#9 [巨大]RTAの女王はゴリ押しの信奉者[守護者]
ギリギリ土曜日です いいね?
「黄金のツメ、ねぇ」
ブツを棺から取り出した現在、第六階層で待機中。実績[墓を荒らす者]を得たのでこれもEX武器なのだろう。ちょっと禍々しい気がするが。
>性能はよ
>というより名前だろ
>このゲームにステータスは存在していません
「んー、と……古代金の鉤爪……神の装備じゃーん、やだなぁ」
松明に照らされて艶めき輝く黄金にシェリーは釘付けになっていく。もっと見ていたい。もっと使っていたい……なんて風に。
>はい罰当たり
>神罰執行
>焦土作戦実行
「ちょっと私に対する裁きデカすぎない??」
ただそれよりも気になるのは視聴者共。さっさと収納して大ツッコミ。ここにハリセンがあればシバキASMRをやってやったのに。
>正義の雨に捌かれろ!
>はいメカニンジャ
>スンマセンデシタ
「いやそれは爆風当ててもろて……ケホッ」
>咽せ助かる
>なんでここで咽せんの???
>そらお前 供給だよ
乾いていた喉を潤す。謎の緊張か、調子が奪われていたからか。つい咽せたが問題はない。というかこのゲームところどころおかしくないか、なんてのを思いつつ……前進。第七階層。
「…………………異変があるねぇ」
>そうですねぇ
>何あれ
>大昔のテレビで見た気がする
「これわたし捕まってる?」
まず。この階層は少し形が変わっている。通路の進行方向には鉄格子。開けるための扉は見当たらないし、
>執行早いっすね
>古代だからな、伝達も不思議パワーなんだよ
>普通に魔力でよくね?
「おまんはリアルに魔法があると申すか」
そして奥。シェリーの腰辺りまでの高さしかないガラスケースのようなものがあるのだが……ガラスには一部穴が空いており、金属の棒が二本外に飛び出ている。
>……あっごめんそうだったわ!
>ちょっとこいつ捕えない?
>バラしてバラして研究しよう!
「ふふっ、それでゲームが面白くなればいいね」
しかも、通路のさらに奥側は壁に塞がれている。壁には何かを差し込めそうな感じがする……が、見ているだけではわからない。とりあえず鉄格子に触れてみる。
「で、これどうやって進むのかなっ『十の刻が過ぎし後 鉄球の試練を与える 進みたくば乗り越えよ 三十の刻限を迎えた後 この通路は閉ざす』……よーし分かった」
すると天からの声がした。多分スフィンクスと同じ声。意訳すると…10秒後に試練が開始。制限時間は30秒、といったところか。
>超速理解
>今回の異変めんどくさいのばっかりですね…
>楽しそうではある(
「やってる側割と命懸けだからね??」
ミスれば1層からやりなお死。モチベとしても死にたくはない。ストレッチして待機、いつでも走れるように地面を突く。
『解放』
「っしゃぁっ!」
俊足で加速からの即スライディング。ガラスケースの前で跪いて停止。両手で鉄棒のをそれぞれ手に取って。
「なんか出てきた!?」
>あ、うん。やっぱり見たことあるわ
>知っているのか雷電!?
>教えて
「なんなのこれ!?」
二本の棒の中心に鉄球が乗せられた。手前にはそれが丁度ハマりそうな筒があるが……肝心の鉄棒は中心で少し凸状に歪んでいる。
>棒を開いたり閉じたりして頑張って鉄球を穴に入れろ
>草
>むっっっっず
「了解!」
試行1回目。試しに開いてみて……落下。開き具合の調節が当然難しい。
>落ちたな
>ささっとやってポンっと終わらせろ
>そうだよ
「初だからねこういうやつ??」
>それはそう
>初見チャート組んで役目でしょ
>いつもの無茶振り好き
試行2回目。残り時間は25秒。今度はどれくらいで越えられるかの確認。開いて、閉じて、開いて、閉じて……
「あぁぁぁ!!!」
>シェリーが叫んでおられる
>\[応援してますよ!]/
>ミーシャがまともなスパチャ送ってる…
>明日は槍かな
越えられそうで越えられない。ギリッギリで歪みに押し返される。そして少し攻めてみようと開き過ぎれば……
「ああクソ落ちた!」
時間は経過して試行3回目。残りは17秒。けれどコツは掴んだと思う。徐々に開いて……歪みは一気に通り抜ける!
>通った!
>こいこいこい
>やったか!?
「っし通過!」
けれどこれで終わりではない。穴に落とさねばならない。調節して、調節して……落とす!外れた!
「ガッデムっ!」
>ビンタされそうで怖い
>頬撫でちゃった
>みんなのトラウマ
仕方がないので切り替え試行4回目。残りは8秒。現れた鉄球を、今度こそスムーズに歪みの手前まで移動させて。
「入れ、入れ、入れ……っ!」
慎重に、目測で、ゆっくりと、確実に。追い越して引き返してくる途中で……棒を開く!
>KTKR
>あっやべぇ
>賭けは俺の勝ちだな
>ギャンブルしてて草
「っ〜〜しぃ!」
吸い込まれるようにして鉄球は筒の中へ。試練を乗り越えた証として、ケースの上にアンクのようなものが現れる。奥の壁に刺せそうだが……残り時間は3秒もない。
「急げ急げ急げぇーっ!」
迷っている暇はない。俊足。激突は掌で衝撃を殺しノーダメ。アンクを壁の穴に差し込んだところで……無慈悲な宣告が届く。
『時間である』
>やっべ
>潰れろ潰れろ潰れろ…!
>シェリー!!!!早く開けろ!!!!
