4-9-1.十字団経営破綻の危機!? ~借金返済大作戦~
番外編的な話です(ネタで軽く書こうと思ってたのにここまで長くなるとは思わなかったですね)。
日中の晴れた商店街は活気あふれており、小さな町だろうと豊かさを思わせる。作物から漂う青臭さや土の香り、魔物の肉を焼く香り、海港から届けられた海鮮類の磯の香り……時折香辛料の香りが鼻をくすぐり、食欲を覚える。お客と言うよりはいつもの顔見知りが世間話をし、そのついでに商品を買っている。
だが、最近はギルド入会しに訪れる冒険者候補や比較的発達している機械技術や工芸品、肥料の情報を聞きつけ、買いに来る来訪者も少なくない。だが、それ以上に"竜王殺しのアレックス"の滞在や、名を馳せはじめているアーシャ十字団の奏功もあるだろう。
その十字団のひとりにして竜王殺しとの一騎打ちに打ち勝ったメルストは、その商店街の道沿いで、その場に不釣り合いな沈んだ顔を浮かべていた。
通りかかったのは本屋。最近仕入れた本の中に、気になっていた小説の続編があった。しかし、今回はいつものように買えないだろう。
財布を開けると、そこにはさびしく身を寄せ合っている銅貨3枚のみ。いつ誰が財布の中から取り出されてしまうか震えているようにも見えてしまう。
「……はぁ」
財布をしまったメルストは煉瓦道を引き返し、その場を後にする。通り過ぎた風が一層さびしさを助長した。
*
「エリシアさん……俺ずっと思ったことあるんだけど」
ソファに座り込み、フェミル自作のハーブティーを嗜んでいたメルスト。その対面に座るエリシアは気さくに返す。
「どうされました? そんなに真剣そうな顔をされて」
「なんでウチに借金がかけられてんの?」
ぴくり、と反応しては微笑みが固まる。それもそのはず、メルストはこの手の話になるとエリシア以上に厳しい。構わずメルストは話し続けた。
「今期の決算書と帳簿をチェックしてみたんだ。なんかウチに負債1003万6800Cかけられてんだけど知らないじゃ済まされないよこれ、軽くここの土地売らなきゃいけないレベルだよこれ」
「し、資産は……?」
「純利全部使ったら次期で地獄を見る」
「え、と……そうですね、はい……」
目が泳いでいる。把握はしているが今のまま問い詰めたところで埒が明かないと思ったのだろう。優しく話しても同じだろうと判断したメルストは家じゅうに響く声量で呼びつけた。
「はい全員集合ォー!!!」
なんだなんだといつになく様子がおかしいメルストに面白半分かつしぶしぶきた問題児3人。ジェイクはソファにどっかりと座っては卓上テーブルに足をのせ、ルミアはその対面に。フェミルはダイニングテーブルの席にすんと座り、その緑髪覆ういただき物の帽子の上には白い体毛をもっふり生やした飛竜擬きのシンナがちょこんと身を丸めて乗っかる。
彼らの視線の先にはなにやら穏やかじゃないメルストと、隣でひやひやしているエリシアが立っている。腕を組んでいる彼の背後から『ゴゴゴゴ』という効果音が流れているように感じられるほどの威圧がその場の全員にのしかかる。
「これでも俺たちは国のために働いている十字団であるし、何より、ここに王女様であるエリシアさんが住んでいる――とはいえ、ここ最近お国が俺達全員分に投資してくれている以上、これ以上の負担をかけさせるわけにはいかない」
「いやこんな超大国からお金出せるなら1000万ぐらいちょちょいのちょいで――」とルミアの謝意のない意見を遮った。
「黙らっしゃい。そういうことをさせてしまうのが問題なんだよ。活動経費でさえ気が引けるってのに私的な理由での余分な借りとなったら尚更だ。てか金もらってる状況で王国金融公庫から融資する手続きするの大変なんだからなマジで。エリシアさんだって親に借りばかり作ってしまうのはあれでしょ」
「え、ええ、確かにお父様にご迷惑をおかけしてしまうのは……」
「そう。だから1000万という莫大な金をどう返済するかその前に! どうして我々がこのような事態に陥ってしまったのか原因を調べる必要がある」
