4-2-6.不思議な現象とストーカーの正体
町角を曲がり、路地裏に溜まる資材を蹴り、かき分ける。すでに閉じた商店街の道は二階の灯りしか確認できない。
しかし一直線の通り、人影は見えた。夜道で暗くとも、逃げるように遠ざろうとしているのがわかる。
「喰らうがいいわ! "地獄落とし"!」
そう叫んで無骨な小さいリモコンのスイッチを前に突き出しては押す。人影が曲がろうとしたとき、その場で砂埃が巻き上がり、地面に飲み込まれていった。
(ただの落とし穴か)
仰々しい技名の割だとは思う、しかしあえて口にしない。これで捕らえたと、ふたりは追いついた。
「捕まえたァ! 最期に何か言い残す権利など貴様にはないからシネぃ!」
「鬼畜っ」
土と礫まみれになった男を跨ぎ、ルミアは眼前に銃口を突き立てた。
「ちょちょ、ちょっとなんだよ突然! 俺がなにしたっていうんだ」
男は壮年。ギルドにも所属していない、ただの町人のようで、突然の事態に混乱しているようだ。しかし、ルミアはこれを演技と見たのだろう、
「そんなの"問答無用ファイア"!」
「ルミア、待て!」
男の両足を引っ張り、ルミアの弾道から離した。頭のあった場所に榴弾がめり込み、鉛直に黒煙が噴き上がる。
「うおーッ! うおーッ!」
間一髪だった。男が叫ぶのも無理はない。
「ちょっとメル君? なんでこいつをかばうのよさ!」
「まず落ち着けよ。確証なしで息の根を止めちゃダメだろ普通に」
「エリちゃん先生の言いつけはちゃんと守るって。ジェイクじゃないんだし、あたしだって命取るほど熱くなってないにゃ」
「さっきの必殺に等しい一発と脅迫罪に問われる一言を俺はどう受け止めればいいんだ」
「……あれ、そいつ気絶してない?」
え、とメルストは男を見る。
まるで魂が抜けたようだ。男は白目をむいてぐったりとしている。そこまでショックを来していたのだろうか、と感覚がマヒしている二人は首をかしげる。
やりすぎだぞ、と視線だけでルミアを訴えるが、あたしは悪くないといわんばかりに睨み返された。
ふとルミアが夜空を――屋根の上を見上げる。今度こそメルストも勘付いた。ほぼ誰もいない静かな夜だからこそ、ほんのわずかな動きでも気づけたのだろう。
その影もまた、笑みを浮かべていたようにみえた。
「この視線は――っ、本物はそっちかァ!」
「いや、待て、ルミア落ち着けって!」
走り出したルミアが手甲をスライドさせ、何かをリロードするような動作を見せる。同時、駆動する動力と排気音はルミアを蒸気熱にさらした。
空へ向けられた腕から放たれる12mmの鉄杭とワイヤー。16mほどある塔の壁に打ち付けられ、ピンと張ったワイヤーは一気に腕の機械の中へ戻される。カンとブーツを鳴らし、靴底から小さな爆発が生じる。その推進力を活かした空中への高度跳躍。一気に町中の屋根を見渡し――軒の上を駆ける人影を見つける。
ワイヤーを引っ張っては鉄杭を引き抜き、壁に両足を着ける。背中の装置と接続する腰部のグリップを握り、一気に下へ押すと、
「逃がさないんだか、らッ!」
彼女の背面が爆発し、その姿は風を切る音を立てて消え去った。奇跡的に塔は崩れなかったものの、壁が剥がれ落ちるように、瓦礫がいくつか降ってくる。
「あんのバカ、やりすぎっていう頭はねぇのかよ!」
あったら今までの生活で苦労はしていない。メルストは爆速で飛んでいった方向へ目指して急ぐ。
ゴッ、どすん、と鈍い音が二回。壁にぶつかって路に落ちたのか。音を頼りに石煉瓦の道を駆け抜ける。
走ってから数十秒、見つかったはいい。どこで習得してきたのか、アバラ折り、つまりのところコブラツイストで男を捉えている姿に困惑する。どちらにしろ仕留める寸前の状況に、メルストの脚はさらに早く回った。
「おご……いきなり、なにす……ルミ、ア、ちゃ……っ」
