4時 むかしむかし物語
むかし、むかしの物語、
あるところに、1つの大陸と1匹の初代魔王様がおられました。魔王様はその大陸をオリンポス大陸と名付けました。その大陸は緑豊かで魔物達の楽園でした。
長い年月が経ち、ある頃からオリンポス大陸には人間も住み始めました。人間達は自分達の知恵を駆使し、その大陸に沢山の村や町、国を興していきました。
それを見た第4代魔王様は頭にきて、魔物を引き連れ人間達を攻撃し始めました。これが所謂、魔物と人間との最初の争いだそうです。
緑豊かなオリンポス大陸は、血生臭い争いが絶えない大陸へと変貌していきました。この光景に嘆いた第6代魔王様と第4代勇者は共闘し、争いの発端である第4代魔王【不死王】を封印することにしました。
3者が争った地は【はじまり平原】と名付けられ、戦いは苛烈を極めたそうです。
3者は1年もの間、休むことなく戦い続け、ついに不死王が封印されるという結果で決着がつきました。
しかし苛烈を極めた戦いは凄まじく、大陸を分断する程でした。そしてこの世界には【はじまり平原】だった場所を含む、全部で12の大陸が出来上がりました。
第6代魔王【天魔王】と第4代勇者は、最も荒れ果てた【はじまり平原】だった大陸に、すんごい魔法とスキルを使い再び緑豊かな土地に戻したそうです。
めでたし、めでたし。
「長いわっ!!」
「ひっ!……ご、ごめんなさい……」
俺はあまりの話の長さに、ついついファントムメイジに向かって突っ込んでしまった。ファントムメイジはビクッとなり謝り出した。
「……あれで【むかしむかし物語1~6】の総集版っすからね」
スライムがヤル気なさそうに淡々と答えた。
「…………ちなみに、その【むかしむかし物語】は全部でいくつあるの?」
「先々代の魔王様まであるので、全部で757まであるっす……ちなみに完結してるっす」
聞くんじゃなかった。アホらし過ぎる。
「なんで先代のはないんだよ……」
「そ、それを書かれたのが……せ、先々代の第757代魔王様だからです……その魔王様は……べ、別名【魔本王】と呼ばれています。」
文豪の魔王とか舐めてんのか?いや……つまり全ての魔王の歴史をまとめて本にしたのか……しかも自伝も書いてることになるな……寧ろ凄いのか……
「因みにっすが、先代魔王様の遺言が「わ、儂の本も……ガクッ」っす」
可哀想に……自分の本だけないとか……死んでも死にきれんだろうな……
「まぁ歴史の内容については、追々突っ込むとして……」
(突っ込むんだ)
(突っ込むんだ)
「つまり、この大陸は【元・はじまり平原】って事なんだな」
「そ、そうです……平原だったこの大陸を、第10代魔王【山脈王】や第19代魔王【樹海王】が……ほ、他にもおられますが……ま、魔法やスキルで少しずつ……ち、地形をいじっていったそうです……」
マジかよ……すげぇな魔王って。あの黄金○闘士もどき貧乳魔王とは大違いだな。
「因みに、今代の貧乳魔王の別名は?」
「……す、凄いっすね隊長さん……」
「へ?」
「フラーク・ミュラン様は、まだ若いのに歴代TOP5には入る最強の魔王様の1人っす」
「ま、マジか!?」
「は、はい……星々を操る88の秘魔法は凄まじく、別名【天星王】と呼ばれてます……」
よし、今度会ったら床キスしながら土下寝だな。因みにだが俺の言う【床キス】は、床でキスの事ではなく、床とキスって意味だ。
てか、凄いな貧乳魔王……88の秘魔法とか……マジで○闘士だな……
「……ま、まぁ取り敢えずは俺達が住む場所を決めよう……安息の地は必要だからな……」
「そ、それなら……このまま真っ直ぐ……ず、ずっと北に行った所に魔物の村がありますよ」
「なぬ?」
「人間達にも見つからない場所なんで、そこを拠点にしたらどうっすか?」
ナイス知識とナイス提案!この2匹は使える!俺は良い部下を持って幸せだぜ!ヒャッホイ!
「よし!そうと決まれば先ずは、その村に行こう!」
「了解っす」
「は、はい!」
「っと、その前に【アラーム】の魔法を使っておくか……」
魔法がどんな感じか試してみないとな。いざという時、使い方が分からなかった意味ないからな。
「えっと……魔法って発動の仕方とかあるの?」
俺はファントムメイジに尋ねてみた。
「え、あ……ま、魔法を唱えれば、で、出ると思います……」
「了解、えっと【時魔法アラーム】!」
うわっ、魔法唱えるとかちょっと恥ずかしいな……知り合いがいなくて良かった。いたら悶絶もんだったな。
「アラームって?」
「た、確かサーチ系か感知系の魔法だったかと……?」
2匹が小声で話している。聞こえてるけど……。あまり知られてない魔法なのか?
同時に体から力が抜けてく感覚に見舞われた。これがMPを使う感覚か……消費MP10だったか……結構キツいな……
すると、俺の頭の真上に付いてるT字になってる突起物が、両横にある鐘を鳴らし始めた。
凄まじいスピードで左右に振れ、鐘を叩く。
ジリリリリリッッッッ!!
「いたっ!?いてっ!痛いっ!痛いっ!痛いっての!痛いってば!?痛いっつーの!!」
俺は泣き叫んだ。当然だ。自分の体をおもいきり殴ってるようなものだからだ。音も煩く、2匹も嫌そうな顔をしている。
そして頭の中に不思議なメッセージが浮かんできた。
『後方より敵接近!』
俺は痛みを堪えながらバッと勢いよく後ろを振り返った。
なんと2人の人間が歩いて近づいて来ていたのだ。
「マジかよ……」
戦闘開始まで後10秒程であった。
秒針はないから正確には分からんが。