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最強家政婦、あらわる。

作者: さくらぶし

設定だけです。そして名前が適当。横文字ニガテ。連載の息抜きなので、メチャクチャだったらすんません。

ドンドンドンッ!


「チッ。まだ寝てやがんすねぇ。今日行くって連絡入ってるはずなんすけどねぇ。ん~、蹴破って直すのも自分っすから、ここは大人しくカギあけでもしますかねー。」


立派な、大変立派な屋敷に1人の女…?が立っている。どうやらこの屋敷に用事があるらしく、だがドアをどんなに殴っても誰も出てこない。

女は仕方なさそうに、鍵穴に何かの道具を突っ込んでカチャカチャやっている。しばらくすると、カチャッと鍵が開く音がした。


「よーし!開いた開いたぁ。さーて、お邪魔しますよぉっと。」


女は遠慮も何もなくズカズカと屋敷に入っていく。そして、


「すぅ~、すいまっせーーん!誰かいますかぁーー?ってかいるはずなんで起きてくださーーい!」


大きく息を吸ったかと思うと、そのまま声を張り上げた。それは広大な屋敷さえも震わせるぐらいの声量で、間もなくバタバタと複数人の足音が聞こえてきた。


「うっせー!だれだ俺様の眠りを妨げるのは!」

「今何時だと思ってるんです?常識と言うものを考えなさい。」

「「ん~、ボクまだ眠いのにぃ」」

「一体なんの騒ぎだ!というか今のはなんなんだ!」

「……っせー」


出てきた、恐らくこの屋敷の住人たちは、思い思いの文句を言いつつ玄関ホールに集まる。

住人たちはみな就寝中だったらしく、すこぶる機嫌が悪い。しかし、女はそれに意も解さず、


「お集まり頂いてすんません~。今日付けでこの屋敷の家政婦を勤めさせてもらうことになりましたぁ~。協会の方から連絡は受けてるはずなんすけど、応答がなかったんで勝手に上がらせてもらいました~。名前はアリアっす。気軽に家政婦って呼んでくださいっす。自分の部屋はどこっすかね?」


とマイペースで話を始める。

それに呆気に取られていた住人たちだが、ようやく理解が出来たらしい。快くアリアをむかえ…


「っざけんな!家政婦ごときが俺様の眠りを邪魔していいと思ってんのか!?お前なんかクビだクビ!さっさと出てけ!」


なかった。ものの数分で解雇宣告を受けてしまった。どうするアリア!


「あ~それは無理っす。自分は協会を通してこのお屋敷の旦那様から依頼されてるんで。どーしても辞めさせたいなら旦那様に言ってくださいっす。」


これまたマイペースで住人①の意見を却下する。すると住人②が、


「父上が言っていたのはあなたのことだったんですね。しかし、こんな常識知らずとは…。なんかの間違いじゃないんですか?」


と言うのに対して、


「さあ?自分は名指しで依頼されたんで、たぶん間違ってないと思うっすけど。」


アリアは知ってることだけを言う。

ただしそれだけで住人②の反感は買ったみたいだ。住人②の冷たい視線が突き刺さる。


「「もぉなんでもいいよぉ。ボクら寝ていい?」」


住人③と④がおんなじ顔でおんなじことを言えば、


「別にいいっすよ。掃除するときは叩き起こしますけど。」


と住人③と④が真っ青になることを言う。

どうやら、住人③と④は自分たちの部屋に入ってほしくないようだ。


「「ボクらの部屋はいい!」」

「無理っす。」

「「なんで!」」

「一番汚そうっすから。自分、不潔なの嫌いなんっす。だから、自分がいる間はこの屋敷にホコリ一つ落ちてることはないっす!」


アリアはない胸を張って言う。

ここでアリアの容姿について触れておこう。

アリアは黒い艶々した長い髪が自慢で、肌は白く、大きな二重とぷっくりした唇が魅力的な女の子では決してない。長い黒髪は適当に1つ結びにし、大きな目はつり上がり気味。唇には何も塗っておらず、外が寒かったせいか少し紫色になっている。身長も平均的だが、栄養が足りていないのか、棒っきれのようにガリガリだ。つまりは、平凡より劣る。

