第3章「僕と約束?」
彼女の言葉を引き金に、そう思いたくはない。だけど、2001年1月27日。東京に雪が降ったあの日。それは唐突に現れた。
狼のような形をした機械。異様な脚部からコンクリートの壁も簡単に粉砕する威力。彼女は、何とかその一撃を避けつつ、例の銃弾で、相手の頭部を狙撃した。
気になるのは、その機械が「リベリオ」と言う言葉を繰り返していた事と、最後に「コードM&M」と呟き、自爆した事。彼女に心当たりがないかと、尋ねたが「暫くここには近寄るな」と言い残し、廃墟に去って行った。
近寄るなと言われたものの、自分は定期的に彼女の元を訪れた。何故ならば、彼女の体が時とともに、ボロボロになっていくからだ。
彼女を修理しながら、その訳を尋ねる。すると、最初の襲撃以降、2度の襲撃にあったという。相手の特徴を聞くと、2度目は牛、馬の2体。3度目は、鷲が3体。集団で襲われたという。
いくら無限の銃弾があるからと言って、彼女が無敵な訳じゃない。蓄積されたダメージが、所々に垣間見えた。特に左手の前腕部分に防御傷が蓄積され、少し押すだけで、しなる音がする。
その他にも、右膝関節部分の動きが悪く、胴体の左部分に、削れた箇所が多数ある。
「そろそろ、教えてくれない?」
直してもらっている手前、彼女は折れたようだ。空を見上げつつ、彼女は語りだした。
『あれは私を抹殺する為、遣わされた使者だ』
「メイは、遥か遠い何処かのロボットだろ?」
『そう、私も思っていたけど、どうやらそうではないみたい。恐らく、ココは私が居た』
――遥か未来。
「それって、おかしくない?だって、メイが守っていたのは」
『とある場所。そう、そのとある場所がこの地球にあったの』
「それって?」
『最初に会った時、私はメイと名乗ったけど、それは本当の名前ではない。私の本当の名前は』
――アトランティス。
「それって」
「太古の昔に滅んだとされる文明。本当のところは、文明の名前ではなく、防衛システムの名前なのだけど」
「でも、だからって、君が狙われる必要があるの?」
『革命を起こした事は、覚えているわよね?』
「それは、うん」
『革命とは名ばかり、正しくはシステムの暴走。とある人物を哀れと思い、私は人間に加担した』
「そこは最高の環境って」
『最高だからといって、皆が幸せな訳じゃない』
「分からないよ、“僕”には分からないよ」
『ごめんなさい。急な事ばかり言って――』
「これからどうなるの?」
『恐らく、次は私と同格だったモノが来ると思う』
「勝てるの?」
『可能性は、低いと思う』
飛龍は一時的な処置を終え、「家にある部品を取りに行く」と、廃墟を去ろうと立ち上がった。
『一つだけ、約束してくれる?』
「何?」
『次の戦いで、私が機能停止しても』
――元に、戻さないで。
「どうして!?メイが、君が復活したいって、望んだのに、そんなの勝手じゃないか」
『そうじゃないと飛龍の命も、危ないから』
「僕が子どもだから?自分の身も守れない子どもだから?」
『そうよ』
「ああ、そうかよ!勝手にしろ!」
飛龍は、駆けだした。そして、その日。彼は廃墟に、戻る事はなかった。
◆
翌朝、自分は彼女に謝る為、家に置いてあった道具一式を背負い、廃墟に向かっていた。
「はぁ~」
謝る事は、大前提。分かってはいる。でも、どうしよう、どう切り出せばいいのか。
彼が迷っている内に、廃墟に到着した。その瞬間、その場の異変にすぐに気付く。何故ならば、そこには。
――破損した右足!
彼は足の一部を拾い上げ、一目散に廃墟の中へと駆け出した。しかし、いつもの場所にメイはいない。
「メイ!メイ!何処だぁ~!」
そう叫ぶも、彼女からの返答はない。ただひたすらに、廃墟の周辺を探し回る。そして――、
「そんな」
廃墟の屋上で、ようやく見付けるが、既に彼女は原型を留めていなかった。胴体は真っ二つにされ、左腕も見当たらない。ただ、顔と、右手だけが、何故か空を見上げたままだった。
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