「何だっていいじゃねぇかめんどくせぇ」
大したことないと、ソファから腰を上げようとする。逃がすまいと問いかけようとした。
「まず……ジェイク。おまえの懺悔をここで聞こう」
「あぁ、女に使いすぎたのと、最近敗けてばっかりで軽く600万C越えたな」
「反省の色ぐらい見せろゲス野郎ォー!!!」
去り際にえらいあっさりと白状したヒモ男に胸倉を両手でつかみかかり、ブンブン揺らした。あまりの振幅速度にジェイクの揺れる頭に残像が生じていた。
「うぐぉおおお落ち着けおまえ!」
「今回ばかりは焦ろや! いっつも金に対してケチケチしてるくせに! この間も『こう見えて俺ぁ倹約家だからよ』って言ってたくせによ! 自称かこの野郎!」
「寝言はよせよメル君、こいつはケチだからこそ借金まみれなんでしょ」
「で、でも使った金額覚えてたことはすごいと思いますよ」
「エリシアさん甘すぎません!?」
揺らしながら驚いたところで、ジェイクが抵抗に出た。メルストの腕が掴まれ、突き飛ばされる。
「離せ童貞! いちいち小っせぇんだよおまえは。小せぇのはチ○コだけにしろ」
ぴしり、と凍った空気。静寂になって少しの間の後、驚くほど重く、低く、静かな声でメルストは言葉を発した。
「……エリシアさん、彼に天誅を」
「"剛王の怒鎚・アトバストアンガー"」
「あんぎゃーす!!」
天に生じた魔法陣から光の柱がジェイクに下される。それはさながら神の裁き。床に穴が開き、うつ伏せとはいえ無様な恰好のまま彼の意識はそこで途絶えた。
再び訪れた静寂。勇敢にもフェミルがぽつり呟いた。
「……メルは、小さい」
「ダメだよフェミルん、こーいう話はデリケートなんだから」
「掘り返さんといて!」
今まで聞いた中で最も必死な声だった。
さてと気を取り直し、残る三人へ顔を向ける。
「ビックリするほどの予想通りで、大半の元凶は解っただがしかし! 残り約半分、誰がどのくらい使った。……ルミア」
「え、いやいや、あたしそんなに――」
「言ってみなさい」
静かな口調とはいえ、オーラが凄まじい。一番最初に行ったバルクの酒場にて盗賊団に見せた、竜並みの威圧を再びルミアは感じ取っていた。さすがの図太い彼女も少したじろぐ。
「えっと、あのね? 怒らないでね?」
「うん、怒らない。程度によるけど」
「……300万、趣味の発明に費やしちゃった。てへっ☆」
ウインクとてへぺろ顔。ぷちんと何かが切れる音がした。
「てへっ☆ で済むはずねーだろうがマジキチエンジニアァアアア!!」
鬼の表情でルミアの口の両端を指で引っ張り、頬を横にむにぃーっと伸ばした。
「ごふぇんごふぇんふぁじでごふぇんなひゃい(ごめんごめんまじでごめんなさい)! あっ、がっ、がっきゅううんこ(学級文庫)! がっきゅううんこ(学級文庫)!」
「テメェ100%ふざけてるだろ!」
「ひゅざけていあしぇん、ごふぇんなさい――ふべっ」
引っ張るのをやめ、むにんと柔い頬が元に戻る。
「ごめんで済んだら騎士はいらねぇ。おまえ散々いろんな人から金借りて俺からも原材料ぐらいは無償で提供してんのに何してんだよ」
「いや魔が差しちゃったんだって! ほんの手違いだったんだって! だって見てよこれ、このカタログのこれ! こんな便利なものあったら絶対――」
と、リビングの棚にしまってあった分厚いどこかの製造業の開発用カタログを引っ張り出しては、バンバンと欲しいものが掲載してあったページを開く。それを冷めた目で見たが、実験機材や装置のことは分かるが、機械のことはあまりよくわからないメルストはそれどころじゃない借金問題も手伝って至って興味がなさそうだ。
そもそも、手違いで300万も借金背負うわけがないという話だ。
「エリシアさん、魔が宿っているそうなので浄化を」
「"魔封欲浄・アンデザイア"」
「あんぎゃーす!!」
