1時 多機能時計
定期更新出来たら良いです。毎朝7時更新予定。
たまに不意打ち更新あり。
目を見開き、口をあんぐり開けたまま、俺は呆然とその場に立ち尽くしていた。だが足に力が入らなくなると、そのまま四つん這いになった。
眼前には未だ巨大な鏡が俺のアホ面を写していた。
何度見直してみても珍妙な化け物だった。体は円。外郭の近くには1~12の数字があり、黒い長針と短針は中心からずれた位置を基点にして眉毛代わりになっている。
目は劇画調みたいな目だ。これではどう見ても熱血キャラだ。
某番組の、めざ○し君みたいだ。しかも可愛くない感じにグレードダウンしている。
「お、俺は……俺は一体どうなってしまったんだ……?」
その一人言みたいな問いに答えてくれたのは、自称・魔王様だ。
「ニヤリ、やはりな。」
この人、自分でニヤリって言ってるよ。
「やはりまだ自分の事を理解していなかったな。ならば妾が説明してやってもよいぞ?」
「お、お願いします……」
「ふっふっふっ、謙遜な態度気に入ったぞ。なら、教えてしんぜよう!貴様はこの第759代魔王フラーク・ミュランが特殊な技法で作成した魔物、その名も【時計魔人】だ!!」
「…………は?」
その場に沈黙が流れた。
美少女魔王フラーク・ミュランは拳を握り締めて、どや顔をしてこちらを見下ろしている。
多分俺の時は止まったままだ。あっ、今の上手くね?時計だけにってな。……ってそれどころじゃない。
「えっ?魔物?……えっ?……時計……魔人?」
「そうだかなり珍しいタイプの魔物だぞ。妾と同じ完全人型である魔物を作成したつもりが中途半端な半人型とは……妾も、まだまだと言ったところだな……」
魔王様はフッと小さく笑い遠くを見つめている。
冗談じゃない!なんでこんな巫山戯た魔物なんだ!確かに俺は割とライトノベルや、な○うを読んでるから、おおよその状況は理解できた。
人間割りと冷静でいられるものだ。まぁ呆けているだけではあるが……それにしてもだ!
そう!俺は信じられないが……魔物に転生してしまったのだ!!
よくある転生物だな(笑)……じゃなくて、おかしいだろ!普通なら魔王やドラゴン、スライムや、割とポピュラーな魔物に転生する筈だろ!なんだよ時計魔人って!聞いたことないよ!!
俺は地面を殴りつけた。痛っ!くそっ!絨毯は柔らかくて気持ち良いのに、この手は相当貧弱だ。
「ふむ、【時計魔人】という魔物は妾も初めて見たが、改めて視ても中々面白いスキルを持った魔物だな」
「えっ?」
おいおい、なんだよ魔王様。今、結構気になること仰いましたよね?スキルとかメッチャ気になるんですけど。しかも面白いとか……まさかチートスキルってやつですかい?それなら魔物に転生したのも悪くないんじゃないの……グフフッ
ハーレムか?ハーレムが俺を待ってるのか?エルフやケモミミ娘が俺を待ってるのか?嫌々ながらイベントに巻き込まれて英雄になるパターンか?オラ結構ワクワクしてきたぞ!!
「よし、貴様を部隊長に任命してやろう」
「……お、おぉ~有り難き幸せ」
部隊長ってことは部下を与えてもらえるのか?底辺ではないな。魔物娘か……それも……悪くないな……グフフッ
「ふふん、やはり物分かりがいいな。なら貴様には部隊長として更に2つのスキルをくれてやる!」
な、にゃんと! おっと……嬉しさの余り心の中で噛んでしまったぜ!ヒャッホイ!!
「ど、どういったスキルで……?」
「ニヤリ、気になるか?」
「は、はい……よければ教えて欲しいです……」
「ふむ、よかろう。だが見る方が早いな」
「?」
美少女魔王様はそう言うと、俺に手を翳して何やら唱え始めた。
突如キラリンッと俺の体が2回光った。今のでスキルを覚えたのだろうか?
「……ふむ、【鑑定】と念じてみろ」
「は、はい」
キタよ、キタよ、定番スキルだ!……えっと……鑑定!
【ステータス】
名前:なし
種族:時計魔人
性別:♂
レベル:1
HP:101
MP:101
物理攻撃力:101
物理防御力:101
魔法攻撃力:101
魔法防御力:101
速度力:101
【称号】
「多機能時計」「No.564219部隊長New」
【スキル】
「目覚し」「針」「収納New」「鑑定New」
【魔法】
「時魔法アラーム」
【装備】
武器:分針(黒)、時針(黒)
防具:スポンジ手袋(白)、スポンジブーツ(白)
ふむ……色々突っ込ませて欲しいが、第一声はこれだな。
「まんま時計!?」
こちらも、みてみん様にてイメージイラスト投稿してます。