表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/47

授業参観日

 王都の一の門をくぐると、予約していた宿屋の前にグロウスが立っていた。

 わざわざ俺たちのために来てくれたようだ。だが、アインの比重が高いに違いない。

 ジーンとアインを連れだってグロウスに近づいていくと、グロウスも気付き熱い笑みを浮かべた。


「お父様、お久しぶりです。お元気にされておりましたか?」


 グロウスに会うのも四か月ぶりだ。色々と大変なことになっているため、村にはあまり顔を出せなくなっている。


「ああ、元気だよ、ありがと。ミリエルさんは元気か? やっと結婚したんだ。新婚生活は楽しいもんだろ?」


 新婚ほやほやのグロウスにニヤついた顔を見せて問う。それに返って来たのは曇った表情だった。


「いえ……まあ、楽しく? ない訳ではないのですが。いささか大変になる回数が増えまして」

「ああ、ミリエルさんの事だ、お前の首根っこ掴んでガタガタ振りそうだもんな」

「ナイフを突きつけられました……」

「DV!?」


 結婚して落ち着くどころか、更にグレードアップしてはいないか。一途な方だが、とんでもない方向まで走っているようだ。

 俺のツッコミに対してグロウスは首を横に振った。


「まあ、ナイフぐらいは怖いものではないので大丈夫です。モンスターの方が危ないと思います」

「どんだけ切った張ったの世界に生きてんだよ……。じゃあ、それ以上に怖いのか?」

「はい。彼女は匂いからでも色々と勘ぐってくるのです。偶々、女性とぶつかっただけなのに、その匂いを嗅ぎ分けて詰め寄られます」

「麻薬取り締まり犬かよ……」


 本当に恐ろしい女性であることは分かった。そのような人と結婚したグロウスが少し可哀想に思えてくる。


「そういえば、今日はよく抜け出してこれたな? 仕事、休みなんだろ?」

「仕事と偽って来ました。もう彼女は魔法学校をやめているので、大丈夫でしょう」


 胸を張って言った。何か不安になってきたが、怒りの矛先はグロウスにしか向かないだろう。

 適当に会話を終えると、ジーンとアインがグロウスに挨拶をし、全員で魔法使い養成学校へと向かう。


「アインちゃんはもう七歳ですか。出会ってから随分と経ちますね」

「ああ、そうだな。俺もお前も二十七歳だ。歳をとってきたな」

「そうですね。ですが、ここから大人としての真価が問われる年代だと私は思います」


 普通の会話がどうしてか熱い話に変わってしまう。これがグロウスの持ち味だろうか。

 ただ、その言葉に間違いはないと思う。年齢だけでなく、本当の大人になる時期が来ているのかもしれない。


「そうだ。アインちゃん、学校では何組なんだい?」


 グロウスの不意の問いかけに、アインの肩が跳ねた。

 苦笑いを浮かべた後に言う。


「えっと、C組だよ。あともうっちょと頑張ったらB組に行けるって」

「何と!? B組、目前とは」


 驚いた後に唸りだしたグロウスに向けて耳打ちをする。


「ジーンもすごいって言ってたけど、本当にすごいのか? いまいち、そこら辺が分かんないんだけど?」

「私の最終ランクがBでした。Aを最大評価にして、Fが最低になります。大体の魔法使いはC組で止まります。才能があるものがB組へ、A組は更にその上です」

「おいおい、とんでもないな」

「ええ、とんでもないです。A組になれば賢者としての地位が手に入るのです。そうなれば国から研究費や補助金などももらえるようになります」


 わお! このままいけば、我が家の大黒柱の地位が乗っ取られてしまう。

 時々、準チートの力を忘れてしまうが、やはりすごい子供なのだ。何故、俺の勉強の覚えが悪いのかは分からない。


 ひとしきりへこんでいると、魔法使い養成学校が見えてきた。

 そこには和気藹々と親子で会話をしながら、一緒に登校している光景が見える。


 今日は授業参観日である。ジーンも王都に来た際はエステの仕事をしているので、学校でのアインの様子を知らなかった。

 そんな時に出てきた話が授業参観だった。良い機会だったので学校を数日閉めて行く事にしたのだ。

 休校を伝えた時のみんなの喜びようはすごかった。少し涙が出たことは言えない。


