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カードビギナー広末

「へへっ!楽勝だったな!レズモンド美術館の警備も甘くなったぜ!」


頭部からうさ耳を生やした中年男がそう言う。男が路地裏を走りながら抱えているのは小さな檻に入った人形だった。揺れることで檻のあちこちにぶつかり高い音を響かせる。


「このまま大道りに出ちまえば俺の勝ちだ!」


男はちらりと後ろを覗き見る。追っ手は確認できる限り20人ほど。少し多いように思えるが心配無用だ。なぜなら男はこの国に数少ないラビットマン。足の速さなら他の種族の追随を許さない。


見えた!ここを曲がってまっすぐ行けば大道り!


男は勢いよく角を曲がり―――ぶつかった。

男が曲がった先には先回りした警備隊が立ちふさがっていたのだ。


「なるほどね、妙に警備の練度が低いと思ったら別動隊がいたわけだ。やたらと多い雑魚警備はこれを隠すためのブラフか。」


「無駄口を叩くな。逃げ場所はない。お前はもう終わりだ。」


「そうだな。普通に考えればそうだよな。」


「…何が言いたい?」


「おれは数々のお宝を盗んできた大悪党。こんなクソみてえな状況になったことは何度もある。だがな、最後にゃなんとかなっちまうんだよ。それが、<幸運の黒兎>と呼ばれる所以よ。」


「はははは!私たちに逮捕されたが最後、お前はもう二度と日を浴びることはない。私が保証しよう。…時間稼ぎにはもう飽きた。捕らえろ! うっ」


警備のリーダーがそう言った直後眩しそうに空を見上げた。


「ほら、来た」


兎男がうすく笑う。


「な、なんだ?太陽が、二つある?」


一つの太陽が動いた。すると美しい円を描きながら―――


「ふぎゃっ」


目前に堕ちた。


砂煙の中、警備隊のリーダーの上に悠然とたたずむ男?は言った。


「カードマスター広末…参上!」



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