顔の広いルミアとは知り合いだろうか。若年層の男が技をかけられながら、何のことだかと訴えている。
「今度こそリーアの無念を晴らす時!」
「いや死んでないから! その人も死なせんといて!」
だが、ルミアはすぐに関越技を解除した。先程まで言葉を発し、なにより抵抗する力があったにもかかわらず、突然糸が切れたように地面に倒れてしまった。
「ん……? 気絶?」
また? と言わんばかりにルミアは若年層の男を揺さぶるが、すっかり脱力し、気を失っていることは確実だ。先程の壮年男性と同じように、白目をむいている。泡を吹いているのはルミアの技が決まったからか。
「おまえやりすぎだって」と頭頂部にチョップ。「いや、骨も折ってないし、加減はしたよちゃんと」とルミアは反論。
にしても。
「……なんか変だな。いや、そもそもなんで屋根の上にいて、逃げようとしてたんだ」
(まぁルミアのヤる気を前に逃げ出す方が正常だけど)
とはいえ、気絶の仕方がおかしい。視線がどう感じるのかは殺気以外メルストにはわからない。ルミアの感じたものを信じるほかないのだが、二度も同じケースを見ると引っかかりもする。偶然として済ましたくはない。
(集団的ストーカー? ってわけでもないよな。ホントにただの夜帰りだったらどうするよ俺たち)
だが、不審に笑みを浮かべるものなのか。それとも気のせいか。
すると、ザッ、と目立つ足音で、ふたりは振り返る。現実味のある音に、むしろ不安をかき立てないのもそのはず、アレックスが誰かをひっとらえてこちらに来ていた。
「そこにいらしていたか。無事なようでなによりだ」
「お二人が探していた男は、こいつかね?」とメガネをかけた中年男性の首根っこを掴んだままひょいと持ち上げる。
「勘弁してくださいアレックス様! 私はさっきまで飲んでただけなんです! 気が付いたらなんでか……ですので本当に何も覚えがないんです!」
「見ない魔力を漂わせていた。不審な動きもしていたから、おそらくこいつが――」
「でかしたにゃ竜王殺し! まとめて爆破させてやんよ!」
「あれ、ちょっとルミアさ――」
自作の手榴弾を全力投球、ひときわ大きな爆発が真っ暗な夜を明るく照らした。ここまで爆発沙汰を起こして誰も家から出てこないとはどれだけ町の人はルミアという災害に慣れてしまっているのか。それともエリシアが防護魔法か何かで迷惑をかけないように安全な処置を施しているのか。
「あぶなかった……友のために熱くなるのは良いが、少し冷静になってはどうかね」
爆破直後、爆炎を両断したアレックスは炎を背に、ルミアに提案する。捕えた犯人と思われる中年男性は無事だ。メルストはほっと胸をなでおろす。
しかし、またも同じ現象を目にする。
「あれ、こいつも気絶してないか?」
「んにゃーっ、もう! こんなのキリがない! なんで今日に限って不審者がこんなにわいてくんのよさ! しかも気絶ばっかり! それで言い逃れできるとでも思ってんのかーっ!」
「お、落ち着くんだルミアさん」
とうとうしびれを切らしたルミアがフシャーと荒ぶる猫の如く両腕を上げて叫び出した。どうどうとなだめる竜王殺しに一切耳を傾けない。
(英雄であろう御方があんなにあたふたするとはな……)
仮にあの決闘で自分が敗けたとしても、アレックスはルミアに相当の苦労を要するだろうと、小さな可能性の片鱗を見たメルストであった。
さっきまで一人も当たらなかったが、アレックスと出会ってから頻繁に不審な人を見かけるようになることに気が付くも、それがどうしてかはメルストにもわからない。
自然的でない魔力と犯人の存在が同一と捉えるのはどうかと思っていたメルストだが、捕まえた三人の身に覚えのない様子と共通した不審な動きと糸が切れたような気絶を考慮すれば、無関係とは言い切れない。仮に繋がりがあるとすれば、それを利用できないかとメルストは思う。