服装も、家政婦と言えば黒の長いワンピースが一般的なのに対して、パンツとシャツという大分ラフな格好だ。本人曰く、『スカートって動きにくいんすよ。どーせ動き回るならそれに適した格好がいいじゃないっすか。』らしい。女らしさの欠片も見当たらないアリアに、住人たちは興味をなくす。『美味しい人間』ということも忘れて。


話を戻そう。

住人③と④の意見をすげなく却下したアリアは、これ以上は面倒だと言わんばかりにズカズカと玄関ホールを突っ切っていく。


「ちょっと待て。お前が父上から依頼された家政婦なのはわかった。だが、こちらにもこちらの事情というものがあるんだ。まずはこちらの話を聞いてもらおう。」


住人⑤はわりかしまともらしい。この家のルールを教えようとしたが、アリアは


「あ~、忘れるからいいっす。自分、興味ないこと覚えられないんす。そのときごとに言ってもらっていいっすか?あと、取り敢えずご兄弟の順番を教えてもらえれば。」


覚える気もなかった。

さすがにイラっとした住人⑤だったが、そこは恐らく一番の年長者。アリアに7人の名前を教えていく。もう1人はこの騒ぎの中でも寝ているようだ。


「…私が長兄のレオディオンだ。あの眼鏡を掛けているのが次兄のジョードップ。髪の毛が逆立っているのがブライド。三男だ。一番背が大きいのがオーロン、四男。双子の右側が五男のラキアで隣が六男のロキア。今はいないが、従兄弟のリルナリアも一緒に住んでる。」

「えーっと、まともそうな人がれおじおん、眼鏡がじょーじっぽ、俺様がぷらいと、双子が…まぁいいや。黙りがおーら、いないのは、あー面倒だからいっか。」


ちゃんとメモメモしてたアリアだが、最初っから間違っている。しかもすでに覚える気はないようだ。アリアの中では、1番目・眼鏡・俺様・黙り・双子その①その②で名前が付けられた。というか、呼ぶ機会はないだろうと思ってる。


「…お前、人間だろ。」


黙り(オーロン)が口を開く。


「?そうっすよ。家政婦をやるなんざ、人間ぐらいしかいないと思いますがねぇ。あっ!この家って珍しく魔族を家政婦にしてたんすっけ。だからこんな汚ないんすねぇ。自分が1日で綺麗にしてみせるんで。」


その言葉に誰しもが『不味そうな人間』と感想を抱く。

この一家は魔族の中でも一番位の高い『ヴァンパイア』の一族だ。そのヴァンパイアでも上位にある貴族。最も魔王に近い一族と云えよう。

そんな奴らだからこそ、誇りやらプライドやら選民意識が異様に高い。こんな風に見知らぬ、しかも『人間ごとき』に勝手に口をきかれるのは奴らの矜持が許さない。それでも、今この場でどうこうすると、恐らく一族の権威の象徴・父親が許すことはないだろうと誰もがわかっていた。

そして自分たちが好んでこの人間を食べないだろうとも。

ヴァンパイアは血が好きだ。しかし、それがなくては生きていけないという程ではない。例えて言うならば嗜好品だろうか。だから飲まなくても生きてはいける。だが、人間の血は食欲も性欲も両方満たされる、極上の嗜好品だ。わざわざ家政婦になんかせずに、その美貌近寄ってくるバカな人間どもを思う存分食べればいいだけだ。

でもこの女だけはない。と誰しもが思った。


魔族は多種多様だ。そしてその定義は曖昧でもある。魔族は『魔力』を持っているもの、とされるが、『人間』の中でも極稀に魔力を宿している者もいる。でも、やはり人間は人間だ。

魔族の中にも、人型が基本という種族や、見た目そのものが怪物のような種族、見た目は人型でも凶暴性に富んだ種族もいる。しかし、その頂点は『魔王』であり、次に続くのが『ヴァンパイア』の種族だ。

魔王は世襲制ではなく、先代が消滅すると、その力が誰かに受け継がれる。そして魔王は魔族の中で絶対的存在だ。逆らうことさえ許されない。

人間の王は、殺されたり生きている間に代替わりをするが、魔王にそれはない。基本が自由の魔族にとって魔王とは唯一無二の『抗えないもの』なのだ。そして今代の魔王に一番近いこの住人たちの父親もまたしかり。

