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02 前世・勇者の告白


「俺も初めは信じられなかったんだけどね」


 顎に手を当てながら憂鬱そうに息をつくのは、鴻上玲こうがみ れい

 理子の家の右隣の日本屋敷に住む、幼なじみだ。

 サラッサラのストレートの黒髪と、暗い漆黒の目を持つ、純日本人。

 通った鼻筋に薄い唇、切れ長の目という怜悧な風貌と静かな物腰が、落ち着いた印象を与える。

 背が高く細身ながらも、武道で鍛えた身体はしっかりとしており、実家の道場で師範代を努めるほどである。

 さらには、高校入学早々に風紀委員会に入った挙句、裏番を倒して不良のトップにたったと風の噂で聞いた。

 いわゆる、正統派和風系のイケてる男子だ。


 そのイケてる男子が、休日の午後、唐突に家に尋ねてきて「前世が勇者だった」とのたまった。

 とりあえず理子は、リビングのソファに彼を座らせ、熱い紅茶を出す。濃いめのティーバッグ紅茶だ。


「まあ、落ち着こうよ」

「いや、落ち着いてるよ」


 理子の冷めきった目線に、玲は静かな微笑みを返す。


「君、全然信じてないよね」

「うん」

「だろうね」

 

 素直に即答した理子に、ふふ、と玲は苦い笑みを零した。

 何か諦めたように肩を竦めながら、こちらを見つめてくる。


 鴉の濡れ羽色と称される漆黒の目は、昔と変わらずに美しく、新月の夜を思わせる。

 一切の濁りの無い、強い意志を秘めた瞳。


 どこもふざけた様子が無いのが、逆に心配になった。

 ああ、これもかなり重症かもしれない。

 玲の前に座り、理子は慎重に言う。

 

「あのさ、何か悩みがあったら言って。解決できないと思うけど、聞くだけ聞くから。あ、おじさんおばさんには言わない方がいいよ」

「……」


 真面目に言ったのに、玲はどこか迫力のある微笑みを返してきただけだった。


 とりあえず、思ったこととしては。


 ――玲は勇者というより、魔王が似合うよ。絶対。


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