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双黒のアルケミスト ~転生錬金術師の異世界クラフトライフ~  作者: エージ/多部 栄次
第一部四章 錬金術師の波瀾万丈録 王国侵略編
94/214

4-3-2.故郷を思い出す

おひさしぶりです。遅くなり申し訳ありません。

久しぶりに書きましたので文章力やら何やらが変な気がしますがご了承ください。

 コクダマムシを採取後、帰宅した時にはルミアとロダンがリビングに居座っていた。またチェスで勝負をしていたようだが、勝敗は互いの顔を見れば一目瞭然だった。

 そういえば、とエリシアはロダンが自分の父親――勇者だった現国王ラザード――と世界中を旅していたことを思いだし、相談を持ち掛ける。

 答えは簡単に帰ってきた。


「ああ、あるぞ」

「「……え?」」

「アレイオス国の一地方やリーベルト共和国にそういうの育てていたのを見たんだが、確か……イネ、といったか」

「そっ、それだー!!」


 すぐさまそれを食べたいとメルストはせがんだが、産地はどちらも遠国だ。結局、代替のコクダマムシを調理するしかなかったが、今まで(個人的に)主食としていた雑穀生活を考えれば、後悔は一切ない。むしろ贅沢になっている。


 勝手に増え、数時間に数センチ移動することを除けばかなりのブランド米だ。すぐさまルミアから商売の話を持ち掛けられるが、却下した。どうせ儲けはルミアの開発費とジェイクの女でちゃぽんと消え去る。


「そんな穀物でメル君がそこまで乱れるって、めずらしーよね」と意外そうに見るルミア。

「ルミアは爆薬や機械の一部になる金属が好きだけど俺はそこまで関心がない。けど俺はお米が好きだけど、逆にルミアは――」

「あーはいはい。そういう理屈ね。わかったにゃ」

「しかしマイスォの集落によく目を付けたな。あそこは甲羅の土地からされる土と水がかなりレアなんだ。育つ作物も絶品を誇るぞ」

「そうだったのですね。どうりで空気もオコメもおいしかったわけでした」

(虫だけどな)

 と思いつつ、


「団長そこ行ったことあるのかにゃ?」

「もちろんあるとも。人の住むところはほぼ網羅しなきゃ十字団はやっていけん。通達すら送れない地域もあるからな」

「……俺ぜんぜん把握してないけど」

「だいじょうぶ。あたしもだし」

 ひそひそと気まずそうに言うメルストに対し、ルミアはけろっとした返事をした。


「あそこの村の人たちは皆、人が良かった。客人だといろいろもてなしてくれる集落はめずらしいもんで、冒険時代は嬉しかったものだ」

 昔を思い返しながら、ロダンはマカラオのナッツを器に入れ、皆のいるテーブルに差し出す。アッサムを煎れては嗜んだ。


「森も妖精霊エレミンが集うほどでしたから、本当に穏やかなところなんですね」

「けどさー、結局メル君のマジで求めてたモノはなかったんでしょ? 代替品が見つかったぐらいで」

「そうなんだよなー。でも味は本気で同じだし、てか想像以上のウマさだったし、俺としては大満足」

 味わいを思い返していたのだろう。本当に嬉しそうな顔をしていたメルストに、呆れ笑う目をルミアは向ける。


「詫びといっちゃあなんだが、同じ産地からもらった土産が残っている」

 確か、と思い出しながら家の倉庫へと向かって3分。持ってきたのは茶色い陶器。壺ともいえるその蓋付半胴瓶の形は、もしかしてとメルストは察する。


「団長、それってまさか」

「リーベルト共和国から土産でもらっていたのを城の倉庫で見つけてな。果実を酢、いや塩だったか。それで漬けたものらしいんだが、いやはや、冒険者時代のころだから、もう4、50年は経っているな」

「いや完全に腐ってるやつじゃんそれ。なんで持ってきたのよさ」

「時が流れる程、熟されていくものらしいぞ。くれた人がそう言ってたよ」


 ふたを開け、重石をよける。そこには懐かしさすら感じさせる、黒ずんだ赤茶色の萎んだ果実が詰まっていた。しわが深く、塩まみれで水分が抜けきっているそれは、本当に食べれるのかと疑問が湧いてくるのも無理はないと思えてくるが、香る酸味とほんのりと焼酎の匂いが漂い、唾液が溢れてくる。その干した果実の味を知っているからだ。


