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手が届く頃には  作者: testrip
1/13

『夏』 風鈴

10/4に、こまごまと書き直し。

大幅に書き直したいけれど!昔の文章は懐かしい。

ストーリーは変わってません。

「――、少ないね。」


 そんな一言で目が覚めてしまった。

 虚ろな眼を声の主に向けると、起きちゃったか。とはにかむ声が聞こえた。何が少ないんだろう。と疑問に思ったけれど、頭が働かない。

 夏の日の縁側、小さな池には金魚が住んでいる。風鈴はまったく鳴らないけれど、何故か涼しかった。

 ごろり、と体を回転させる。


「わっ、落ちるよ!」

「へ?」


 コツーンと鹿おどしの音と、ごつんとあたしの頭が床にぶつかった音が、静かな縁側に響いた。鹿おどしの鳴るタイミングが絶妙だった。

 声にならない声をあげて、あたしは頭を抱えた。

 いつの間に膝枕になってんの……。


「ははっ、大丈夫?」


 笑いながら言われたら、心配してもらってる気がしなかった。

 くそう。と内心呟いて手を頭から離した。

 そして、大の字に手足を伸ばした。あー。と意味の無い声を出すと、急に暑さが襲ってきた気がした。

 そういえば、


「何が少ないのさ。」


 未だに正座を崩していない彼女に声を掛けた。そしたら少しの間が空いて、おどけた口調で返された。


「うん?ボリュームかな。」

「は?」


 訳わかんないし。と大きめの声で返した。

 猫が庭の奥から歩いてきた。

 名前を呼ぶと、こっちへ来た。……かに見えたが、あたしの腹を踏んづけて居間の方へ行っただけだった。可愛くない奴。


「胸のボリュームだよ。」


 にゅっ、と顔が眼前に持ってこられた。

 へらへらと笑う彼女の顔は、お世辞抜きで美人だ。

 長い髪の毛があたしの頬に触れた。綺麗な亜麻色の髪は日の光にさらされて、まるで色素が無いかのような透明感だった。

 うん?ちょっと待ってもらおうか。


「何だと?」


 ひるまずに顔をひくつかせて尋ねた。

 すると、悪びれる様子も無く言われた。


「高校生なのにねー、これはマズ「黙れ。」


 右手で頬っぺたを抓っても、へらへら顔は保たれたままだった。美人なのにこいつは変人だ。

 本当に綺麗な顔をしているのに、恋人が出来た。とかの話は聞いた事が無い。

 変な奴だから出来ないのかな。とも思うけれど、この容姿ならばそんな事は目を瞑れるだろう。

 昔はさほど変ではなかった、幼馴染で自慢のお姉さん。という感じ。今じゃただの変わり者。

 人間変わるんだな。そう思い溜め息を吐いた。


「溜め息吐いたら幸せが逃げるよ?」

「うっさい、あんたのせいだ。」


 抓る右手に力を籠めた。

 ひたい、ひたい!!という声がした。ようやく観念したらしい。


「ご飯出来たわよー。」


 台所からの声が響く。ようやく昼ご飯だ、そう思って一目散に縁側を後にした。

 その後に風鈴が静かに一度だけ鳴ったのを、あたしは知らない。



**



「警戒心、少ないね。」


 頬に手を当て、呟いた。熱を持っていてまだ少し痛い。この痛みが胸を貫いてくれればどれだけ楽かと嘆いても、あなたは振り向かない。

 俯いたままで、少し佇む。

 もう少ししたらきっと声が聞こえる。私を呼ぶ声が、台所から。さっさと来ないと食べちゃうぞー。って。

 風鈴の音が静かに響いて、思わず立ち上がりそれに手を伸ばした。透明なガラスに綺麗な模様。

 これに手が届くようになったんだな、と思った。触れると、ひんやりした感触がした。

 手が届く頃には、触れられるだろうか。


 つづく。


いつまで続くのかも、きちんと終わるのかも分かりませんが、ほのぼのとした文章を書けたらいいなと思ってます。


一応、夏→秋→冬→春の順で進めていこうかと。

各季節毎に、話数は多分バラバラです。

普通春からじゃない?とも思いましたが、如何せん思いつきで初っ端に書いたのが夏だったので(笑

零話は初夏です。



では、失礼します。


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