よって、この者たちは、父親の許可がない限りアリアを追い出すことも殺すことも出来ない。


「じゃぁ取り敢えず、自分の部屋と台所だけ案内してもらっていいっすか?あとは自分でなんとかしますんで。」


こうして、アリアとヴァンパイアの中でも気位が高く、またその見目麗しさから常に女性の視線を一人占めにしていく7人の男たちとの奇妙な生活が始まった――――


************


半年後


ここは王宮の中の『家政婦派遣協会』。

自由奔放すぎる魔族に(ある程度)きちんとした生活を送らせるための機関だ。

魔族は基本人間のことを見下しているが、繁殖力の高さと、生活水準の高さだけは買っている。

そこで、魔族の身の回りの世話をさせるために人間から家政婦を雇い、それを管理する機関が設けられたのだ。


そこの責任者のマリトスは、いつも通り仕事をこなしていた。

すると、電話が鳴った。この『電話』も人間が発明したものだ。弱っちくてすぐに死ぬし、魔力も持ち合わせていないくせに、その頭の回転にはさすがに舌を巻く。魔族同士で意志疎通は出来るが、ちらのつ都合や向こうの都合を考えれば電話の方が便利な時もある。

マリトスは電話を取ると、『はい、家政婦はけ…』まで言い掛けたが遮られた。


『マリトスさん!アリアっす!助けてください!』

「アリアか。助けてとは一体…まさか"もう"なのか!?」

『その"まさか"っす!お願いしますっ!』


電話の相手は人間のアリアだった。

この少女は、弱冠17歳にして一部では有名な家政婦だ。

曰く、『仕事がよく出来る』『気が利く』『アリアに任せれば家は安泰』『アリアが休むと途端に家がまわらなくなる』とまで魔族に言わしめるのだ。

マリトスも長くこの仕事をやっているが、今までこんな人間はいなかった。

しかし、アリアにはたった1つだけ欠点がある。それが…


「いや、まだ半年しか経ってないじゃないか。いつもはもうちょっともつだろう?」

『でもなんか今回ヤバイっす!今まで以上に!これでも我慢してたんっすけど、もう限界っす!怖いっす~!』


その言葉にマリトスは驚愕した。あの少女が、ビビらない・怖がらない・怯まない、つまりは怖いものなんか1つもないあの少女が『怖い』と言ったのだ…っ!

しかし、マリトスはアリアが派遣された家のことを思い出して不思議に思った。あの住人たちは確か、


「あの兄弟は『人間嫌い』で有名だったはずだが。」


そう。選民意識が強く、自分たち以外はゴミ・カス・チリ以下だと思ってる奴らだ。特に人間なんか、存在する価値もない。せいぜい自分たちのエサになることしか能がないと思ってる。そんな奴らの元に、優秀なアリアを行かせるのは偲びなかったが、奴らの父親、第二の権力を持つロベデリオに頼まれてしまっては断れるわけがない。

しかし、見方を変えれば父親から依頼されたのだから、奴らに手出しは出来ない。ならば、もしかするとアリアも腰を落ち着けられるかもしれないと考えていた。


『そのはずなんすけどぉ~!どこをどう間違えてしまったんすかね…。とにかく!なんとかしてほしいっす!』

「わかった。ロベデリオ様からは私から言っておこう。アリアはいつも通り、買い物だとかで誤魔化して契約破棄の手続きをしにこちらに向かってくれ。」

『それが出来ないんす!だから助けを求めてるんすけど!』

「は?それはどういう…」

『なんか屋敷の外に一歩も出られないんす!玄関からはもちろん、窓から出てもいつの間にか誰かの部屋にいるんす!』

「アリア、私があげた魔力無効化の石は持っているかい?」


マリトスは、アリアが初めて家政婦として雇われる際に『魔力無効化』の石を渡して、肌身離さず着けているように言い含めていた。

最近は薄れてきているとはいえ、まだまだ人間に対する蔑視は多い。一応、派遣先を調べてはいたが、『人間のアリア』に何をするかはわかったものではない。だからこそ、魔力で何かしようとしても、害意ある魔力を吸う石を渡したのだ。それで身の安全を守れるように。