「アレックスさん、魔力の流れはまだ感じますか?」
「無論、そこらに残留として漂っている。なかなかの魔力量だ」
(残留した魔力……高濃度のガスみたいなものだろうな)
それは自然的な動きか。そう問うと否定した。「風に乗っているようにも見えない」と。
「だから、それを辿るようにしているが……どこも似たような濃度だ。都市よりは小さい町だが、本当に自らの意思で逃げているようにも見える。魔力の動きを誰かが操っているのか、まぁ何とも不思議なものだよ」
「魔法の残留ではなく、魔力そのもので間違いないんですよね」
「私が貴女のような麗人に嘘をつくとでも?」
「それじゃあ……"魔力引火"はできますか」
ふとした一言に、アレックスの表情が強張る。
「君、何を言っているかわかっているか? 扱いを間違えれば、それは私どころか、大賢者様でさえも手に余る魔法現象だ。ただの炎の引火とはわけが違う。この町を危険にさらしてしまうぞ」
高濃度の魔力が充満している中で魔法を使用した際、その魔法反応に巻き込まれ、連鎖的に過剰反応を起こした魔法が発動する。そこに発動者の意思を介入することはできず、いわば魔法の暴走が起き、その時に生じた魔素は人体の細部を損傷させる恐れがある。
世界各地でその危険な魔法現象が起きうるスポットはいくつかあるが、メルストの目覚めた場所であるヴィスペル大陸が最も有名だろう。
連なる魔力の流れを魔力引火させれば、発生源にたどり着ける。問題は、魔力の質が有害か否か。
自分の魔法の操作が管理外、いわばコントロールできないことがどれだけ恐ろしいか。戒めたアレックスだが、メルストは冷静に返す。
「できないわけではなさそうですね。確かに町中に魔法が発動しますが、自然に起きるそれよりは危険度は低いはずです。有害な魔素が発生するほど濃度は高くないでしょうし」
そう言いながら、服の中にしまっていた魔力計を見せる。
ガラス棒の中に4本の棒状メーターが十字に配置されてあり、それぞれバラバラの値を示している。組み合わせとしても、数値としても、アレックスの懸念する災害が起こることは考えにくい。
「最悪、エリシアさ……大賢者様の浄化魔法があります。避けてきた手段でしょうが、ここはご一考してみては」
腕を組み、躊躇いの息をこぼす。熟考の末、
「……わかった。やってみせよう」
承諾したアレックスは、剣を掲げた。
魔力はすべて焔聖剣の炎に燈される。
「"大団円、演者は列を成して悦に浸り、炎は敷を焚き、蛇は終焉、すべてを食む……光よ我を照らし、今こそここで皆に喝采を求めん"」
町中に漂うひとつの残留魔力。それを利用し、街や人に影響が及ばないよう僅かだけでもコントロールするべく、アレックスの詠唱は長くなったのだろう。そのすべてを手中に収めるのは魔導師でもできるものではない。
「"主導焔"!」
魔力をまとった聖剣の刃が業火を放つと、虚空が連なって燃え上がり始めた。ボォォ……ッとぼんやりとした、しかし高熱の炎が空中で燃え上がっている。極彩色の火花が散り、枝葉を育むように、炎が細分化して大きくなっていく。伸び続ける炎だが、確実に魔力の流れに沿って炎魔法は引火して発動を続けていた。
燃え上がった後は魂のように、その場にとどまってゆらゆら漂い続け、空へと昇っていく。次第に小さくなっていったのを見届ける。
そして、その炎はある一点に収束した。
「――うぐぉあ!」
どこからか男の苦悶する声。近くからだ。やはり人の手による魔力だったか。
屋根の高さを越え、ひときわ青紫色に燃え上がった炎。しかし隠すようにすぐに鎮静し、いつもの闇夜に戻る。
「あそこらへんだね! 次こそは仕留めちゃる!」
だが、一度見つけてしまえば、こっちのもの。ルミアは一瞬だけ見えた火柱をもとに、重い金属を鳴らして駆けていく。メルストたちも後を追う。