 見回せば華美な服を着た人が大半である。魔法使いになるには適性も大事だが、それなりの財力は必要になるのだ。

 地方に行けば自分たちの生活だけで手いっぱいの人も多い。そうなると必然的に余裕のある貴族などの子女が中心となる。

 俺たちも一張羅で来てはいるが、眩い光を放つ豪華なドレスには見劣りしてしまう。


「パパ~、中に入らないの?」


 周りの光景に呆けていたせいで、アインに少し心配をさせてしまった。笑みを浮かべて頷く。


「じゃ、行こうか。グロウス、お前も来ないか?」

「えっ? いえ、私は保護者ではないので。お父様たちだけで、お行きください」

「硬いこと言うなよ。な、アイン?」


 アインに顔を向けると少し笑みを浮かべた。


「グロウスさん、ボクの魔法を見てほしいんだ。グロウスさんのようにはできないけど……」


 最後は少し尻すぼみになったが、思いは伝わっただろう。

 アインはグロウスの魔法を見て、一種の憧れを抱いている。いやらしい意味ではない。

 魔法を学んで、その難しさから尊敬の念も持っている。だが、一定の距離を保って話しているのは昔と変わらない。


「アインちゃん……。それならば、是非とも参加させてください」

「おう、一緒に見ようぜ。楽しみだな、どんな魔法が飛び出るのやら」


 和やかに話をしていた時、風が流れるのを感じた。


「エアスマッシュ!」


 女の子と思われる声が聞こえた時、目の前に空間をねじる何かが飛んでくるのが分かった。


「ブロックバックラー!」


 アインの声がした。それと同時に地面から何かがせり上がってくる。岩石を盾の形になるように砕いたものが出来上がった。

 石の盾と、空間をねじった何かがぶつかり合うと、風船が弾けた際に発せられる風が吹き抜けた。

 何事かと思っていると石の盾が崩れ、その先には手を腰に当てている小さな女の子がいた。


 ショートボブにした淡いピンクの髪にカチューシャを着けている。目鼻立ちが良く、くりっとした目が特徴的だ。

 服もやや装飾が多いワンピースを着ていることから、出自は良い所だと思われた。


「なかなかデキるようになったじゃない。でも、まだまだね。私の本気には対応できそうもないわ」


 女の子が言った。人を小馬鹿にしたような喋り方だ。女の子の言葉から考えるに、先ほどの魔法と思しきものはこの子が放ったことになる。

 一言文句を言おうと周りを見ていると、女の子が近寄ってきた。一人ずつ顔を見ると、グロウスに目を向けた。


「あなたがアインのお父」

「俺だ! 俺だ、俺!」

「びっくりしたぁ。……あなたが? そうは」

「その先は不要!」


 まさか子供にまで侮られてしまうとは。もっと精進が必要なのだろう。隣のグロウスを見ると、何故か少し満足気だ。


「ルシーヌちゃん! 魔法を使っちゃあぶないよ? パパやママが傷ついたらどうするの?」


 アインの言葉を邪推すると、グロウスに何かがあっても良いことになる。


「ふんっ! 何かにつけてパパ、ママねぇ。少しは大人になったらどうなの!?」

「それでもあぶないことはしちゃダメだよ。悪いことをしたら怒られるよ?」

「私は怒られないもの。……じゃ、また教室で。今度は手加減しないんだからね!」


 肩を怒らせて去っていくルシーヌの背中を見ていると、グロウスがあごに手を当てて何やら悩んでいる。

 少し待つと手を叩いて、顔を明るくした。


「あの子はラドール卿のご息女ですね。アインちゃん、そうじゃないかな?」

「うん。ルシーヌ・ラドールちゃんだよ。いつも、ああして魔法を使ったりしてくるんだぁ」


 グロウスの言葉からやはり貴族であることが分かった。そして、アインの言葉から常日頃、あのように遊びの対象にされているということだ。

 エイミにからかわれているのとは、また違うのだろう。アインも楽しくてやっている事ではなさそうだ。


「アグレッシブな女の子ねぇ~。アインも大変ねぇ」

「うん。あぶないから大変だよぉ」

「う~ん、そういうのもあるんだけどぉ~。まあ、良いわ。あなたぁ、早く行きましょ?」


 ジーンの問いに頷くと、全員で学校の中に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