『もちろん持ってるっす!でもなんでかダメなんす!』

「……恐らく石が害意と見なしてないんだろうな。」

『そんな…っ!じゃぁどーすれば……』


アリアの途方に暮れた声が聞こえる後ろから、

ドンドンッ

とドアを叩く音と、恐らくドア越しなんだろう、くぐもった男たちの声が聞こえてきた。


『アリア!てめぇ、誰と電話してやがんだ!俺様というものがありながら!今すぐ出てこい!』

『アリア、私に隠れて電話なんて、イケナイ子ですね。オシオキしてあげますから、早く出てらっしゃい。大人しく出てくれば、優しくオシオキしてあげますよ。』

『『アーリちゃーん!早く出てこないと、ボクらの部屋に閉じ込めちゃうよぉ?そしたら二度と出してあげないんだからねぇー!あっ、そっちの方がいっかー!』』

『……早く来い。そしたらおれの腕でこんな奴らから守ってやる。』

『お前ら!そんなこと言って余計にアリアを怖がらせてどうする!アリア、大丈夫だ。私が余所見も出来ないぐらい愛してあげるから。早く出ておいで。』

『だれがでるもんかぁーーー!!』


マリトスは漏れ聞こえる声に頭を抱えた。

ここ数年で増えた白髪がまた増えそうだ。


アリアのたった1つの欠点。それは、『派遣先の人たちを虜にしてしまうこと』だ。

女子供や結婚してる身なら問題はない。だが、その家にいる、適齢期の男は大概アリアに執着する。何がそうさせるのかはわからない。本人もだ。ただ1週間に1度挨拶する間柄でも、最悪話すらしなくても、アリアに好かれたくて堪らなくなるようだ。そのためなら何でもするという輩が後を絶たない。

そのせいで、アリアは派遣先を転々とするしかない。何故ならその男たちはその家の息子やら親戚関係にあるからだ。ひどいときには、その両親もアリアを気に入って、嫁にしようと画策したりもする。そんな職場に誰が居たいものか。

アリアの仕事っぷりは大人気なので、紹介先は大いにあるが、如何せん男が問題になる。始めはいなくても、急に帰ってきてしまったらアウトなのだ。

アリアは5年勤めている間に7回も派遣先を変えた。


今回は、気位が高い、美形も美形でアリアのような貧相な少女に興味さえ持たない奴らだろうからしばらくは安心だなと高を括っていたのが仇になった。

まさか、すでにアリアを囲いこむ準備までしていたとは!

マリトスがどうするべきか悩んでいると、受話器から今度はくぐもってない、近くで話すような声が聞こえた。


『アリア、マリトスって誰?俺たちの名前さえ覚えないのに、そいつのことは覚えてるの?なんで?アリアは俺のものだろう?そんなやつ…殺してあげる。俺のアリアに近付くやつなんて、八つ裂きにしていいよね。そいつは今どこにいるの?すぐに始末しなきゃ。』

『ぎゃーーーーーー!いとこ!どっから入ってきたんすか!ってか腹絞めないで!苦しいっす!たーすーけーてー!』

『あっ!リルナリアのやろーまた抜け駆けしやがて!なら俺様だって…!』

『『ボクたちもー』』

『待ちなさい!』

『お前ら!』

『……』


ドーンッという、恐らくドアが壊れた音を最後に通信は途絶えた。

しかし、途絶える瞬間、『お前マリトス?俺らからアリアを取り上げようなんて、死ぬ覚悟をしとけよ?アリアのためなら魔王だって俺は殺すから。』という台詞だけは聞こえた。


マリトスは悩む。

命を捨てる覚悟でアリアを助けに行くか、アリアをそのまま見捨てるか。

マリトスの頭はもしかすると白髪だけではすまないかもしれない。

ほんとは、マリトスさんとアリアの出会いとかも考えてたけど、長くなりそうだったので割愛しました。ちなみに、マリトスさんはアリアを娘のように思ってるので、逆ハー要因じゃありません。

反響(ないと思うが)良かったら続く…のか?

でもそのうち消しちゃうかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初と最後のみんなの対応の差がスゴすぎる [気になる点] なにがあって アリアに執着したのか [一言] 続きをとても書いてほしいです
[一言] 続き希望します!お願いします!
[一言] すごいいいねっw
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