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03 前世・(たぶん)モブの心境


 さてと。

 貴重な休日に、それぞれ中二病的な告白をしてきた二人の幼なじみに、どう対処するべきだろう。

 貴重な休日の夜の時間を使いながら、佐藤理子さとう さとこは悩んだ。


 二人は、幼稚園の頃から一緒に育った大切な幼なじみだ。


 絵本に出てくる王子様のような風貌を持ち、明るさと優しさで誰からも好かれる陽斗はると

 怜悧な容貌と大人びた物静かな性格で、少し恐れられながらも男女から憧れを抱かれるれい


 例え、小学生の時に、二人と仲が良いという理由で女子からやっかみを受け、仲間外れにされることがあったとしても。

 例え、中学生の時に、二人と仲が良過ぎるという理由で女子の呼び出しを度々くらい、これは結構厄介なんじゃないか、と危機感を覚えたとしても。

 例え、中学卒業でやっと二人と離れて平穏な日々を送ることができると内心で期待していたのに、同じ高校に通うことになり、結局小中学校と似たような状況に陥っているとしても。


 ……あれ?何だか嫌な思い出しか出てこない気がする。

 まあ、一応、大切……かもしれない、幼なじみである。


 あ、そうだ。いっそ、これを機に距離を置くとか?


 そんな結論に至ってしまう理子はといえば、陽斗や玲とはかけ離れた容姿をしていた。


 つまり、ごくごく普通なのだ。


 肩につかないくらいのボブの黒髪に、焦げ茶色のどんぐり眼。小さい子供鼻に、小さな口。

 これといった特徴の無い風貌の、ごくごく普通の女子高生である。身長と体重は平均より下で、実年齢より低く見られるのが特徴といえば特徴だろうか。

 性格も、暗すぎず明るすぎず、若干面倒臭がりではあるが、普通で地味な性格である。


 そんな普通な理子が、陽斗や玲と並んで歩けば、まず存在は無くなる。

 背景と同化し、溶け込む。いわゆるモブ。

 二人が魔王と勇者というのであれば、理子は村人Dだ。RPGに出てくる、村の中を一定のペースで行ったり来たりしているあれだ。台詞すら無い背景と化している場合も時としてあるくらいの。


 もっともそれは、二人が話しかけてこなければ、の話である。


 そう、二人とも、小学生でも中学生でも高校生でも、妙に理子に構ってくるのだ。

 お隣さんということもあって、下校はともかく登校は一緒になる核率が高いうえ、校内でも何かと話しかけてくる。

 人気のある二人と一緒にいれば、地味な理子でも必然的に注目され、羨望と嫉妬、さらに何であんたみたいに地味で普通な奴が、と侮蔑の視線を受けることになる。

 おかげで、高校では友達が少ない。いじめに遭っていないのは不幸中の幸いか。


 ……ああ、やっぱりこれを機に二人と袂を別つのもいいかもしれない。

 求めるのは、平穏なモブ生活なのだ。魔王にも勇者にも、できれば関わりたくはない。


 曖昧に結論付けながら、理子は悩むのを止めてベッドにもぐりこんだ。


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