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#8 [古代]RTAの女王的に見てこの遺跡は"変"[遺産]

ごめん遺跡ダンジョン終わらせつもりではあったんだけど


5層が思ったより伸びちゃったのでまた分割します

「とーちゃくぅっ!」

 銀色のトラップを苦労して乗り越えたシェリー。やってきました第五階層。見える異変はここにない。

「異変があるなら進め、こうやってアトラクション進むみたいで楽しいよね」

>そうかな…

>俺らは関係なく死ねるからなんとも

>このゲーム流行ってるマ?

>シェリはんがサクサクなだけで他はゆっくりや

「なははは。武器の運もなんだかんだいいみたいだしね」

 武器のために周回する手間がかかっていないそういう点ではシェリーは豪運チャート街道をまっしぐら。多分。

>プレイヤー性能が高すぎるだけだゾ

>ワイトもそう思います…

>陸軍としても海軍の意見に賛成である

「賛成するんかーい!」

 文字通りの死線(デッドライン)を超えたシェリーの機嫌はそこそこ上々。なのでおかわりの運動も用意しておきました。


 ガコンッ──。


「ねぇ」

>また踏んじゃったねぇ…

>シェリーは罠にかかるのが好きなの?

>素朴な疑問で笑う


 ガラガラガラガラ──。


 地面が揺れている。壁が揺れている。第五階層全体が揺れている。それに、転がってくる音がする。何が?途轍もなく重く、硬く、早いものが。

「……っすうーっ……」

>やばそう

>カメラー!後ろー!後ろー!

 恐怖はまさしく後ろからやってくる。後ろというものは人間の真の油断(ガバ)を見事に引き摺り出す。故にシェリーは背後を取られた時、とりあえず。

「にぃぃげるんだよぉぉぉ!!??」

 第五層の異変は古代遺跡名物転がる岩with障害物競走。俊足(スキップ)なんで使う暇もなくシェリーは全力で駆け出した。だってそうしないと死ぬし。

>草

>急シェリー

>ちょっと語呂いいのやめろ

「ぁぁぁぉぉぁ!!??」

 というわけで始まった第2回シェリー生き残り競走。一つでもミスれば最初から。コースも洞窟の時のように大幅に広がった。これにはシェリーも大喜び(ひめい)

>まーた走らされるよ

>やっぱ作者シェリーでは?

>いや走るの好きだからゲームが汲んでくれたんでしょ

 初手、目前3m上から槍が勢いよくせり出さんとしているのが確認できた。少し早足になって予備動作中にスライディング。すり抜ける。

「あっっぶなぁっ!?」

>[ちぃっ!]

>敵おるな やっちゃれ

>おまん……敵でええんか?

 シェリーは長い髪が槍に梳かれたのを感じた。あと数F……とはいかずとももう少し遅れていたら顔面から刺されていただろう。あまりに即死トラップが多すぎるぞ8層ダンジョン。とはいえセーフはセーフ。シェリーは次のトラップへの対処に気を払う。

「何でこうも私ってつくづく急ぐことに定評があるのかなぁ!?」

>走者だし

>RTAしてる時点で今さら

>胸に手を当てて考えてどうぞ

 二連続で天井の罠は考えにくい。故に警戒するべきは床。一歩二歩三歩四歩、すぐに跳べるようリズミカルに。なんて考えていたら。その時は案外近かった。

「うっそぉ!?」

>床が空いたぁ!

>レンガが避けてる!

>落ちても死ぬやろなぁ

 次鋒は文字通りの飛び石アスレチック。スライドドアが如く開いた通路の床。そこに浮かぶ50cm四方の足場を連続で渡って向こう側までいかねばならない。ちなみに後ろの転がる岩は壁面に少しだけ残っている突起を使って転がってくるらしい。ふざけんな。

「まぁぁぁ、これくらいはぁぁっ、せーふっ、だぁっ、てぇっの!」

 歩幅を合わせつつフチで踏切。スリルを通り越してデンジャーでスリリングなパルクール。目測と力加減が重要。稲葉の兎が如く跳ね進む。

>よくできるわ

>おじさんにはきついよ〜

>SGのリロード中にHGでカバーしてきそう

「あっははっは──っはぁ!」

>笑いもヤベェ

>ガンギマリ

>今飲んだな?

 笑うしかない。辛いことも笑い飛ばして進めばオッケー。エナドリニトロ投入。そしてラストは少し広いが問題ない。両足の到達まで少し待ってから──ジャンプっ!

「よいっしょぉ〜っ!」

>跳べよぉぉぉ!!

>きららジャンプですか…大したものですね

>OPで飛べば名作だった

 速度を維持して対岸まで到達。けれど岩は変わらず追いかけてくる。ならば仕方ないと休む暇もなく走行再開。スタミナの設定(ルール)がないのを幸いにガンガン進む。

「これひどいねぇ!」

 ランニングフォームを整えつつ悪態を吐き捨て足を回す。それしかシェリーには許されていないから。

>お前のプレイもな

>なんかこう、もう少し苦しみというか…

>いつもと変わらないわ!こんなのただのRTAよ!

>だったら走ればいいだろ!

「〜〜っ、やっぱりかぁ!」

 そして三度目の罠はもはやお馴染み回転鋸。少し離れて中段上段中段の順で流れてくる。そのため下段で伏せていれば簡単に回避できるだろう。けれどそれは停滞も同じ。後ろから迫る(いわ)から逃れるための猶予が減る。となれば……。

「はいまた跳びまーす!!」

>知ってた

>アクションは跳ばないと始まらないし

>せやろか…?

