ジョブズの仕事
とりあえず回数たくさん書いておけ的な
「まずい。」
そう言いながら祖父は戻って来た。
「USBないわ。」
やはりUSBはどこかに無くなってしまったようだ。
「データのバックアップは?」
「パソコンごとゴミに捨てた。」
「なぜ捨てた。」
「というより、身辺整理ということで捨てられた。」
「もうそれ半分、老人虐めじゃないか。」
「ばあさんはアンチウインドウズだったからなあ。私がマックを使っていれば捨てられなかったのかもしれないが。」
「とても老人の発言とは思えないな。」
「まあ、とりあえず、覚えている限りで思い出すから。それを元にして会ってくれ。」
「というより、そんなの覚えていないものなの?遺言書にも書くようなほどの人なんじゃないの?」
「年寄りのボケる速度をなめるなよ。」
「なめられた!」
「それは私のセリフじゃない?」
「ボケ老人が気にしないでいいよ。」
「なるほどなあ。」
祖父はとりあえず最初に覚えている人を書いてくるから。といって自室に戻っていった。
祖父、カムバック。
「とりあえず、この住所まで行けばいいから。」
そういって祖父は紙を渡してきた。
そこの住所は北海道だった。
「え、僕って今から北海道に行くの?」
「そうよ。」
「もっと近場なかったの?いきなり北海道とか辛いんですけど。」
「ゴタゴタうるせえな。ガキが。」
「急に怒る!」
最近はキレる老人が増えてるというのをテレビで見た。
「じゃあ、これは飛行機のチケットね。明日の朝九時発だから。」
そういって祖父は飛行機のチケットを渡してきた。
「マジかよ。」
「マジに決まっているだろ。ここでさらに揉めたらストーリー的に全然進まないだろ。少しは理解するべきだよ。孫よ。」
「もうメタフィクションの世界はいいよ。」
「こんな、陳腐なメタフィクションは要らないって訳か。」
「誰も陳腐とは言っていないけど、流石にこれはメタフィクションの大安売りというか、質が悪いというか。メタフィクションの名を汚しているような気がしてならないよ。」
「一理あるね。」
「じゃあ、僕はとりあえず北海道に行けばいいのね。」
「後悔はさせないよ。私の74年の人生に誓える。」
「おじいちゃんって今86歳でしょ・・・。」
年寄りはすぐサバ読む。