『夏』 風鈴
10/4に、こまごまと書き直し。
大幅に書き直したいけれど!昔の文章は懐かしい。
ストーリーは変わってません。
「――、少ないね。」
そんな一言で目が覚めてしまった。
虚ろな眼を声の主に向けると、起きちゃったか。とはにかむ声が聞こえた。何が少ないんだろう。と疑問に思ったけれど、頭が働かない。
夏の日の縁側、小さな池には金魚が住んでいる。風鈴はまったく鳴らないけれど、何故か涼しかった。
ごろり、と体を回転させる。
「わっ、落ちるよ!」
「へ?」
コツーンと鹿おどしの音と、ごつんとあたしの頭が床にぶつかった音が、静かな縁側に響いた。鹿おどしの鳴るタイミングが絶妙だった。
声にならない声をあげて、あたしは頭を抱えた。
いつの間に膝枕になってんの……。
「ははっ、大丈夫?」
笑いながら言われたら、心配してもらってる気がしなかった。
くそう。と内心呟いて手を頭から離した。
そして、大の字に手足を伸ばした。あー。と意味の無い声を出すと、急に暑さが襲ってきた気がした。
そういえば、
「何が少ないのさ。」
未だに正座を崩していない彼女に声を掛けた。そしたら少しの間が空いて、おどけた口調で返された。
「うん?ボリュームかな。」
「は?」
訳わかんないし。と大きめの声で返した。
猫が庭の奥から歩いてきた。
名前を呼ぶと、こっちへ来た。……かに見えたが、あたしの腹を踏んづけて居間の方へ行っただけだった。可愛くない奴。
「胸のボリュームだよ。」
にゅっ、と顔が眼前に持ってこられた。
へらへらと笑う彼女の顔は、お世辞抜きで美人だ。
長い髪の毛があたしの頬に触れた。綺麗な亜麻色の髪は日の光にさらされて、まるで色素が無いかのような透明感だった。
うん?ちょっと待ってもらおうか。
「何だと?」
ひるまずに顔をひくつかせて尋ねた。
すると、悪びれる様子も無く言われた。
「高校生なのにねー、これはマズ「黙れ。」
右手で頬っぺたを抓っても、へらへら顔は保たれたままだった。美人なのにこいつは変人だ。
本当に綺麗な顔をしているのに、恋人が出来た。とかの話は聞いた事が無い。
変な奴だから出来ないのかな。とも思うけれど、この容姿ならばそんな事は目を瞑れるだろう。
昔はさほど変ではなかった、幼馴染で自慢のお姉さん。という感じ。今じゃただの変わり者。
人間変わるんだな。そう思い溜め息を吐いた。
「溜め息吐いたら幸せが逃げるよ?」
「うっさい、あんたのせいだ。」
抓る右手に力を籠めた。
ひたい、ひたい!!という声がした。ようやく観念したらしい。
「ご飯出来たわよー。」
台所からの声が響く。ようやく昼ご飯だ、そう思って一目散に縁側を後にした。
その後に風鈴が静かに一度だけ鳴ったのを、あたしは知らない。
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「警戒心、少ないね。」
頬に手を当て、呟いた。熱を持っていてまだ少し痛い。この痛みが胸を貫いてくれればどれだけ楽かと嘆いても、あなたは振り向かない。
俯いたままで、少し佇む。
もう少ししたらきっと声が聞こえる。私を呼ぶ声が、台所から。さっさと来ないと食べちゃうぞー。って。
風鈴の音が静かに響いて、思わず立ち上がりそれに手を伸ばした。透明なガラスに綺麗な模様。
これに手が届くようになったんだな、と思った。触れると、ひんやりした感触がした。
手が届く頃には、触れられるだろうか。
つづく。
いつまで続くのかも、きちんと終わるのかも分かりませんが、ほのぼのとした文章を書けたらいいなと思ってます。
一応、夏→秋→冬→春の順で進めていこうかと。
各季節毎に、話数は多分バラバラです。
普通春からじゃない?とも思いましたが、如何せん思いつきで初っ端に書いたのが夏だったので(笑
零話は初夏です。
では、失礼します。