「やっぱり。それ梅干しじゃないっすか! それも50年ものって、かなりのレアですよ」

「お、知ってる人がいれば話は早いな。ははは、これは助かる」

「えっ、メル君これ知っているの!?」

「メルストさん、なんでもご存知なんですね」


 異世界にしかない動植物や食材も最初はすごいと感心してばかりだったが、前世で馴染み深かったものに出会えると、こうも興奮冷めやらぬ振舞をしてしまう。


 さっそくと、メルストはひとつをつまむ。

 見たところ、塩にまみれているが白いカビは生えていない。きちんと仕込まれているようだ。

 きらきらとしているのは塩だろう。50年経っても食べられる状態で熟成し続けたのだ、塩分濃度は計り知れない。


「……」

 ずっしりと厚みのある果肉は、口に含むなりとろけるようにやわらかい。皮も非常にやわらかく、酸味が清々しく、まろやかな旨みはやはりご飯が最高のタッグだろう。それが、メルストの前世が知る果実漬けだ。


(冷静に考えたら、悶絶するほどの塩辛さだよな。話じゃ奥深い梅の味がするらしいけど。だいじょうぶかな)

「これって年を重ねる程、梅の旨みと奥深さが増すんだ。せっかくだし、ルミアもひとつ食べてみなよ。ほら」

 あーんして、と前に差し出す。正直食べたくないというためらいが顔に出てたが、メルストから(ルミアにとって)恋人紛いのようなことをするのはなかなかないことだ。「あーん」と差し出されたら自然とメルストの指ごと食み、舐めとる。

 だが、そんな彼女の喜びなどすぐに失せる。


「すっぱ! っぱァ!」

 塩辛さを全身で体現したそれは、塩分30%以上の威力を思わせる。二十歳にも満たないような身体に50年もの深みは荷が重すぎたか。


「やっぱお湯か梅酢で戻した方がいいか」

「こ、の……あたしで試すとはいい度胸してんじゃないのさ」

「まぁまぁ。ルミアのすっぱそうな顔、意外とかわいかったよ」

「お世辞にしたってもっとましなのあったっしょ。てか意外とって何」

「普通すっぱい顔って顔歪むもんだよ。つまりはそういうことだ」

 不満そうな顔だが、まんざらでもなさそうだ。なんだかんだ、味わっては食べている。


「それ、何?」

 尋ねたのはフェミルだ。今日の依頼をこなし、帰ってきたところを、メルストらは快く迎える。

「おかえりフェミル。これ団長の土産だけど、ひとつ食べてみるか?」

「……毒」

「じゃないから」

「あたしも食べたし、だいじょぶだいじょーぶ。ちゃんとした食べ物だし」

「……3番目に、信用できない」

「フェミルんひどい!」

 ストレートな返しが来た。さすがのルミアも堪えた。


「だろうな」とメルストも一言いったところで、エリシアとロダンが一口。やはり相当すっぱいのか、か細く可愛らしい声を出しながらエリシアを顔をしぼめる一方、ロダンはしみじみと昔を噛みしめるように味わっている。

 それを見て、信用してくれたのか、フェミルも壺の中に手を伸ばし、それを口に運んだ。


「……!!!」

 声一つ出さないが、一瞬だけ目を見開き驚いた表情を、メルストは見逃さなかった。ふるふると震え、若干だが涙目だ。慣れない強烈な味を前に、表情が崩れるのを踏みとどまっているのだろう。