ルミアの体が蒼く発光し、電撃に駆られたような衝撃が襲った。外傷がないとはいえこれだけ効果があるということは心に相当の魔と言う名の煩悩がいっぱいだったのだろう。彼女もジェイクの隣で白目をむいて気を失っては倒れた。若干焦げ付いたときに出る煙のような、あるいは魂かが開いた口からゆらゆら出ていた。
無表情とはいえ、小刻みに震えてはゆっくりと被害者二人から視線を逸らそうとする。機会を伺い、逃げ出そう。脚部に風魔法を展開したとき、それを見透かされたようにメルストが振り向かないまま彼女の名を呼んだ。
「あと100万……誤差では済まないな。フェミル」
「(びくっ)」
速度ならば十字団最速だが、今回ばかりは追いつかれそうな気がしてならない。すぐに魔法を解除し、無表情のまま顔に影を作ってはメルスト等の方へとゆっくり首を向けた。ギギギギ、とさび付いた歯車のようにぎくしゃくとしていた。
「何か思い当たることはないか?」
「(ふるふる)」
最小限の振動で首を横に振る。それが心地よかったのか、頭上に乗っているシンナがくぁ、とあくびをしては眠りについた。
「そっか。そういや、崇高なるハイエルフは嘘を嫌うらしいけど……あぁ、あのふたりは懲りない奴らだからああしてもらっただけで、フェミルには怒ったり天誅したりはしないから、な? ここで屈するとかそういう話じゃないし、嘘を吐くことこそが純正に屈することだって俺は思うけど」
「はぅっ……」
肺に空気が急に入る音。
「いま、彼女の心に何かが突き刺さりましたね」
「一本刺しておかないとすぐ折れるからな」
表情が薄いなりにも動揺を隠せない。自称屈強なハイエルフ騎士は、意を決するように、少しの間をおいてから、ぽつりぽつりと言葉を置いた。
「……えと、ごめん、あの、食べ、過ぎた」
「うん。よく正直に言ってくれた。それで、どのくらい使った?」
「70万……外食、で……」
「……? フェミルって滅多に街行かないだろ。誰かと行ったのか?」
「ルミアと……」
「エリシアさん、もう一発追加で頼みます」
「いやおかしいでしょ! フェミルんの食欲が原因だよこれ! マジだってこれホンぎゃーす!!」
がばりと起き上がったルミアの頭上から容赦なくジェイクと同じ天誅が下され、再びばたりと意識を失った。
「あと、フェミルは借金返済するまで一日2000kcalまでな」
「へ……?」
「配分は俺らの食事量とほぼ同じ。つまりいつも食べてる量の10分の1までしか食べちゃダメってことだ」
「――!? そん、な……」
貧血を起こしたみたいにふらりとよろめき、ぱたりと風に押された棒のように倒れる。頭部のシンナはダイニングテーブルへとぱたぱた飛んでは避難する。慌てた様子でエリシアは駆けつけた。
「っ、フェミル!? 大丈夫ですか、しっかりしてください! ……っ!? 死んでる……」
「ショックのあまり仮死ったか」
妖精や精霊の類では珍しくない現象だ。命の危機を察知し極力動かない乾眠に似た状態へと本能的に走ったのだろう。まぁあとで水でもかければ生き返るだろ、とメルストはエリシアに反し冷徹だった。これで普段の食費は大幅に減ったことだろう。
「さて、残るは約30万。誰なんでしょうね、エリシアさん」
「えっ、あの、フェミルが意識を……。はい、そうですね……誤差にしては相当な――」
「顔に出てるぞ大賢者」
視線だけをエリシアへと動かした。底が知れない奈落のような黒い瞳を前に動揺を隠せない。
「……え、あ、あの、その」
「こっち側に回って制裁係をすることで罪から逃れようなんて、大賢者の名が廃るぞ」
「……あの、えっと」
「いくら使った。何に使った」
今にも泣きだしそうな表情に揺らぎかける――ような素振りすら表面には一切出さず、エリシアを見つめ続ける。恐る恐る、大賢者は懺悔した。
「……30万C……国外の過疎地域に寄付を……」
「……」
「……ご、ごめんなさい」
「怒りづらいけど限度ってもんがあるでしょうが!」