「分かってる急かすなっ!」
両方の壁が動き出す。シェリーを潰そうとしているのだろう。さっきの段階でアンクが取れていなければヤバかった。落ち着いて、奥まで押し込み、回せば……壁が開いた!
「脱出ぅぅぅ〜〜っ!!!」
>シェリーの勝ち!
>よしっ
>うぉぉぉ………俺の金が……
そのまま暗闇に突っ込み第八階層。今度は一見できる異変は見当たらない。なんとか一息つけそうだ。壁にもたれて……さっきまで突っ込めなかった点に物申す。
「配信でギャンブルすんなし……スパチャして貢献しろ」
>\[はい……]/
>そこそこの額で草
>金持ちか?
>言ってることがチンピラ
「よろしい」
ふふんと笑いつつ頷き、前へ視線を戻す。松明はいつも通り。壁画も変わらずの四種が並んでいて……進めばスライムが出現。
「せいっ」
ワンパン。
>はい。
>もう作業なんよ
>スライム収穫業者
「そら慣れてりゃ雑魚よ」
位置と弱点がパターン化されているならばそれに従うだけ。走者の実力をもってすればこの程度は当然。ポリゴンが天井に昇っていく。
「で、異変は?」
>ないです。
>壁画も一緒じゃねこれ?
>罠さんあった?
前進。今回は念入りに蛇行してみる。しかし効果はないようだ。特に異変は発生しない上見当たらない。
「戻るか!」
一周回って心が晴れ晴れ愉快。もう一度やり直してもいいかなという気分。クルッと回って引き返す。
>えー
>これでガバったら面白い
>あえて進むのもアリ
「やだし〜、戻るぞ戻るぞ戻るぞ〜っ!」
あえて戯けて走って引き返す。そのまま駆け戻り、暗闇を抜ければ……
「うわっ眩しっ」
青空に太陽が見える。遺跡ダンジョンの最深部はいわば最上部。敢えて称すならば天空祭壇。そして今回の敵は……巨大な人型。
「ゴーレムぅ…!?」
速攻で装備変換。取り出すは……ミミックハンマー!
>いわくだき
>威力低そう
>秘伝の火力が火を吹くぜ
>低そう
「うるせえ!!」
侵入者を感知したゴーレムは、太陽を模したコアからエネルギーを生産。全身に流せば黄金の瞳に光が宿る。ガキンと拳を打ち鳴らし、威嚇する。
>ロボじゃん
>鉄人……
>それ以上はいけない
「なんだいデカブツぅ、私とやろうってのかぁ…あぁん!?」
>チンピラvs巨大ロボ
>懲らしめてほしい
>体格差何倍だよ
走る。レンガの地面にミミックハンマーを擦り付けながら駆け抜ける。正直ミミックは泣いていい。串刺しの上戦場で引き摺り回されるなどヒトの拷問でもここまではしない……しないよね?江戸人ならしそう。
「こいよゴーレム!武器なんて捨ててかかってこい!」
>いやお前ハンマー持ってるだろ
>武器持ってるやつが言うセリフじゃねえ
>せめて銀の短剣にしろや
拳が降りてくる。それと同時にハンマーを振り上げて……
「っし来た来た来た来たァ!」
>あっ死んだこれ
>ガバ?
>何でカチ上げを当てないんだ??
……振り下ろす。同時にシェリーの頭に拳が入る。しかしシェリーは動かない。
>……本当にガバかこれ?
>動いてないっすね…
>お?また変な動きか?
「効かないねぇ、私だから」
>理由になってない
>攻撃ルーチン壊れた?
>ゴーレムくん……またバグに付き合わされて…
まぁ、カラクリは例によってノンフィクションエンジンの癖を利用した技術の一つ。その名は不動。被弾と同時に地面をぶっ叩くとノックバックを無効化できるというもの。もちろん作品によっては使えないが……明確なHPの存在しないこのゲームなら問題ない。
「殴るプログラムが終わらない限り次の行動には動かないんだ あはははっ……」
>この笑い方好き
>わかる
>可愛いよね
しかし痛みはある。くらり、と頭を揺るがす衝撃に耐え、改めて地面を踏み締め、ジャンプ。腕に乗ってさらに前へ。
「このままコアぶっ壊してやらぁっ!」
肩部まで到達。跳躍。大回転。狙うはコアの真芯で一撃必殺。
>まーた三半規管殺してる
>その時、ふしぎなことが おこった !
>ねーよwww
「ヒャッハーっ!」
もちろんHIT。光が暴走してエネルギーが暴走。身体の節々から光条が溢れ出して……ポリゴン爆散。死んだのだ。
>予定調和
>もちろん死んでますね…
>ミミックハンマーちゃんと強いっすね
>隠し武器だし、多少はね?
「流石にね〜……さてさて、ご開帳っと」
武器を格納してヒーロー着地。手を払って鍵の開いた宝箱の前へ。
「次は何だと思う?」
>槍
>銃
>弓
「弓で獣を倒せる訳…w」
笑いつつ開封。中に入っていたのは……両手剣。銀、にしては透明度の高く長大なそれは、サードムーンほどではないものの重そう。つまり超重の系譜。
「よっし神武器きた!これで勝つるっ!」
>負けフラグやめろ
>シェリーはナイトだった…?
>英雄だし、多少はね?
ベテランにランクアップ。シェリーは腕を振り上げつつ喜びながら、例の空間へと戻されたのだった。
不動
装備中の武器を攻撃と同時に地面に叩きつけると衝撃が地面に流れてノックバックしない。
例は思いつかない
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ヨケレバ 評価ポイント オネガイシマース