「おお、堪えてますねーフェミルさん。酸味に屈せんと涙目で頑張ってますねー。でもさすがにこれはクセが強いな。香りでもう顔が縮みそう」

 皆の当然の反応に、メルストはにやにやとして嬉しそうだ。癖になったのか否か、ルミアはもうひとつ、梅干しを食べる。だがやはり悶絶した。


「うえぇぇ、これやっぱり腐ってんじゃないの? 食えたもんじゃないよ」

「大丈夫大丈夫。これのおいしい食べ方知ってるから。確かキッチンに鳥か魚あったよな、それの梅煮はマジで白飯と合うし」

「だったら最初からそれにすればよかったじゃん」とルミア。こくりとフェミルもうなずく。

「本来の味ってものを知ってからじゃないとおいしさは分からないだろ」

「っていうメル君は食べてなくない?」という正論は「まぁまぁ」と上機嫌にスルー。

「いやぁホント、今日はいい日だなー」

 異世界で前世の食文化を味わえる。彼自身夢にも思わなかっただろう。


 心から嬉しそうな表情を、エリシアとロダンは遠く――ダイニングの壁際から見つめる。

「ああ、元気になられたようでよかったです」と胸をなでおろす。

「落ち込んでいたのか?」

「ええ、彼が昔食べていたものを恋しがっていて」

 きょとんとしたような表情、そして大きく笑った。

「それがリーベルトの食物だったのか」


 しかし安堵の表情から一変、心配そうな目つきになったエリシアはひとつ、間を置く。

「……メルストさんはさびしくはないのでしょうか」

 何のことだかわからなかったが、すぐにその意味をロダンは理解した。

「記憶がないと言っている以上、生まれも育ちも検討がつかない。まぁそれは彼に限ったことではないが」

 この場にはいない団員のことも含め、ロダンは言う。


「少なくとも、リーベルトとは縁がありそうだな」

「それが正しければ、メルストさんは"リーベルト共和国"で育ってきた方なのでしょうか?」

「どうだかな。あそこは亜人族リニアの諸国だ。まぁ、"鬼の角"を除けば外見といい"変わった能力"といい、あの大賢者とは関係ありそうだが……やはり」

「"万国"、ですか?」


 何も言わなかった。沈黙を続けたロダンに、エリシアは視線を変えた。

 キッチンで楽し気に教えるメルストの髪と目は光を宿すれいを映し出している。それは龗雨れいうの大賢者と同じ特徴だが、鬼の種族の象徴である"角"が見当たらない。

 とはいえ、数千年前の文明の末裔だとはにわかに信じがたい。そう思わせる言葉を、エリシアは言った。


「確かにヴィスペル大陸で彼と出会いましたが、万国は何千年も前に滅んで、その後にインセル収容所が建てられたことはロダンさんもご存知のはずです。不老不死の伝説があるとはいえ……万国の一族――"イクシニア"と関係していることはあいにく、」

 考えにくいかと。そう言おうとし、エリシアは気付く。

 考えにくいのではない。そう思いたくない自分がいた。


 神の御業。大賢者のエリシアがメルストの特殊な能力をかつてそう呼んだのも、"神の児イクス"から産まれた"万国の一族(イクシニア)"のもつ創造と破壊、そして変化を由来する"神力"としての意味合いがあった。それがどういう意味なのかも理解した上で。だが、それはあくまで幻想上の喩えで、そして戒めだった。


 普通は、異常。あの出会いから気付いてもおかしくはなかった。

 ヴィスペル(あんなところ)で気を失っていたこと自体が、おかしい話だった。外見も伝説上のそれと一致する。だから彼を住まわせた――否、匿ったのだ。エリシアの意思以上に、授けられた大賢者としての「意志」が無意識に働いた結果だ。それは警鐘を示すのか、それとも未来を導く希望かはわからない。


 そもそも彼は恩人だ。共に暮らし、仕事をする仲間だ。彼の正体は関係ない。仮に万国の一族――"双黒者(イクシニア)"だとしても。関係ない、はずだ。

 暗くなった視線を向ける。


「……メルストさんは」

 エリシアはずっと気になっていた。

 彼は廃墟と化したインセル収容所で目覚める前、どこにいたのか。どのような人物だったのか。記憶がなくとも話している限り、彼はふつうの人間であると理解するが、そうなるほど不思議に思えてならない。