頭を抱え、声を上げるメルスト。滅多にないメルストの叱責に、エリシアは平謝りする。
「ひぃんっ、ごごごめんなさい! 放っておけなくてついやっちゃうんです!」
「これマジで詐欺に遭うよ! その犠牲的なアガペーは周りの人にも迷惑かけるからマジで今後気を付けて!」
「すいませんすいませんすいません!」
「人助けしたいならまずはなるべくお金かけない方法で……というかこの世界に寄付金制度あるのかわからないけど、詐欺の可能性大だと思うよ、それ」
考え付かなかったことだったのだろう、ガーンと大賢者はショックを受ける。
「そ、そんな……!? そのようなはずは……!」
「根拠はないよ。まぁどっちにしろ、過ぎたことだからどうしようもない。でもひとつ言っておく」
天誅を下され、瀕死になっている3人と青ざめた大賢者を見渡しては大きいため息をついた。
「おまえら金銭感覚おかしすぎだろ」
富に不足はない王族に、金遣い粗すぎるゲスキチコンビ。大喰らいのハイエルフ……そのほとんどが自分の欲求に対して我慢ができてない人だ。
(まともな人がロダン団長しか、いや、あの人も使うときは豪快な使い方をしていたな。……故意ではないとはいえ俺の研究費を無断で使ったときはさすがに一瞬だけ殺意沸いたよ)
故に、ここ最近はメルストが財布のひもとして管理することが多くなっていった。几帳面だが不慣れということもあり、知らずしてこのような事態に陥ることもあるが。
「そういうメル君はどうなのさ! 自分のこと棚に上げて! それになんでも作れる能力あったら不便なのないじゃん!」
フェミルやジェイクに続いて起き上がり、ぷんすことルミアは問い詰める。ペットが怒った時もこうなんだろうな、とメルストは思う。
「金儲け目的の物は創ってねぇよ。いろんな研究費の申請や自分で作った製品とかサービスとかの経営で得た稼ぎと、エリシアさんからいただいている定期経費でやりくりしてんだよ」
働き者だとは誰しもが思っていたことだが、そこまでやっているとは。想像以上だったのか、未知の生命体を見るかのような目を3人は向けていた。
「……メル君、そんな真面目にやってちゃ損するよ?」
「今この瞬間損をしている状況に陥っているのはどっちだよ」
「借金しねぇとか信じられねぇぜ……おまえ本当に人間かよ」
「極めて心外な発言をされて驚きと悲しみを隠せないのですが。どういう価値観もってるの君」
「メル……無理は、しないで」
「あんたらが無理しない範囲で金を使ってくれ」
価値観の違いは尊重している方だが、今回だけは自分と同じであってほしかったと願ってやまない。気持ち的に疲れたメルストはソファの背に腰を下ろす。
「まぁ、俺とエリシアさん、あと団長は他にも王国の仕事があるし、出費を抑えられたら返済はそう何年もかからないだろ」
「なに言ってんのメル君、これ以上出費削られたらあたしの生き甲斐なくなっちゃうんですけど」
「まず生き甲斐の概念から変えてくれ」
「くだらねぇ冗談はやめろや童貞のくせに」
「なんで俺の方がおかしい前提で言われてるの? え、俺の感覚がおかしいの? てか童貞関係なくない?」
「これ以上……貧しく、なったら……人として、しぬ」
「遺伝子レベルから改善してください」
「そうなってきますと、現状の出費の削減は厳しそうですね……」
「本気で言ってる?」
とはいえ、エリシアの意見はなるべく尊重したいメルストは、彼女らの要望に沿うように考えを一度改める。何度吐いたかわからないため息をまたひとつ。
「……わかった。100歩譲って経費削減しないとしよう。だとすれば収入を増やすほかないって話になる」
「ええ、そうですね」
「そうとなれば……アレをやるしかない」
全員から背を向け、リビングの窓際に立つ。陽光が差すそこは、彼の影を強くさせた。
「あ、アレとは」
いったい何をやらせるのか、全員が固唾を呑んだ。
バッと振り返った元社畜。いつになく真剣な彼の目は、何かを決意したかのようだ。
「決まってんだろ」
――働こう!
