#6 [悪霊]RTAの女王もたまには盛大にガバる[退散]
昨日休んでたしこの時間になるくらいだったらもう0時超えてから投稿の方がいいかなって思い出した自分がいる
六話です
「許るっっっっさん……また地味異変に時間取られた……」
シェリーは現在第六層。先の階層のガス灯が薄く灯っていたとかいう単純かつ細かい地味な異変を見逃すくらいには少し疲れている。あるいは憑かれている。
>ざぁこ♡
>クソガバで笑う
>シェリー姉上のまなこはガバガバまなこ♡
「高度な煽り来たな……」
>わざわざ"まなこ"って言ってるのが知慮深い
>語彙力のあるメスガキ好き
>兄上達ぃ、よわよわな脳に瞳でも得て賢くなって♡
「違うこいつ啓蒙高いメスガキだ!」
>草
>人間性を捧げよ!
>地味にシリーズ違うからやめろ
一通り笑って疲れを払拭。右手で銀の短剣をスピン。切先を前へ。
「そんじゃ続き、行こっか」
目前にはゴーストが三体。灰色の砂利道の先で、手を伸ばし生者を冥府へ誘おうと怨嗟の声をあげている。
「ナイフ・ザ・リッパー。全てを切り裂く銀の刃だ。現世に残る怨霊ども、私の憂さ晴らしに祓われな!」
>名乗り好きだわ〜
>切り抜き甲斐があって助かるわ
>わかる〜
この"銀"は霊に効果アリ。それが特攻なのか、貫通なのか、無効なのか。何れなものかは知らぬがコレが仕様。ならば活用しない手はあるまい。
「まずは一つゥ!」
砂利を俊足で駆け抜けて顎下一突き。致命を受けた霊体はポリゴンへ変化。次の階層に再配置されるのだろう。
>アサシンじゃん
>草
>足が速い
「その首置いてけ!」
刃を反転、伸ばした腕をそのまま振り回せば首切断。いやに見事に飛んでった首も胴体も仲良く消滅。冒険者の糧にすらならない。
>シェリーに殺されたい
>暗殺以外はできると思うぞ
>つまり正面突破
>そのシェリーハゲてそう
「まぁーった髪の話してるなぁ!?」
今度は逆手持ち。頭皮は剥がれ、表情も消え失せた怨の脳天に怒りの鉄槌を下せば脳破壊。圧倒的暴力の前に脆き身体などないも同然。砕けし霊体はポリゴン爆散。オールクリア。
>ビューティフォー
>短剣でも十分戦えるんだよな
>逆に何が使えないの?
「んー、苦手でなのは徒手空拳かなぁ。何かしら持ってないと落ち着かない」
ナイフを納刀。手を叩いて手仕舞い。周囲を見渡し異変探しに戻る。
>なんだその衝動
>確かにシェリーが格闘キャラ使ってるの見たことない
>近接遠隔できるのに殴打メインはないな
>……でも剣持ちながらキックはするくね?
「いやアレはコンボの一つだから。殴る蹴るが好きなわけじゃない」
枯れ木らはいつも通り笑っているよう。墓も三つ並び罰当たりな壊れ朽ちた棺桶らはいつも通り投げ捨てられているし、墓穴もぽっかり空いている。
>せやろか…
>ホンマか?
>嘘をつくな、正直になれ
>\\[スパチャです]//
「はい!大好きです!」
笑顔で手を挙げ罪を告白。しかしまだまだ見つからない。芝生をふみふみしながら進むけれど、踏み心地は変わらない。
>やっぱりそうじゃん
>正体見たりただのシェリーだな
>そうかな…そうかも…
「でも主軸に置きたくないってのは本当。私はさー、武器が好きだから」
生垣も触りつつ歩いてきたが異変は見当たらず。今度こそガス灯は消えたまま。
>拳で語り合おう!
>ヘイ カモンカモン!
>面白い 相手になってやる
「メンツがヤバイんだけど…w」
格闘家に好漢、御曹司から喧嘩を売られつつここで一周。そして導き出した結論は一つ。
>まぁみんな戦いたいんでしょ
>いろんなタイトル遊んでね♡
>殺し合いしようぜ…血に飢えてんだ…w
「はいはいまた今度視聴者参加型やったげるから。じゃ、この階層は異変なし!戻る!」
踵を返し引き返す。ここにシェリーが見つけるべき異変はなし。さっさと引き返して次へ向かう。
>はい
>まぁ……しゃあないな……
>ここで異変あったら笑う
「……よし、6ついた!」
リセット、なんてことはなく第六階層。そしてこの階層も、何か変。みるからに変。
>蔦ァ…長くね?
>ゆらゆらしてるね
>まるで触手みたい!
「最悪じゃねぇか!?」
今回の異変は枯れ木にぶら下がっていた蔦が襲いかかってくる異変。そして幽霊は据え置き。まずは正面から伸びてきた草を短剣でアッパーカット。
>さっさとやられやがれください
>[オラっ!負けろ!スパチャ!]
