???世紀末
西暦2078年、それが日本の最後の日だった。
日本が終わる日の30年前、人口減少と多様化が同時進行する日本ではヨーロッパのある研究が注目されていた。それは動物と対話する研究。動物と意思疎通ができることが証明されたのだ。これを受けて日本の畜産業は低迷。日本の食料自給率は10%を切ってしまった。追い打ちをかけるように海外からは過激な動物愛護団体などの活動家が流入。日本だけでなく世界がすでに混沌に陥っていた。
それから約200年、日本であった場所、タクマン王国の某所では再びカオスの時代が訪れようとしていた。
「オイオイーすごいヒトゴミだなこりゃー」
建国記念日である今日、建国記念日祭りの舞台である繁華街は人混みであふれていた。否、人だけではない。頭部に角が生えた者、尻尾が生えた者、鋭い牙を持った者などが二足歩行している。人間とも獣ともいえない者たちがそこらじゅうにごったがえしていた。遠くの屋台の前で牙がの背に当たり揉めている者たち。大きすぎて路地をふさいでしまっている者。そんな光景がこの国では当たり前だ。
そこに一人の男が人気のない屋台の前で財布の中を覗き込んでいた。
「えー1マンク100円だから、えーと、おじさん!この像の足指風味の油揚げ1枚頂戴!」
「あいよ!」
「ありがとうゴザ!それにしても珍しいですね。まだ円表記をつかっているなんて。」
「あーそうだなマンクになってから5年。未だに慣れなくてな。せめて忙しくなる祭りの日は円を使おうと思っていたんだが…。」
「お客さん来ませんね。」
「そうだな…暇だしここで俺と少ししゃべらないか?お前も一人だろ?残りの像の足指風味の油揚げは全部やるからよ!」
「やった!」
「ほーら、こっちに来てくれお前の大好物だぞお。」
「油揚げ!え、太いっ太いよお!こんなの入らないよお!」
「おまえのために作った特別な油揚げだ。オラッ」
「アーーーーーー」
「この国も豊かになったもんだ。ところで、お前の名前まだ聞いてなかったな。」
「フ―フ―フ―…広末ですっ。」
「そうか、広末。親近感のある良い名だ。」
「あ、ありがとうゴザ。」
「なあ、世の中どうしてこんな風になっちまったんだろうな。」
「?」
「昔は混ざりものなんていなくてよお、人間様がえらかったんだぜ。今じゃ信じられないが。見てみろ。今日だって俺の屋台は誰も来やしない。立地が悪い?商品が悪い?違う。俺が、人間だからだ。見ろ。人気なのはあのモンキー野郎とクソキリンたちの屋台だ。日本だったころを見てみたいよ。タクマン1世が人間中心の政治体制に対してクーデターをおこしたタクマン革命。あれがなかったら、こんな思いすることなかったのかもな。」
世はタクマン歴三世紀末。これは広末の出会いと別れと勇気と愛と嫉妬と孤独と勇気と陰嚢の物語である。