「……いや何だよその宣言! まるで俺達がニートみたいな言い方じゃねーか!」
思わずツッコんだジェイクに対し、メルストは引かない。指をさし合った。
「一番ニートみたいなおまえが言うな! おまえだけはみんなの10倍は働いてもらうからな」
「んだよ、女性差別か?」
「人間性としての差別だ」
多様性を尊重している普段の彼なら発することがない言葉。やっぱりちゃんと怒ってるんだとエリシアは雨に濡れた子犬のように震える。
「め、メルストさんがいつになく怖いです」
「……メル、おこってる」とフェミル。ルミアも興が覚めたのか、腰に手を当てる。
「メル君が怒るとめんどいなー。てかメル君の能力で金とか創ればいい話じゃん」
「そうだぜ、細けぇこともプライドも法律もこの際目を瞑っていいだろ」
「(こくこく)」とうなずく。
「いや法律はダメですよ!」
「……」
あきれてものもいえない。そんな顔をしていた。
(確かに俺がうまいこと誤魔化して、売れる金属を創成すればいい話なんだけども。倫理的にダメだしこれまで培ってきた社会的信頼も一気に崩れ落ちるだろ! いやそれよりも、なんでこいつら全然反省してないの。それが悔しいんです。俺のエゴに過ぎないんです。こいつらに少しは苦労させたい気持ちがあるんですぅ゛!)
身体能力も感性も普通の人間とは異なる。まともに取り合ってはいけないと思いつつもなんとかしたいという気持ちも負けてはいない。
自分の中で葛藤し、悔しまぎれに出てきた言葉をつらつらと話した。
「俺が金なんて生み出した事実を作ってしまったら、流通経路と生産元調べられて悪い奴らが嗅ぎつけてくるだろ。そしたら平民や貴族の依頼も殺到するし、最悪俺を巡る戦争になりかねん。そんなの嫌だ」
「黙れナルシスト」
「いやいやいやいや、そんなんないでしょ」
「……考えすぎ」
「さすがにそれは考えにくいかもしれませんね」
当然、大批評を喰らう。
「エリちゃん先生まで言うか。いやそれはいいんだよ。さっそく仕事探すぞ! 副業探し!」
「ぶっちゃけ本業の方が稼げるんだけど」
「その本業が最近来ないんだろ。ほら行くぞ」
全員を半ば無理やり外へ連れる。
まずは職業安定所――ギルドへと向かった。
(でも制限なく書きたいこといくらでも書けるのがネット小説のいいところですね)
主な登場人物
・メルスト・ヘルメス
アーシャ十字団の若き錬金術師。黒髪と黒い瞳をもち、白い外套や白衣が印象的。最近は雑貨屋ミノの妹であるリーアと黒い白衣や靴等のデザインを共に考えている。転生者であり、原因不明の死を通じて神的存在より異世界の肉体を授かった。胸部に太陽の模様のような古傷があり、能力を発動する際、うすぼんやりと発光することから、彼のチート能力の根源は心臓部にあると考えられている。
プライベートの出費のほとんどは書籍。それに次いでエリシアの好きな花や紅茶葉、お菓子等を(勇気出して)たまに買ってはプレゼントしている。物持ちは良い方。前世では特許や科研費の申請に追われていたこともあり、そこそこお金に関しては詳しく、厳しい。十字団の財務は今までエリシアに任せてはいたが抜けていたり本編のようなこともあり、共に管理し始めるようになった。
・エリシア・O・クレイシス