塀や資材、分かつ小さな運河を軽い身のこなしで飛ぶように走り抜けていく。パルクールでも見ているようだとメルストは思う。人間とは思えない筋力と身体能力を持っているのはルミアに限らない。メルストやアレックスもルミアのスピードに追い付きつつあった。
街角を右へ――そこにぼんやり光るフードを被った術服姿があった。魔法による微燃焼がまだ続いているのだろう。しかしこちらに気づくや否や、反対側へ逃げていく。
「あいつか――っ」
「逃がさないにゃ! "ケルベロス・ボックス"!」
ギャリギャリと小さな歯車の回る音は小型トランシーバから発する電波の波長調節か。とどめにカチッとスイッチ音。燃える男の前方、そして四方が小さな爆発を起こし、砂埃を巻き上げる。
煙たくなる中、爆発の勢いで地面から飛び出てきた有刺鉄線が鳥籠型の檻を成し、男を閉じ込めた。この世界特有の物質なのだろう、空気にさらすことで檻状に延びたそれは瞬く間に粘性が失われ、硬質化する形状記憶的性質があるようだ。
(あっ、檻の塀で包囲しただけか)
という率直な感想はこの場において不要だろう。
ルミアは自慢げに鼻を鳴らし、
「運が悪かったわね。この町はあたしのテリトリー。今日しかけたストーカー用の罠以外にも、この町に住み始めてから趣味でコツコツとバレないように設置し続けてきた罠がそこら中に眠っているんだにゃ。ざっと500箇所といったところね」
(被害は自宅だけに留まらなかったか!)
まさかこのような形で町が(ある意味で)ルミアの支配下に置かれているとは。これからは安心して過ごせそうにない。
ともあれ、捕まえることはできた。男は八方を見回すも、完全に閉じ込められており、檻を蹴るがびくともしない。
「これでやっと追い詰めたぞ。……貴様は誰なんだ」
前に出たアレックスは問い詰める。男も観念したのか、抵抗をやめ、メルストらの言葉に耳を貸した。これまでと違う反応。今度こそ犯人だろう。
だが、ルミアの包囲網に囲まれている状況を、ほくそ笑むように男は余裕を振舞った。
「誰と訊かれれば仕方ありません。しかし名乗らなくてもわかるでしょう。そう……このワタシだァ!」
バサァッ、と焦げてボロボロになった外套の役割を果たす術服を脱ぎ捨て、術者姿を現す。
(いやホントに誰ー!?)
冴えないひげ面の壮年だが、確かに首にはギルド会員証である小さなプレートペンダントが提げられてある。捕まえた3人と同じように、にやにやと怪しい笑みを浮かべ、何を企んでいるかわからない。
メルストにしてみれば他人だが、ルミアは心当たりがあった。
「ッ、あんた、ベッグパーティに所属していてギルド食堂の気まぐれサラダを主食にしている菜食主義者のロース魔導師!」
「説明されてもやっぱわかんねぇ!」
そこまで知っている理由はさておき、やはり魔法を扱うことに長けていた者だったか。
(あの三人は操られていたのか。やっかいな相手がストーカーになったもんだ。それにあの余裕ぶりは……)
この状況を打破できる算段を残している可能性がある。メルストは腰に提げた剣を握る。
「さきほどから、本当にあなた方はしつこい。ワタシはただ、彼女を愛していただけだというのに、むりやり二人を引き裂こうとするのはいかがなものかと訴えたいですよ」
「それはこっちのセリフ! リーアもあんたのストーカー行為に迷惑かかってんの、好きなら好きでもっとまともな接し方ってもんがあんでしょうが」
ご立腹のルミアは魔導師に怒鳴りつける。だが、感情をぶつければ感情が返ってくる。
「うるさい女ですねぇ。こちらが迷惑かかってるんですよ。リーアはあなた方がいるせいで怯えているんです」
思い違いもいいとこだ。説得は至難だろうとメルストは腰に手を置き、息を吐く。
「何にをー! 勘違いにもほどってもんがあるでしょこの重病者! どんだけ都合のいい考え方してんの!?」
「ルミア、落ち着け」
