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双黒のアルケミスト ~転生錬金術師の異世界クラフトライフ~  作者: エージ/多部 栄次
第二部一章 錬金術の先駆者たち ミステム錬金術王立学会編
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5-2-2.伝説との対面

いつも読んでくださりありがとうございます。

また、誤字脱字等のご指摘も大変助かっております。

   *


「「十字団に配属!?」」

 メルストと回復したルミアの驚きが重なる。リビングのソファで対面する男は呆れることもなく、一人掛けのソファに座るエリシアに顔を向ける。


「なんだ、言ってなかったのか」

「ええ、いつ異動するのかお返事がありませんでしたので、承諾を取下げる可能性も捨てきれず」

 視線を上に向け、思い出す仕草。あぁ、と思い出した声を出しては、

「確かに返事してなかったな俺」

(グダグダじゃねぇかこの人!)


 とはいえ、実力は折り紙付き。個性的なのも含め十字団にふさわしいと感じてしまうメルストは淹れたレモンハーブティーを飲み、本題に入る。

「それでエリシアさん、この方って」

「そうでしたね、みなさん会ったことはありませんでしたね」

「あたしは聞いたことあるよ!」

 ハイ! と元気よく手を上げては宣言する。

「問答無用で襲い掛かったけどな」

 冷静に返したメルストに乗じてコクリ、とフェミルも同調する。さらに白い羽毛に覆われている小さな飛竜に模したジルコンフェアリーのシンナもきゅいと窓際から鳴いた。

 

「オーランド・ノット。んで、外にいるハールスも一員として数えてくれ。ま、よろしく」

 そう首を向けた先、窓越しに馬程度の大きさの黒鱗飛竜がこちらを興味深そうに覗いていた。背には鞍や荷物があり、まだ荷卸しをしていないのだろう。シンナが窓際にいるのも、それに興味をもったからだろう。くりんとしたぬばたまの瞳でじっと見つめているが、ハールスはそれを見つめ返すだけ。


 かとおもいきや、口を大きく開けてゴルル、と唸り声を上げた。それにびっくりしてシンナはぱたぱた飛び立ち、エリシアの膝の上に逃げ込む。撫でてもらっては慰められている一方、ハールスは窓越しで首をかしげるのみ。彼(?)なりのスキンシップのつもりだったのだろう。


「あ、竜いたのね」

「しかも黒竜じゃん。あの種類乗りこなすの無理ゲーだって聞いてたけど」

「……んー」

「そういやフェミルは竜が苦手だったな」

 ダイニングテーブルの席に座っている彼女に目を向ける。じり、と睨んでいるように見えなくもない。警戒しているのだろう。


「オーランドさんは皆さんが来る前にアーシャ十字団の一員としてご活躍されていたのですよ。ご事情があって一時的な謹慎を下されておりましたが」

「お恥ずかしながら、そうなるな」と冗談めかして言う。

「謹慎って……?」

「いろいろあったってことだ。気にすんな」

 はぐらかすような言い方に引っかかるが、余計な詮索は身を亡ぼすだけだ。ルミアと目を合わせつつ、今は引き下がった。


「元は聖騎士団(ディヴァイン)に所属しておりまして、竜騎隊の副隊長を務めていたのですよ」

「聖騎士団の副隊長!?」

「超超超エリートのスーパードラグーンじゃん。オーランド隊長(たいちょー)やるぅ!」

「副隊長な」と冷静に返すオーランド。


「アグリコラの戦いやベルンハルトの戦い等で数々の殊勲賞を授与されましたり、ポリュフィルス戦役にも参加もしておりましたし、タルタリアの戦いでも勲功を上げた実績をお持ちなんですよ」

「……ほとんど……有名な、戦い」とフェミルが呟く。心なしか、引くほど驚いているようにもうかがえる。

「本当に何者なんですか」とメルストも笑ってしまいそうになるほど。彼も本で知った程度だが、世界各地の歴史の一頁に刻まれかねない、ここ10年20年の争いに出陣している歴戦の戦士が目の前にいると思うと、恐れ多くもなる。


「そんな大層なもんじゃない。言われたことをやっただけだ」

 謙遜でもなく、本心から言ったような言い方だ。

「先に言っておくが、この通り両腕もなくなっちまってるから、おまえさんらの期待するような実力はねぇよ」


 そう両腕を――義手を動かす。

 先ほどは人肌に覆われていたが、今は重々しい黒と銀を帯びた金属製(メタリック)のそれだ。大柄な彼の肉体に劣らず、しかし悪目立ちもしないそれは重厚さを放ち、一種の重機あるいは兵器かと思わせる。目を凝らせば、その緻密さが伺え、芸術の域ともいえる。


 ルミアの目が輝きだし、抱き着くようにオーランドの腕を手にとってはまじまじと見る。

機甲義手(フルメタルアーム)じゃん! これどこで造ったの? 何型? 素材は? 動力は?」と機関銃の如く質問を投げ飛ばすが、おそらく彼女の頭の中で推察された答えは出ているのだろう。


「魔道具の一種ですね。肉体と魔法的に接続しているので、魔法の発動と同じ要領で義手を動かしているのですよ。普通の義手よりも扱いやすくて負担が少ないのですが、魔法技能に長けた人でないと制御が難しいようでして」と、エリシアの口から説明する。

「そういう反応されたり奇異な目で視られるのが面倒なんで、人肌にカモフラージュしてたんだがな」

「でも、そんな功績を出している人でも聖騎士団から外れてここにくるのは意外ですね」とメルスト。


 アーシャ十字団は"負の荷力"という説明もつかなければ根拠もない因子を有する者が集まった組織だとかつてエリシアから教わった。それもそのはず、ここにいるのは犯罪者や狂人、奴隷に囚人と、何かしらの問題を抱えている曲者たちだ。オーランドも何かしらの理由があったから、ここに来たのだろうかとメルストは考える。


