういえばハイジア」
フレアが目を細めてハイジアを観察する。
「な、なんじゃ……そのように、ジッと見つめよってからに……」
「貴女、最近ちょっと太ったんじゃない?」
心外なとばかりにハイジアが目を見開く。
「んなッ!? いうに事欠いて貴様ッ、妾は太ったりなどせんわッ」
「……いいえ、貴女やっぱり太ったわよッ!」
フレアが手を伸ばしてハイジアの脇腹を摘む。
しっかりと摘めてしまう。
たしかにそこにはたっぷりと蓄えられたお肉がついていた。
「え、ええい! やめるのじゃッ」
乱暴に手が払いのけられる。
「うぬぬぬッ……妾が太ったというなら、貴様らはどうなのじゃ!」
「あたし? あたしは全然太ってないわよ? マリベル、貴女はどうかしら?」
「ん? ああ太るわけがないだろう。私はハイジアと違って、毎日ゴロゴロしてなどおらんからな。日々剣の訓練を欠かしてはおらん。なぁシャルル」
「その通りなのです! それはそうとお姉ちゃん。食後の訓練に付き合って欲しいのです!」
「うむ、良かろう」
騎士姉妹は剣を杖代わりにして立ち上がり、部屋を出て行った。
ハイジアは反論できずに「ぐぬぬ」と唸りながらその姿を見送る。
「…………ふあぁ、私は一眠りする」
女悪魔がゴロンと寝転んだ。
そのお腹はポッコリと膨らんでいる。
部屋に残った全員の視線がルゼルのお腹に集まる。
「ねえ、貴女も牛になるわよ?」
「…………私は太ってないから大丈夫」
「いやルゼルよ、現実から目を背けるでない。貴様はちょっと太ったのじゃ!」
「言われてみればそうねぇ……貴女とハイジアくらいですものねぇ。毎日ろくに運動もせずに、食っちゃ寝、食っちゃ寝してるのは」
「…………太ってない」
「往生際が悪いのじゃ。そうじゃコタローよッ」
「おう、どうした?」
「鏡を持ってくるのじゃ!」
「ん? おう、そりゃ構わねえが……」
玄関から姿見を持ってきてハイジアに渡す。
「ほれ蝿女、見てみい」
ハイジアが受け取った姿見でルゼルを映す。
「………………ッ」
ルゼルが僅かに息を飲んだ。
元が無表情なルゼルだけに、しっかり見ていないと分からない程度の変化だが、いま鏡を見たルゼルはたしかに焦っていた。
「ふははははーーッ、デブなのじゃーッ!!」
ハイジアはすごい楽しそうだ。
「…………ハイジアだって」
「あ、貴様ッ、なにをするッ!?」
ルゼルが姿見を奪う。
クルッとひっくり返してハイジアの姿を映す。
「ええいッ、やめい、貴さ――」
ハイジアの動きが止まった。
驚きに目を丸くして鏡を凝視する。
その頰を一筋の汗が伝う。
「これが妾……? こ、このポッチャリさんが?」
頭を振って浮かんだ感想を打ち消す。
ハイジアは全力で自分を誤魔化して、鏡からプイっと顔を背けた。
「ふ、ふん! べべ別に太ってなどおらぬのじゃ!」
「…………ハイジア。戦わなきゃ、現実と」
「よ、よく考えたら、妾は吸血鬼ッ。だから鏡には映らんのじゃ」
「…………写ってる。しっかり写ってる」
「ほ、ほーっ、ホアアーッ! ホアーッ!!」
ハイジアは苦し紛れに手で耳を塞ぎながら、憧れのアイドルを前にしたファンのように奇声を上げる。
太っちょが罵り合う醜い争い。
その無様な争いに割り込む影がひとつ。
「ちょうど良かったわ、貴女たち」
割り込んだのは赤の魔法使いフレアだ。
「…………なに?」
「なんじゃ、貴様ッ。いま取り込み中なのじゃ!」
「そう言わずに聞きなさいな。いい話かもしれないわよ? ちょうどあたし、こんなモノを作ったのよ」
ガサゴソと懐を探りだす。
