38時 大津波
ふ、不意打ち……と、投稿……です
装備を新調すると俺達は北にある不死族の都を目指した。
村から転移すると、当然そこは雑木林になっており、更にそこを抜けると割りと平原っぽいのだが、北に進むにつれて徐々に平原は荒野へと変わってきた。
「なんか……気のせいか、段々音がなくなってきてるような……」
小鳥の囀りやら、獣の気配、自然の音がなくなってきてる。風の音すら聞こえなくなってきた。聞こえるのは俺達の動く音だけで、空気が重苦しくなってきてる気さえした。
「……多分気のせいじゃないっす」
「は、はい……誰もいないからだと……思います」
誰も不死族の都には近づかないみたいだ……人間や魔物ですら。アラームさんでさえ、「問題なし」とか言ってるくらいだから、本当に誰もいないようだ。
でも何故だか、怖いという感覚はない。ただ誰もいないのがどこか寂しいという感情しか湧いてこない。
「まぁいいか……」
俺達は更に数日かけて北を目指した。
「おっ?あれか?」
目の前に大きな塀に囲まれた巨大な街が目に飛び込んできた。そしてその街を半透明の半球体がまるごと街を覆っていた。
「もしかしてあの球体が封印なのか?」
「…………わかんないっす」
「わ、私も……初めて見ました……」
まぁ誰も近づかないとこなら、こいつらが見たことある訳がない。当然知る筈もないか。
「さてと……アンデッドはいるかな?」
「……まさか俺らの隊長が、進んでアンデッドを狩りにいく異常者だったとは夢にも思わなかったっす」
誰が異常者だ!
「ぼ、冒険者や……ゆ、勇者(候補)ですら逃げようとするアンデッドを狩りにいくなんて……誰も思わないです……」
まぁ普通はそうだろうな。俺だって例のスキルがなかったら、こんな殺伐としたとこなんて絶対来ないだろうし。
「さてと、俺の神聖剣の錆にしてくれぜアンデッド共……」
「めっちゃイカスッす、隊長」
「か、カッコいいです」
やべぇ……照れるな。ちょっと調子にのった発言だったんだけど、思いの外2匹には好評価だったみたいだ。
「で、肝心のアンデッドはいるか?」
「う~ん、この辺りにはいなさそうっすね」
「うん……わ、私もいないと思います」
この辺りにはいないみたいだな。アラームさんにも反応なし。
「じゃあ、もう少し近づくか?」
「了解っす」
「は、はい。」
そのまま俺達は【不死族の都】に近づいて行き、大きな街をぐるりと一周した。
そして分かった事がある。この街は巨大な塀に取り囲まれており、1つだけ数十メートルもある巨大な扉があるだけで、中が見えない仕様になっている街だということが分かった。
更にそれを覆っている半透明の半球体は触れられるが中には入れないみたいだ。
「なんか……完全防壁って感じだな」
「みたいっすね」
「こ、こうしてみると……中のアンデッドを封印するのと同時に……そ、外からの攻撃も防いでるって感じがしますね」
……確かに。
「ちょっと試しに俺の魔法使ってみるか」
俺達は、不死族の都から少しだけ離れることにした。そして覚えたての俺の魔法を【不死族の都】に向かって試すことにした。
「じゃあいくぞ……水魔法……ポントス!!」
唱えた瞬間、強烈な脱力感に襲われた。ヤバいな……流石、消費MP60の神級魔法、脱力感がハンパない。
しかし……
「…………あれ?何も起きないぞ?」
「しっかりして下さいっす隊長」
「ま、魔法名を……間違えたとか?」
そんなバカな?魔法は正しい筈なんだけどな……何か他の魔法とは発動条件が違うとか……?
ーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴー
突如、地面を裂く地鳴りのような嫌な音が聞こえだしてきた。
嫌な予感がする。
「ま、まさか……な……」
俺達は恐る恐る後ろを振り返った。
そこには巨大な津波が俺達の方に向かって襲い掛かってきていた。
「「「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!」」」
俺達は走った。これ以上ないくらい全力で走った。風と一体化したんじゃないかというくらい、速く、全力で、死物狂いで走った。
しかし、無情にも大津波は、あっという間に俺達の背後にまで差し迫っていた。
「イヤだぁぁぁぁあああああっっっっ!!」
「死にたくないっすっっ!!」
「いやぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!」
「こ、こんなことで……死ぬなん…あっ」
俺達は大津波に呑み込まれた。本当に呆気なく……大自然の驚異をまざまざと痛感した。まぁ自然発生ではなく俺の魔法だと思われるが。てか絶対そうだし!
呑み込まれた後は記憶がない。津波の中を必死で藻掻くがどうにもならず、直ぐに意識をなくした。
巨大な大津波は、レックス、スライム、ファントムメイジを呑み込み、そのまま【不死族の都】を覆う半球体に衝突した。
不死族の都には未曾有の大衝撃が発生していたのだが、その時のレックス達には知る由もなかった。