「前からお父様に異動勅命が出されていたのは覚えているのですが、それにしては長かったような……」

「ああ、大賢者様には伝わってないのか。世間様の目もあったが、単にあれだ、長期休暇を取りたかっただけだ。農地でのんびり畑を耕してたよ。あそこは空気も作物もうまけりゃ寝心地もいい」

「本当に寝るのが好きなんだなこの人」と呆れる。


「んで、噂の暴獣はいねぇか」とあたりを見回しながら言う。

「ジェイクですか? 彼でしたら町のパトロールかと」

「ぜったい賭博場にいるさね」とルミア。じとっと半目になり、呆れている様子。

「へぇ。会いたくはねぇし別にいいが」

 さほど関心がなさそうである一方、その視線はフェミルに向いていた。人の目に人一倍敏感な彼女は、睨んでいるように見える。


「……さっきから珍しいとは思っていたが、ハイエルフだなんて、普通こんな穢れた世界にいる方がおかしいってもんだ」

「……」

 鋭く冷たい空気はメルストにまで感じた。それを察したのか、オーランドは流す。

「ああ、あんたの悪口いってるわけじゃねぇんだ。身体に負担とかねぇのか気になってな」

 ぴりつく空気も少しだけ和らぎ、ようやく重い口を開いた。

「先生やみんなの、おかげ……」

「へぇ」と全員を一瞥する。「善き仲間を得たってわけか」

 なるほどなといわんばかりに顎髭をさする。何を視て、何を思っているのかここまでわからないこともあるのか、とメルストはオーランドの冷静沈着な顔つきを見つめる。壮年から初老の間だろうと推測できるとはいえ、細かな年齢は判別できない。だがその精巧で精悍な顔つきはまさに軍人の面影を彷彿とさせる。


「……」

「どうかされました?」

 ただじっとフェミルを見つめていたオーランドはようやく視線を逸らした。

「なんでも。魅惑的(ミステリアス)な女性も悪くはないと思ってね」

 まだ何か言いたそうな顔をしていたが、めんどうだと言わんばかりにとっくに興味は目の前のハーブティーにいった。巧みに義手を動かし、取っ手に指を通し持ち挙げては、口元を濡らす。

「それセクハラよおにーさん」とルミア。

「褒めただけだ。気を悪くしたなら謝るが」

 ことり、とカップを置き、視線はメルストに映った。


「そんで、おまえさんは?」

 思わずぴんと背筋を伸ばした錬金術師は思考を取りやめ、口を開く。

「メルスト・ヘルメスです。フェミルよりは少しだけ前にこの十字団の下で住まわせてもらってます」

「なるほど、おまえさんがそうか……」

 意味深な一言だと受け取ったメルストは、会話の一歩を踏み出す。


「何がですか?」

「話はある程度、団長から聞いている。アコードの英雄に会えて光栄だ」

「あ、いえ。とんでもな――」

「ところで、どこ生まれだ」


 凍り付いた空気。それはあくまで、メルストの中での話だが。

 なにも相手は自分の事情を知らないはずだ。なのに、どうして心の奥底まで見透かされたような気分になるのか、思わずたじろいでしまう。


「え? そ、それは……」

「メル君は記憶喪失なんだよー」

 ひょこっとルミアが傾げた首をメルストの前に出す。

「へぇ、そりゃおもしろい設定だ。どこの小説に影響されたんだか」

「冗談じゃないですよ」

「ま、ざっと考えれば……ヴィスペル大陸の生き残りの末裔か」


 は?

 そう声に出てしまいそうなほど、彼の心境は驚きよりも動揺と焦燥感を覚えたことだろう。本当に何か知っているのかと思ってしまいそうだ。そう不安になったとき、オーランドはフッと笑う。


「なんてな。そんなわかりやすいほどまでに驚かれた顔されても、その不自然なほどまでに黒い髪と瞳をあわせもつ人間ってのは何故か(・・・)ここでは珍しいもんだ。イクシニアの神話と合わせて知ってりゃすぐたどり着く仮説(オカルト)に過ぎねぇ。ああ何、末裔だからどうとか、俺には興味のない話だ。古代人みたいなもんだろ。よくあることだ」

「よくあることなのか……?」

 いい加減なのか鋭いのかわからない人だ。そうメルストは感じた。


「で、団長に挨拶をしたいんだが……出かけているみたいだな」

「そうですね、夜には帰ってくると思いますけれど」

 そーか、と然程興味のない返答。ここであくびをひとつし、

「ま、これで自己紹介は終わったか。本題を話していいか」

 金属の手を組んでは顔と姿勢を前に出した。若干の声色に締まりが見られたのを、全員が感じ取った。


「女を探している。あんたらのところに新しく加入する団員、といえばいいか」


【補足】

 イクシニア:神話上、神の児イクスから継がれていった万国の一族。万物を創造し破壊するという神の如き力を有していたといわれている。一部では双黒の一族ともいわれる。外見的特徴含め、メルストと似ている。

「3-6-5.団長ロダンの帰還/双黒の胤裔」、「4-3-2.故郷を思い出す」参照


【お知らせ】

多少の修正や加筆は可能ですが、執筆できる環境にいないため今月中はお休みいたします。加え、状況的にも非常にタスクに追われていますので、一日の内に作れる執筆時間もわずかとなります。

誠に申し訳ありません。その分、リアルの方で頑張ります。

また、お待たせした分、面白いと思っていただけるようなお話を作れるよう精進いたします(素人がおこがましいこと言ってますが)。

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