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三題噺もどき5

自然

作者: 狐彪
掲載日:2026/08/03

三題噺もどき―きゅうひゃくじゅうに。

 




 旅というモノは、どれだけの物を人々に与えているのだろう。

 初めて見る景色、初めて嗅ぐ匂い、初めて触れる土。

 そのどれもがきっと人生を明るく照らしてくれるのだろう。

「……」

 だから、旅をする人々は絶えず、どこかに居る。

 それが国内だろうと国外だろうと、何かを求めて旅に出る。

 ……そんな殊勝なモノばかりでもないか。

「……」

 しかし最近はよく旅の動画が流れてくる。

 夏休みという時期もあるからか、子供向けの施設を紹介したり、キャンプやグランピングの紹介をしたりしている者が多くみられるが。

 ……たまに広告か何かで、化粧の動画が流れてくるのだが、そのどれもが口紅の話で、なんか嫌になってきた。どうして口紅の広告ってあんなに派手派手しいのだろう。

「……」

 もう少し幼い頃には、我が家も夏になればよく行っていた。引っ込み思案ではあったが、割とアウトドアなところもある。内弁慶ってやつだろう。

 まぁ、それも今じゃ行かなくなったし……もう行くことそのものが難しいだろう。誰も行きたいなんて言わないし、まだ、そんな気持ちにもなれない。

「……」

 今もスマホの中では、かの有名な時計台が写されている。

 雪の降る国も、この夏はさすがに暑いのだろうか。

 東北と呼ばれる地方に行ったことがないので、夏と冬の寒暖差がいかほどなものなのかあまり想像がつかない。

「……」

 私の住む地域は、雪なんてめったに降らない。

 これでたまに降ると、小学生ははしゃぐが、大人たちは道路や電車の心配をする。

 生活に関わってくることだから当たり前なのだけど。

「……」

 きっとあのあたりに住んでいる人からすれば、何をそんなにと言う感じなんだろう。

 雪への対策なんてあってないようなものだし、経験年数が違うからなぁ。

 まぁ、でも、自然災害なんてどこの地域にでもあるし、それぞれの対応が出来上がっているんだろう。まだまだ子供の私には分からないが。

「……」

 最近、地震が頻発していることもあって、変な思考が回っている。

 被害妄想が激しい人間なので、嫌でも過大妄想してしまう。

 特に、今みたいに、家に1人でいると。

「……」

 まだ外は明るい。

 つい数時間前までは学校に居たのだけど、午前中の授業が終われば今日はさっさと帰れと言われたのだ。いつもなら少し残って帰るのだけど……三者面談かなんかするんだろう。

 せっかくあの子と今日も一緒に昼食だけたべて帰ろうと思っていたのに。

 まぁ、途中までは一緒に帰ったからいいのだけど。

「……」

 帰宅して、昼食を軽く食べて。

 誰もいない家の、自室で、ゴロゴロとしている。

 スマホをいじって、流れてきた旅の動画を見て。

 なんとなく、良いなぁと思いつつ。

「……」

 また遠くから聞こえるサイレンに、変な妄想が膨らむ。

 時折、身体が揺れているような錯覚に襲われ、地震だろうかとSNSを見てみる。

 簡単に手に入るその情報は、不安を煽りもするし、安心を与えてもくれる。

「……」

 あのサイレンは、誰を迎えに行っているのだろう。

 まさか、火事でも起こったのだろうか、熱中症で倒れたのだろうか、事故にでもあったのだろうか。

 そんな妄想ばかりが膨らんで、余計な不安ばかりを募らせている。

「……」

 どれも杞憂に終わって、家族が家に帰ってこれば、全部消えてなくなるのだけど。

 それまでは気にしないようにしたって、考えてしまうし、妄想してしまう。

 ……これを、あの時もできていたら、今みたいなことにはなってなかったかもしれない。もっと、母は一緒に生きて行けたかもしれない。

 毎日毎日、終わったことばかりを考えて、先の事を考えた瞬間に視界は真っ暗になる。

「……」

 来週は、お盆がやってくる。

 去年まではあまり関係なかったのに、今年ばかりはそうもいかない。

 初盆だから。

「……」

 いやだなぁ。












 お題:時計台・口紅・雪

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