 薄々、ルミアの言っていた仮説が本当だとしたら、と思い始める。しかしそんなはずは、と否定する自分も。


 ここはロダンのいう通り、ヴィスペル大陸に至る前に、リーベルトにいたとしたら。そうエリシアは考えた。

 だとすれば、と考えたとき。思っていたことを筒抜かれたように、ロダンが提案する。


「なんなら、龗雨の大賢者に直接訊いてみるか?」

「あ、えっと、それは……」

 我に返ったように、だが少しだけ困った顔に、ロダンは安心めいた苦笑を息づく。


「まぁ、嫌ならば構わん。あの巫女は一癖も二癖もある。無難に関わるのは避けた方が良い」

 冒険者時代のときに会った経験があるロダンは苦い顔をする。当然、過去に関わったことのあるエリシアも慣れない相手だった。

「でも、訊くべきですよね。メルストさんにもきっと故郷があるのでしょうし、もしかしたらご両親だって……その手掛かりを掴めるなら」


 彼は一見なんてことなさそうにしているが、どこか孤独な目を浮かべることがある。自分だけ違う、外れているような気がして寂しくもおびえているような気がする。感受性の高いエリシアは、彼の隠そうとしている本心が抽象的にじくりと伝わってならない。

 せめて彼とのつながりがある存在が見つかれば。

 髭をさすったロダンは、少し悩むような顔を浮かべる。とはいえ、彼から出る答えは決まっていた。


「メルスト君の境遇を考えたら、苦しいものもあるだろう。しかしだ、だからといってここが嫌だと思っているだろうか」

「それは……」

 申し訳なさそうに遠くのメルストを目にする。自分は彼の力になれているのか。そう疑っている彼女に、ロダンはやさしく語る。


「エリシア王女。あなたのおかげで"彼ら"に笑顔がある。決して非力なんかではない。十分彼らを救っている。気に病むだけ皆が心配するぞ」

 嗅いだことのない、酸味のある香りが漂ってくる。唾液腺が刺激されるようなそれに、ふたりは再びキッチンを見た。


「ふたりとも何話してるのー?」

 ひょっこりとルミアが近づいて話を伺う。なんて言おうか迷っていたエリシアの顔とを見合わせたロダンは笑みを含める。


「いや何、エリシアもよく頑張っていると感心してただけだ」

「当然でっしょー! エリちゃん先生ものすっごいがんばってるし! あたしにはムリムリ。だんちょー以上に頑張ってるからねマジで」

 ルミアの口から意外な言葉が出、不意をつかれる。失礼ながらも、予想していなかった言葉だった。


「俺もそこそこ頑張っているんだがなぁ」とロダンは頭をかく。

「てかあたしも褒めてよだんちょー」

「ルミアは褒めても伸びないタイプだ」

「ひっどーい! 伸びる伸びないの問題じゃないのよさ。あ、それよかさ、メル君の料理ね、見てたけど意外と普通」

 率直を越えて露骨な一言はキッチンにいたメルストの耳にしかと入っていた。


「なんだよその感想。フェミルも横から小言でアドバイスしてくるし」

「……その方が、おいしく、なる。はず」

 善意なのだろうか、両手に何かしらの調味料を持ち構えている。「ちょい待ってな」とメルストはやんわりと断ってはいる。


「次作るときそうするから。エリシアさん、そろそろできるしそこで座ってて。今日は俺が腕によりをかけて振舞うよ」

「あ、ありがとうございます」

「メル君張り切ってるね。フェミルんの方がおいしいけど」

「食ってから言えよ」


 そう言いつつも、心の底から嬉しそうだ。それはもちろん、彼にとってつながりのあったものと今日出会い、関われたからだろう。だが、

「今ある繋がりを彼は大切にしていると、俺は思うがね」

 席に向かおうとしたエリシアの後で、そうロダンは言う。振り返ったエリシアに「いや、なんでもない。さて食べようか」と先に席に座った。


「……ん? そういやジェイクは……まぁいいか」

 今頃、どこかの町で酒を飲みながら女を口説いているに違いない。思い出すもすぐに気にしなくなったロダンは、目の前の食卓を楽しむことにした。


3話完結。

事情により、次の更新は二月下旬かと思われます。またも遅くなってしまい大変申し訳ありません。理由等の詳細は私のページの活動報告「新年。」より掲載しております。


