11時 水晶時計
18時にも次話投稿します
俺は現代日本を生きてた普通の高校生だった。親がつけてくれた名前だってあるし、ホントに僅かだが友人もいた。
客観的に見ても顔はそれなりに普通だったと思う。しかし教室で小説や漫画、ゲームの話ばかりしてる俺と友人に対し、一部の女子は汚物でも見るかのような侮蔑の眼差しを向けていた。
まぁキモかったかもな。だが好きな事に生きて何が悪い!人間誰もが何かしらのオタクの筈だ!今日び女子だってアニソンは歌うし、ラノベのキャラだってかなり認知されている筈だ。だが俺のクラスにいた、その女子共は俺を含む友人を傷つけた。クラス全員で無視するという最も卑劣な手段を使って……
まぁ今更言っても仕方ない事だ……だって俺死んだし。
そう俺はある日死んだんだ。
死んだ時の事だけがよく思い出せない……どうやって死んだか分からない……だが、間違いなく死んだという認識だけはある。
よし!女の子に向かってトラックが突っ込んできたが、俺がその女の子庇って、身代わりとなって死んだって事にしよう。それが理由としては小説っぽくて、カッコいい。そうしよう。
後は目覚めたら、美少女貧乳魔王様が目の前に居て、時計になっていて、異世界に転生していた。
そして部下が出来た。
【ヤル気なし】のスライムに、【弱気】なファントムメイジ。俺は2匹と一緒にこの世界を生き抜くしかない。
頑張って生きていくしかない……
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やはり結構疲れていたようだ。目覚めると割りといい時間帯になっていた。昨日の夕方頃寝始めて、今はお昼前だ。
泊まっている部屋にスライムとファントムメイジがいない。恐らく村を散歩でもしているのだろう。が、起きた時1匹とか結構寂しいものだ。
ふむ。取り敢えず鑑定で昨日の称号とスキルを確認するか。
【称号】
「水晶時計」
時計に与えられる称号。「スキル:結晶化」を修得。
はい、出ました!マジなんだよ時計に与えられる称号って!!まぁ、薄々気づいてましたよ。名前に時計って書いてあるし……でも、もう少し言い方とか書き方とかあるだろ……
【スキル】
「結晶化」
商売を営む魔物が、魔王から認められる事でのみ修得可能なスキル。価値のある物質(武器・防具・アイテム)を結晶化し魔石に流し込むことが出来る。第3代魔王【結晶王】が開発した魔物専用スキル。
あれ?なんだこのスキル?もしかして覚えたら不味いスキルなんじゃ……魔王様から認められないと使えないとか…………ん?もしかしてこれが所謂チートスキルなのか?
レッドヘルムさんは使ってたから魔王様に認められてるってことだよな。確かにこのスキルがあったら店にいかなくても魔石が溜められるし便利だけど、それだけのスキルじゃね?
チートスキルではないな……
「魔石譲渡」
自己の魔石が1でも増えることで修得するスキル。修得以降は魔石の受け渡しが可能。
ふむ。本当に便利なスキルだな。それに、魔石の受け渡しによって商売をするとか魔物社会は意外と便利だ。魔石=お金と考えていいだろう。
魔物は基本的にレベルが上がらない。これはスライムとファントムメイジが言っていたな。【レベルアップ=進化】を許されてるのは名前付きの魔物ユニークモンスターと、魔王軍の部隊長のみ。
俺の知る限りだと、村の門番であるオークのバルバトスさん。鍛冶屋の武器職人であるグリズリーのレッドヘルムさん。宿屋を営む一角兎のアルマナさん。
俺と村にいるであろう各部隊の隊長。
そして、俺の部隊のスライムとファントムメイジだ。
これはかなりデカイぞ。普通の部隊は隊長しかレベルが上がらんが、俺の部隊は俺も含め3匹レベルアップ出来る…………そうだよ、そもそもレベル1のスライムとかファントムメイジに勇者討伐とか無謀過ぎんだろ、あの貧乳魔王め!
だけど改めて思う。この魔物社会はシビアだが、いい感じに成り立っている。
魔石は人間と戦う事で、初めて自分の体内で生成される。しかし村で買い物等をしたければ魔石を増やすしかない。戦いから逃げてる魔物はいつまでたっても魔石は生成されないし、増やすことも出来ない。
戦わない魔物は魔物じゃない、と言ってるようなもんだ。
野良の魔物はそれでいいかもしれんが、軍に属している魔物はそうもいかない。魔王様の命令で戦わない訳にはいかないし、強くならなければあっという間に殺されてしまう。
戦士には休息がいるし装備を整える必要もあるから、魔石は稼がないといけない。
いっそのこと野良になるか?レベルが高くて強ければそれもありだが、そうすると村を利用できない。現状、雑魚モンスターである俺達は人間から怯えずに休める場所は絶対必要だ。
くそっ、どうやっても人間と戦わないと生きていけない。あれ?矛盾してないか?
ホント上手く出来てるよ……
とにかく俺には、「部隊長の効果」と「スキル:目覚まし」のコンボで部隊員も強くする事が出来る。後は楽して魔石を稼げる方法を見つけて、装備を強くして、人間と戦ってレベル上げてくって順序が無難だな。
いきなり人間狩りとかハードルが高過ぎる!よく他の魔物は人間と戦えると感心する……いや、それしか魔石を稼ぐ方法がないのか。
ホント上手く出来てる……
ーガチャリー
突如ドアが開くと外からスライムとファントムメイジが入ってきた。あれ?確かこいつら手なかったよな?今どうやってドア開けたんだ?
「あっ、起きたっすか隊長?」
「お、おはよう……ございます……」
「うむ、おはよう諸君」
俺は動揺を隠すように威厳たっぷりで朝の挨拶をした。
「……なんで、そんな偉そうなんすか?しかも、もう昼っすよ」
「ご、ごめんなさい……わ、私が「おはよう」って言ったから……」
良くも悪くも2匹はいつも通りで、何故かホッコリした。
「どこに行ってたんだ?」
「村で情報収集っす、隊長がアホ面で寝てたんで」
うおぉいぃ、スライム!何で急に悪口!?なんかコイツ今日、口悪くないか?俺何かしたか!?結構傷つくんだけど……
「えっ……?で、でもスライム君も……わ、私が情報集めようって誘わなかったら……ずっと寝てて…………」
「……………………っち」
俺にはスライムがよく分からん……