アーシャ十字団の魔術師兼魔法学者を務め、かつアコード王国の王女にして六大賢者の一柱。ゆるく三つ編みに結った青銀髪と紅の双眸をもち、青と白の術服を常時羽織っている。絶世の美女であり、メルストも惚れている一方で、エリシア自身も彼に対して恋心を抱いているが互いの思いは未だに知らないまま。訳ありの曲者たちを取りまとめる管理者。
誰かへ渡すプレゼントを考え、買うことが好きであり、私的な出費のほとんどはそれにあたる。自分に対しては書籍と文具がほとんど。最近はルミアやメディにおしゃれを教わっており、香水や洋服にもこだわりを取り入れるように奮闘中である。
・ルミア・ハードック
アーシャ十字団の機工師を務める華奢な少女。ポニーテールに結った金髪と紫の瞳をもち、黒いインナーにツナギや作業服、スチームパンク風等の装いが特徴的。誰よりも爆発を愛する爆弾魔であり、その犯罪歴は数知れない。奥手のメルストをいじってドキマギさせるのが好きであり、露骨にみせる恋愛的感情が本物か否かは不明だが、好意は抱いている。
金遣いは荒く、そのほとんどは兵器や爆弾、罠の材料費や切削加工装置等の加工製造装置・道具のメンテナンスに当てている。次いで飲み代や女子会、スイーツなど、おいしいものにも費やしている。
・ジェイク・リドル
アーシャ十字団の警護官を務める青年。ツーブロック・ネープレス的な髪型をした赤茶髪と翠の三白眼をもち、レッドダーク調の軽装鎧といった冒険者風の容姿と長身の両手剣が特徴。数多の強盗、強姦、虐殺を犯してきた死刑囚の経歴をもつ。メルストのことを童貞、黒髪と中々名前で呼ばず、最初は不仲であったが、実力があるのでなんだかんだ認めてはじめてなくもない。
ルミア以上に出費は激しく、ギャンブルと女につぎ込み、次いで酒と典型的なクズ人間。尚、金がなくなれば略奪する。幸か不幸か、彼の存在があってアコード王国内の盗賊団や犯罪者の数が減少しているとのこと。
・フェミル・ネフィア
アーシャ十字団の槍闘士として生きる美しい少女。精霊族ハイエルフ種でも珍しい緑髪と金色の瞳をもち、エメラルドおよびサファイアブルー調の騎士鎧と鎧兜が特徴。奴隷として売り出されているところを救出され、"穢れ"を浄化するまでの間、十字団に所属させてもらっている。奴隷時代をきっかけに人は勿論男に対して強い嫌悪感を抱いていたが、十字団の環境とケアのおかげで徐々に克服しつつはある。ジェイクはなんだかんだ自分に対してやさしいけど嫌いで、メルストはよくわからない変人だけど心身共にすごい人で敬ってはいるし、自分の知る男とは異なり底抜けに安全、でも苦手という認識。
いわずもがな、食費がほとんど。香料や料理器具、農業道具に対しても関心を抱いていることから、食費以外ではそれらを費やしている(自分ひとりで買わず、メルストやルミアと一緒に買いに行ったりしている)。
・ロダン・ハイルディン
アーシャ十字団の団長にしてアコード王国の三雄の一人。大英雄"軍王"として国を護る。銀のオールバックに灰の瞳をもつ重装兵の白銀鎧を纏った巨漢の老兵。全盛期、オルク帝國との"大戦"の中ではもう一人の魔王の如き怪物だと恐れられていた。一応、元帥の一人として王国軍にも名前だけは所属している形になっている。
休日は飲み代や部下への奢りに費やす一方で鎧、剣の鍛冶や日曜大工に最近関心を抱き、それに対する出費をしている。