 即断即決ハリウッドダイブ。最初の中段と二枚目の上段の間をすり抜けて無傷で着地──

>よーし抜けた

>で、次は

>死にます

>生きろ〜w

「どっせぇーいっ!」

 ──して一回転。足が地面についた瞬間、爪先に力を込めて再びジャンプ。これらVRアクション基本のローリングジャンプ、から派生したローリングバニーホップというもの。昔のビデオ・デジタルゲームとは違いまだ人間的な動きをしつつ高速で跳ねて移動できる。それはそれとして使い続けると三半規管は死ぬ。

>えっなにそれは………

>綺麗だなぁ

>誰も変なムーヴに突っ込まないの笑う

「はい次々次『汝に問いを与える──。』ぃあぁぁっびっくりしたぁ!?」

>ぴゃぁ!?

>唐突な男の声により脳が破壊されました

>ざっこ♡

 というわけで鋸罠も無事突破。シェリーを待ち受けるものはあと一つ。シェリーの脳内に直接語りかけてくるスフィンクスである。なおこれは配信なので視聴者にも聞こえている。

『我の問いに対し正しいと思う方に飛び込むが良い──』

「なんでぇ!?」

 壁画のスフィンクスがそう宣うと同時に、先へ進む道が丸が描かれた赤い壁とバツが描かれた青い壁の二枚に閉ざされた。

>マルバツクイズ!?

>懐かしいものをww

>多分これ間違えたらスライムにドポンだな

「間違えたくねぇぇ!!」

 シェリーに緊張も走る。聞き逃すまいと少し速度を落とし、スフィンクスの声に耳を傾ける。ここで聞き逃したら一巻の終わりだから……。

『──"我は男であるか否か"を答えよ』

>知らねえよwww

>思ったよりセンシティブだった

>答えは人間だ!って準備してたのが意味ないなった

「はいはいはいはい簡単簡単簡単こいつ女女女女女女」

>えぇ…

>この声で???????????

 何だ簡単じゃんとペースアップ。赤い壁へ全速前進。というのもスフィンクス、もといスピンクスは女性名詞。漢字訳でも女の字が使われていることが多いのでシェリーは即断即決で赤に飛び込んで……すり抜けた!

「はい私の勝ちぃ〜〜っ!!」

>草

>スフィンクス君はスフィンクスたそだった…?

>[次の本のネタができました]

>先生!?

 そのまま走り続けて第六階層に到達。シェリーは大広間にたどり着いた。しかしここはボス空間ではないはずで。あからさまに『異変』なのだが……

「……スライム大量とかじゃないよね?」

>流石に違うと思う

>ね

>とりあえず進めそうなら進もう

 駆け足進め。タッタッタッとクールダウンも兼ねて前進。周囲にはゴールデンでエジプトぅな棺桶が並んでいて……中央までやってきたところで蓋が勢いよく吹き飛んだ。

「なんでぇ!?」

>これね、スフィンクスの罠

>階層超えてちょっかいかけてくるのクソすぎw

>適当なのに納得できる自分がいる

 呻き声と共に中からできたのは素肌は包帯に覆われているミイラ達。もちろんソレらは侵入者(シェリー)へ襲いかかる!

「……動きトロいなぁ!?」

 ただしその速度は人間の徒歩並み。8体ほど見ゆるがまぁ……見かけ倒しだったらしい。

>さっきまで岩に追いかけられてたからね…

>いやまぁそこそこ余裕だったけど

>比較しちゃぁいかんでしょ

「サクッと殺して回っちゃうか」

 1体目。ミイラの脳天を刺し穿つ。ワンパンでポリゴンになった。このレイピアもまた『銀』だからかアンデッドに対しては強い特攻を持つらしい。多分調整ミス。

>ざっこ

>よわよわ♡

>侵入者を排除できないガーディアンに意味なんてあるのか??

「まぁこんなもんでしょ」

 2体目。呻き声を上げながらのバックアタックに対処。腹部を刺してから切り上げて大切断。3体目もそのままの勢いで一刀両断。包帯は解けてポリゴンと化した。

「有り金も宝物も残らず全部頂いてくぜぇ〜っ!」

>チンピラじゃん

>ただの盗掘者

>略奪の時間だよ!

 石棺を踏みつけ跳躍。教団仕込みのアクロバットアサシンで四体目と五体目を一気に処刑。この程度の殺しができないと走者は名乗れない。

「ほらほらもっとはようこいよっ!」

 俊足(スキップ)。亀と新幹線並みの速度の違いを見せつけながら六体目。遺跡の盗掘者は雑兵では止められない。

>結局エジプトなんかここ?

>わからんぞ、ボスはクソでかいロボかもしれん

>ええっ!?神殿が変形してDXロボに!?

「んっふふふ……ww」

 笑いで体勢を崩しつつ七体目を蹴って転ばせ確実に処理。残るは一体、とはいえ変化も見られない。

>綺麗なヤクザキック

>それは綺麗と言えるのか?

>欺瞞が多いですね

「さぁ、ぁっ……あと一つ!死ね!」

>死ね(挨拶)

>死ね(送り出し)

>死ね(殺害宣告)

>どれだよ

 短剣(リッパー)も召喚。真正面からクロスカッター。4つに引き裂かれ最後のミイラがくたばって石棺の鍵が開いた。さっき踏んだやつ。

>罰当たりだったのでは…?

>そうだよ

>踏んじゃったから怒って出てくるんだよ

「そんなわけないでしょ〜………えっ」

 もちろん開封。蓋を強引に押し開ければ……中に入っていたのは黄金の爪。曰くつきっぽいが強そう。だが。

>格闘武器ですね…

>シェリーさん?

>異変部屋で武器くれるの好き

「つ、使えねぇ〜〜っ……!」

 性に合わない格闘武器を追加で押し付けられたシェリーは、苦労の甲斐がないとキレ気味で叫ぶのだった。

 

今回はTipsお休みです

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