「ついにはそちらから無理矢理愛を引き裂くとは、どれだけ下劣なんですかあなた方は。そちらがその気なら……こちらも強行手段を取らせていただきました」
その目は確かに怒りという感情が渦巻いている。だが、気持ちの悪い笑みはそのままだ。引っかかる一言に、メルストも口が開いた。
「それどういうことだよ――」
突如、メルストたちの視界にどこからともなく蒼炎が出現する。エリシア専用の魔法だが、中からリーアとミノが押されたように飛び出てきた。急かされたような様子で、危うく転びそうになる。
全員の視線がそちらに向いた中、最後にエリシアが2人の後に続き、そして蒼炎を消した。からがら逃げてきたかのように、彼女もまた、切羽詰まったような表情だ。メルストたちを見るなり、一層険しい顔つきになる。
「っ、エリシアさん!? 何があっ――」
「皆様っ、その方から離れてください! ――"魔族"です!」
とっさに檻の中のロース魔導師に再度、開いた目を向ける。
だが、不気味な笑みを向けていた姿は既に横たわっている。気絶だ。
まさか――。
「おぉっとぉ、バラしちゃいましたね。……悪い娘だ」
紳士的で、渋くもおどけた、声。神経を逆なでるようなそれが発されたよりも先に、メルストの足は動いた。
エリシアを押し倒し、その場から大きく離れた。その身を抱き、メルストの身体で地面の衝撃を受け止める。彼のとっさの行動がなければ、エリシアは街道に染まる赤と化していたに違いない。ほんの一瞬前まで立っていたエリシアの場所は、大きく凹んでおり、地割れが深く刻まれている。
選択的重圧魔法。突発的に発動したそれは、地面にたたき落とされる火球じみた威力を放つ。
「大丈夫か!」
「メルストさん……!? あ、ありがとうございますっ」
助けられなかったらどうなっていたか。エリシアもそれは把握したようで、ひび割れた地面を恐ろしげに見た。
起き上がった先には、いつからいたのか、ローブを羽織った長身の男の姿がそこに立ち尽くしていた。
「っ、あの人だ……!」
既視感がある。青ざめたリーアはつぶやいた。
ローブ男はエリシアをかばったメルストを見下すように見つめ、しばらく沈黙を続けた後、
「まぁいいでしょう。挨拶はマナーですからねぇ、ふつうあなた方から名乗るものですが、そんな礼儀すら存じていないのなら、ワタシから申しましょう」
ローブが砂粒のように分解されていき、別の衣装へと再構築されていく。その服でさえも、魔力で作られていた。
ボロ臭い容姿から一変、円筒形のツヤが出されたビーバー、いわばシルクハットをかぶり、縞の入ったビロード製のベストの上にはルダンゴトを羽織る。襟まわりには何枚ものクラバットが結ばれており、その人のこだわりが感じられる。ひざ丈まで長く続く裾からは白コール天のズボン、そして黒のパンプスが長い足に終端を飾っていた。
ダンディズムという概念そのものが具現化したような姿だ。まるで別人。誰もが動けなかったのは、その変容ぶりに驚いただけではないだろう。これまで発生していた魔力が格段と濃くなっている。
口ひげをさすり、にたりと微笑む男はパンプスの音をひとつ、奏でた。
「ご機嫌麗しゅう人間族共ォ。あなた方に名を言うほど友好的にはなりたくないのですが、そちらから勝手な呼び方をされても胸糞悪いのでぇ、以後、ワタシのことは……あー、ロジェ・ディヴァンと呼んでいただきたい。この"器"が所有していた名ですので、まぁなんですか、よろしくおねがいしますか」
次の投稿はおそらく次の週末となります。
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申し訳ありません、リアルの都合や予定で行き詰まっていたため、次の更新はもう一週間長引きそうです。
書き終わり次第すぐに投稿しますが、遅くとも12/10には投稿できたらと思います。




