9時 魔石
不意討ち投稿
貧乳魔王様がいつの間にか俺の異空間にタグを入れていたらしく、なんとか村に入れた俺達はそのまま村を探検してみることにした。
色々な魔物さんに話を聞いてみたところ皆さん優しく答えてくれた。
1つ目が、村の門番でもあるオークさん。名をバルバトスという。彼は【名前付き】、所謂ユニークモンスターらしい。因みに俺もだ。
元々は部隊長だった彼は昇進して村の門番になったそうだ。ミスリルヘルム、ミスリルアーマー、ミスリルシールド、ミスリルブレードを装備する彼は、人間達から【ミスリルのバルバトス】として賞金を懸けられている。
元・部隊長であり、ユニークモンスターであり、賞金首でもあるバルバトスさんはレベル30の強者だ。
俺の憧れになった。
2つ目がこの村だ。今まで人間に見つからなかったのは、あの雑木林には魔物にだけ反応する転移魔方陣が仕掛けられているらしい。
因にだが人間達には魔物を使役する恐ろしい職業もあるそうだが、使役された魔物には反応しないらしい。
どうりで今まで人間に見つからなかった筈だ。
「…………隊長、そろそろ休みたいっす」
スライムは相変わらずヤル気がない。怒るべきだろうが、実は俺も結構疲れている。
「そうだな。宿屋があるらしいし……後は人間達から剥ぎ取った装備をなんとかして、それから休もう」
「了解っす」
「は、はい……あっ!た、隊長……ま、前に鍛冶屋がありますよ?」
「なぬ?」
本当だ。前方2時の方向に武器なんかを陳列してる店がある。店には熊系の魔物のおっさんがいる。
「あの~、すみません……」
「ん?……初めてみる顔、もとい魔物だな……時計とか、プッ」
うぉい!こら熊公っ!舐めんなよ!こう見えて俺は異世界転生者だぞ、コラァッ!!ぶちのめすぞ!?
なんて言えたらどれだけいいだろうか……この見るからに強そうなお方……背丈なんてバルバトスさんより高い。ぶっとい腕は木とか簡単にへし折りそうだ。
「俺はグリズリーのレッドヘルムだ。」
このお方もユニークモンスターだった。
話を聞くとレッドヘルムさんはレベル28の猛者で、特技は「殺人頭突き」だそうだ。頭に付いた人間達の返り血が赤い兜みたいで、貧乳魔王様が気に入って、レッドヘルムと名付けたそうだ。
赤兜って…………熊犬じゃないと倒せそうにないな……
「今日は何のようだ?」
「あ、はい。人間達の装備を売りたいんですけど……?」
「おう、なら装備と魔石を出しな」
「魔石?」
そういえばレベルアップした時、ステータスに【魔石】が追加されてたな。
「なんだ、生まれたてなのか?冒険者とは戦ったのか?」
「あ、はい。1度だけですが、戦って何とか倒しました」
「なら、体の中に魔石があると思って取り出すイメージを作ってみろ」
「は、はい」
なんだよ、取り出すイメージって。俺も簡単に「はい」とか答えてるし……でも仕方ない。だって怖いんだもんレッドヘルムさん……
スライムとファントムメイジなんか我関せずを貫いて黙って見てるし。
くそっ!なんで俺ばっか……
だが意外にもやってみたら簡単に魔石が出てきた。丸くて手の平サイズの透明な石だ。
「ルーキーなら仕方ないな、魔石について教えといてやる」
レッドヘルムさんは、魔石について説明してくれた。
何でも魔石は、人間を殺すと魔物の中にある何かが体内で結晶化して出来る石らしい。
そしてレッドヘルムさんが持っているという【結晶化】のスキルを使うと、価値ある武器や防具・アイテムを結晶化し、それを魔石に流し込んでくれるそうだ。
スキル【結晶化】は無敵のスキルかと思ったが、装備されているものや、伝説級のアイテムには効果がないそうだ。
「まぁ試してみるのが1番早いと思うぜ?」
と言うわけで早速試す事にした。俺は人間達から剥ぎ取った装備類を異空間から取り出し、俺の魔石と一緒にレッドヘルムさんに渡した。
どれも装備出来ないものなので、全部魔石に換えて貰うことにした。
レッドヘルムさんは俺の魔石と装備類に手を翳すと、「スキル【結晶化】」と唱えた。すると、装備類が綺麗な粒子となって魔石に流れ込んでいった。
「ほらよ、魔石を体内に戻すイメージをしてみろ」
俺は魔石を受けとると体に押し当ててみた。魔石はスッと体に取り込まれる様に消えていった。
魔石:0→100
鑑定を使って視てみたら魔石の数が増えていた。
『条件をクリアしました。スキル【魔石譲渡】を修得しました。』
『条件をクリアしました。称号【水晶時計】を修得しました。』
『称号【水晶時計】により、スキル【結晶化】を修得しました。』
「ん?」
頭の中にメッセージが浮かんだ。
「スキル【魔石譲渡】を覚えたか?」
「あ、はい……」
「魔物はこれを通貨代わりにしている。買い物したけりゃ、人間殺って装備を魔石化するんだな」
なんか結構便利なシステムだな。魔物とか意外とハイテクなのか?
「おっと最後に……」
「まだ何か?」
鑑定で確認したいことが結構あるんだけどな……
「魔物の価値は、魔石の数値が高い程価値がある。どれだけ人間を狩って、良い装備を魔石化させたかで、魔物の価値は決まるんだ。逆に人間共は魔石のある魔物を狩って、価値のある魔石を硬貨なんかに換えてるみたいだがな」
へぇ~……ためになる知識だ
「【魔物の価値は魔石で決まる】!!魔物の格言だ、バルバトスみたいにメスにモテたかったら魔石の数値を高めることだ……ニヤリ」
な、なんと!!ビジュアルではなく、魔石でオスの価値が決まるのか!!
「まぁなんだ、早く俺んとこの武器を買えるようしっかり魔石を貯めるんだな」
「は、はい……が、頑張ります……」
でも人間と戦うのは怖くて勘弁だな。でもモテたいな……。
「俺に武器を作らせてくれって言いたくなるような、すげぇ魔物になれよ」
レッドヘルムさんはニヤリと笑い、親指を立てた。
しぶぃぃ!渋いよレッドヘルムさん!何なのこの村!?バルバトスさんはイケメンで、レッドヘルムさんは渋いとか、この村にはカッコいい魔物しかいないのかよ!!
ヤバイ!ちょっとヤル気出てきた!頑張って人間狩ろうかな……
「あ、終わったっすか~そろそろ宿屋行きましょうよ?」
「わ、私も……ちょっと……つ、疲れました……」
不意に部下2匹に声をかけられ、現実を直視する。時計、スライム、ファントムメイジ……3匹ともレベル2……現実は厳しい
俺はバルバトスさんやレッドヘルムさんみたいな、カッコいい魔物になれるのだろうか?