「試しに調合してみたばかりなんだけど……っと、あったあった」
服のなかから取り出された小瓶が掲げられる。
「ジャーンッ!!」
フレアが掲げたもの――それはポーションだ。
オレンジ色のポーションが、丸底の小瓶のなかでゆらゆらと揺れている。
「なんじゃ、それは?」
「うふふ、よくぞ聞いてくれたわねッ! これはポーション!」
「…………それは見れば分かる」
「このまえ煉獄の塔に戻ったときにね、ポーションの調合器材一式を回収してきたのよ。それで早速あちらの素材とこちらの素材を混ぜ合わせて、新薬を作ってみたんだけど――」
「…………いいから早く教える」
「せっかちねぇ……まあいいわ。このポーションはね、『痩せ薬』よッ」
なんか夢のようなアイテムが出てきた。
フレアが高らかに声を上げるなり、ハイジアが掲げられた薬を奪い取った。
「とうッ!」
「…………あッ」
「ちょ!? ハイジア貴女ッ、話は最後まで――」
「知らぬ知らぬッ! 早い者勝ちなのじゃッ! んくんくんく――」
瓶の蓋がポンっと音を立てて開く。
小瓶が傾けられ、中身が飲み干されていく。
「あッ、貴女ッ!? それはまだ試作品で――」
「んく、んく、ぷはー! どうじゃッ!」
空になったポーション瓶がテーブルにタンッと置かれた。
それと同時に変化が起きる。
ハイジアの体がポヨポヨと変わっていく。
すぐに女吸血鬼の平坦な胸がボヨヨンと飛び出した。
「お、おお!? おっぱいなのじゃ! わ、妾のッ、妾のおっぱいなのじゃ!!」
心なしか嬉しそうだ。
もしかして実は真っ平らな胸を気にしていたんだろうか。
「ふはははー! 見てみい、コタローッ。妾のおっぱいなのじゃーッ、うっふーんなのじゃー!」
ちびっ子吸血鬼がしなをつくる
胸を強調しながらくねくねと腰を揺らし、扇情的な仕草で俺を煽ってくる。
だがその姿にまったく色気はない。
というかそれ以前にもっと気になることがある。
俺は震える指先で姿見を指差した。
「お、おう、ハイジア。…………鏡を見てみろ」
「ん? どうしたのじゃ、顔を背けて? ……さては貴様、妾の色香に迷うておるのかえ? 妾も罪作りな女よのッ、ふははははーーッ!」
ハイジアは絶好調だ。
無知というのは、ある意味で幸せなことなのかもしれん。
「…………ふッ」
ルゼルが鼻で笑った。
「……いいから鏡をみろ。つか落ち着けよ? 気持ちを落ち着けてから、ゆーッくりと鏡をみるんだ」
「ふはは――ッと、鏡? なんじゃというのじゃ?」
ハイジアはコテンと首を傾げた。
だがそこにいつもの愛らしい吸血鬼の姿はない。
「あ、あははは……じゃあ、あたしはこれで……」
フレアがこっそりと部屋を抜け出した。
ハイジアが姿見の前に移動する。
鏡が前に立つ者の姿をあるがままに映し出す。
ハイジアは鏡に映った姿と自分の体とを、交互に眺めた。
二度、三度と繰り返し交互に眺めては、パチパチと目を瞬かせる。
「……な、なんじゃ、…………これは……」
「お、おうハイジア。き、気をたしかに持てッ」
慰めるようにハイジアの肩に手を置く。
その拍子にたっぷりと肉を蓄えた女吸血鬼の太ましい二の腕がぷるんと震えた。
「…………な、な、なッ……」
鏡に映ったもの。
それは――
「なんじゃッ、これはああぁぁぁぁーーーーッ!!」
でっぷりと太ってパンパンに頬っぺたの張った、ふくよか過ぎる女吸血鬼の姿だった。
召喚陣の改造に怪しいアイテム作成――
フレアもんが便利キャラすぎるッ
あ、長くなりそうだったので二話分割しました。




