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06 前世・(おそらく)モブの回想

 二人の幼なじみと距離を置こうと決意し、計画を実行した本日。

 計画が失敗したどころか裏目に出て、久しぶりにそれぞれと登下校する羽目になってしまった。


 うん、これではいけない。

 理子さとこは反省しつつ、今後の対策を講じる。


 前世が魔王で、ジークハルトだと言う陽斗はると

 前世が勇者で、ヴォルフレイだと言うれい


 二人とも、冗談を言っている風には見えなかった。いたって真面目に、普通の態度で、理子に話してきた。


 魔王と勇者。まるきり対極の存在だ。

 なぜ二人はいきなりそんなことを言い出したのだろう。

 漫画やゲームの影響だろうか。二人で話を合わせて、自分をからかおうとしているのだろうか。


 いや、あの二人はそんな凝った悪戯はしないだろう。

 幼稚園の年長組の頃から付き合いがあるからわかる。


 される悪戯といえば、せいぜい物陰から出てきて驚かされたり、プレゼントで蛙や虫や蜥蜴を渡されたり、寝ている間に顔に落書きされたりとか、可愛げのある子供らしいものだ。

 時には深さ一メートル以上の落とし穴掘られたり、大きな網の罠を張られたり。

 遊園地に遊びに行ったときには二人に散々連れ回され、陽斗にはジェットコースターに三回連続で乗らされて、玲にはお化け屋敷に一人置き去りにされたものだ。

 そういえば、陽斗にはサンタクロースを捕まえよう!と言われて小学一年から六年のクリスマスに毎晩、寝ずにつき合わされた(言い出した本人は隣で寝ていたが)。玲からは、カニかまは本当にカニの繊維を裂いて撚り合わせてできているんだよと信じ込ませられ、中学生になってようやく嘘だと判明したこともある。


 ……あれ、結構ろくな思い出が無い気がする。


 思い出すと切りがないので、理子は早々に切り上げて布団に潜り込んだ。今後の対策は、明日以降に考えるとしよう。今日は何だか疲れた。


 そういえば、と理子はうとうとしながら考える。


『リコ』


 陽斗も玲も、理子のことをそう呼ぶ。

 小さい頃は、“サトコ”と呼びづらかったようで、“リコ” でいいわよと母親が二人に言ったのだ。以来、二人とも理子のことを『リコ』と呼ぶようになった。


『リコ』

『リコ』


 懐かしい幼い響きに、ふっと今日の声が重なる。


『覚えてない?』

『覚えてるか?』


 ……何を?


 ……誰を?


『リコ』


『リコ』


 ――呼んでいるのは、誰?


 浮かんだ疑問は、しかしすでに眠りの縁にあった意識と共に静かに沈んでいった。


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