※ご飯=お米という概念はこの世界にはありません。由来的に矛盾があるかもしれませんが、ご了承ください。


次回

ルミア「頭からキノコ生えたことある? あたしはある」

メルスト「ごめんちょっと意味がわからなかった。え、そもそも生えるの?」

ジェイク「おれはあるぜ。服や部屋からも生えたことがある」

メルスト「燃やすぞきたねぇ。てか何、こっちじゃ常識みたいな感じ?」

ルミア「もちのろんろーん。最近じゃキノコも普通に歩くご時世になってるし、世はまさにキノコ社会!イエス」

ジェイク「しかもいろんなことにつかえんだよ。食いもんになったり薬になったり紙になったりよぉ、つまり金になるんだぜ? いうだろ、女は金もキノコも好きだって」

ルミア「まぁこの脳味噌ごとカビてる寄生キノコ野郎のいうことはさてとして、メル君もどうだい? ニューファッションとして頭にキノコを生やしてみるとね、世界変わるよ」

メルスト「おまえらキノコに操られてんの?」


用語

・リーベルト共和国

 獣人種、魚人種、鳥人種、竜人種などの複数種の亜人族リニアが統治している南半球に位置する、他大陸から孤立した諸島。かつては各種族ごとに国があり争いが止まなかったが、ある時を境にリーベルト連邦として統合されていた歴史をもつ。現在はそれぞれの島に領主がいる。山海之大国、あるいは美しの国と呼ばれるほど、その国は島ごとによって環境が異なるも、四季折々の風景が見られ、その文化(音楽・美術・建築・衣食住など)は独特ながら調和と均衡を重点に置いている。龗雨の大賢者がおり、巫女として周辺の海域ごと治めている。


・アレイオス国

 アコードやオルクとは別の大陸に位置する、山林と海に囲まれた都市国家のひとつ。農林水産が盛ん。本編でも載っていた通りイネが育てられているが、渡来してきた亜人族より伝わった作物である。


・コクダマムシ

 巨大な骸の甲羅の上に作られた集落マイスォで育てられている植虫型(動植物系)魔法生物の一種。元々は目に見えないほど小さいダニのような群体だが、植物に寄生して栄養を吸い取ることで米粒ほどの大きさになる。その見た目はさながら白米で、炊くとブランド米(どの品種の米の味かは想像でお任せします)に匹敵する美味を誇る。肥大化すると移動は困難となり、ほぼ動かなくなる。ちなみに肥大化するとそれを糧に出芽する(本編では分裂と言っているが、実際は出芽で個体を増やす)。

 2019.7.27追記:本編では米粒ほどの目に見える大きさで、ひとりでに増殖(無性生殖)することから、メルストの思考内で動物でも植物でも微生物の類でもない、というニュアンスで書いていますが、ロイコクロリディウムの幼虫(メタセルカリア)がそれに該当します。幼体は米粒に近い白い粒状(扁平っぽい?)かつ宿主の中で無性生殖をするそうです。


・双黒の胤裔

 双黒者と同義。双黒の血をもつ者のこと。この血が関わる「神話」は一般には知られておらず、また相当の古い歴史なので、大賢者および大国のトップなど、一部しか把握されていない。黒い髪と瞳が特徴とはいえ、決してそれが決定打となる訳ではなく例外もある。夜・終焉・無・変動の意味をもつ彼等は常に時代のうねりの渦中に潜んでいたと云われている。神の落とし子とも言い伝えられるだけのことはあり、創造・破壊・変化の力を司る。現存する双黒者は龗雨の大賢者のみと思われてきたが、メルスト・ヘルメスも双黒者なのではとロダンやエリシアらは考えている。

 現在、これに該当する人種は2つだとされる。以下に示す。


・黒鬼種

 亜人族「鬼」の一種。双黒の血を継ぐ純血種と云われているが、その血筋の歴史はどう始まったのかは不明。唯一「龗雨の大賢者」がこの種族に該当し、メルストと同じく黒い髪と双眸をもつ。金工師の血筋を継ぐ。


・万国の一族

 ヴィスペル大陸でかつて栄えた万国にて生まれた双黒者の血筋。こちらは黒鬼と違い、数多の種族の血を混沌させて生み出された、いわば雑種の極みの末にできた双黒の胤裔である。祖先はイクスという神の児だと言われているが、伝説上の話および神話として扱われているので、一族含め実在も疑わしい。

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