>\\[応援です]//
「ひゃっほうミーシャ愛してるゥ!」
負けろの意志より応援の声が上だ。ならばシェリーは負けるわけにいかない。第二第三の蔦を短剣で捌き、隙を見て地面を突く。
>\\\[ ]///
>勝てるかボケが
>またミーシャか
「いける──ッ!」
シェリー足元注意。進路を邪魔する分だけをサッと切り落とし、俊足で急速前進。
>いけ……たねぇ
>俺もその技術欲しいなぁ
>オンゲでやると怒られるから気をつけろ
「ワンッ、トゥーッ!」
その着地は片足。推進力を火力に。氷上の妖精が如く2回転半。三半規管は大丈夫か。
>回るな──!
>司祭もおるな
>神秘の学園都市におかえり
「そのまま死ねェ!」
回転の終わり。更に俊足。カッ飛んで一つ離れていたゴーストに手を伸ばし、銀の軌跡で分かてば終い。時を同じくして蔦も戦う意志を失った。
>動きがさ 別ゲーなのよ
>※このゲームにスキルはありません
>自由に動いててシェリさんらしいわ
「よし終わりー、異変発見ヨシ!」
なので迷いなく前進。心和やかに辿り着くは第七階層。
>まぁ今回はね……
>地味異変こい地味異変こい……
>つーか杖使え?
「しょうがないにゃぁ〜」
ウェポンチェンジ。短剣は仕舞って再び魔術杖。火球の宿る杖先が薄く輝いた。
「ん〜………異変……異変……だな」
そして前を見ればうんなるほど。どうみたってこれも異変。枯れ木が笑顔になっている。それもそのはず、頭がフサフサに……間違えた。枝に葉っぱが繁っている。ついでに風が吹いて木の葉が舞っているが。
>異変だネ…
>どこがおかしいのかなぁ
>お前8番降りろ
「じゃ、杖使って戦ってみよっか」
というわけで早速俊足。ゴーストへ急速接近したシェリーは淡々と詠唱開始。たまには真面目な顔で戦ってみる。
>……ん?
>アレちょっとまって
>魔法使い…?
「求むるは火──」
確実に、着実に。派手さはないが、魔術師らしい口調で詠唱を進める。
>この動き変だぞ!?
>なぁシェリーもやっぱり魔法剣士だろ?
>杖と剣が両方持ってるからお前の仲間ではない
「げーきーめーつーの──」
故に火が生まれ、纏まり、球に……球に、球に……ならない。しかもそれに触れた霊は蒸発。それはなぜか?簡単なこと。
>……こいつ詠唱完遂しねぇ!?
>草
>おい、ナイフ使えよ
「ひーなーり──」
魔法を成立させるためのエフェクトに攻撃判定があることを利用し、詠唱を遅くすることで杖の周りに魔法ダメージを付与。そのまま振り回してさらに一体撃破。
「『火球』!」
そして最後に魔法ブッパしてお仕事終了。ついでに木の葉が大炎上。そのまま草原まで炎は燃え広がる。
>仲間じゃん
>そうだわ…
>変態同士は惹かれ合う
>背景に誰か突っ込んで
「えへっ☆どうどう?出来てた?」
勝利のVサイン。にまーとカメラ目線で満点スマイル。もちろんお値段プライスレス。
>まぁうん 大体合ってる
>[やっぱりシェリーは変態じゃないか(歓喜)]
>それじゃあ…このプレイもやってもらおうかな…
>おうそのトロールクリップ仕舞えよ
>あー、燃えとるのが背景なシェリはんええわぁ
「でしょー、視聴者にできて私に不可能なし!万ガバ万法我が手中にありっ!」
>ガバんな
>やっぱ気にしてるんだなww
>煙ヤバいっすけど
「だよねぇ!?」
墓場が丸ごと大炎上。せっかく生えた葉っぱらが全て燃え、枯れ木が再びひどい顔に。なった気がする。故に煙もモクってきて。
「けほっ、けほっ…」
>咽せ助かる
>やっとる場合か!
>走れ走れ走れ!
「ううん…少し眠くなってきた……けほっ」
目をすりすりして眠いフリ。欠伸までしてまた咽せた。
>走れ!!!!死ぬぞ!!!!!!!!!!!!!
>いや待て、ここで死んだら美味しいな………?
>おいバカやめろ
「まー、進もうかっ!」
走って逃亡。第八階層。先の炎上は知らない。私じゃない。済んだこと。異変がやった。故に無罪。逃げるが勝ちとはまさにこのことで。
「うわっ、墓が多いねぇ!」
>はい異変
>簡単すぎィ!
>ツマンネ
これまでが墓墓墓だとすれば今回は墓墓墓墓墓くらい。墓から墓が生えてるレベル。ここらで何人死んだんだって突っ込みたくなるレベルの墓石の量。
「これね、全部私の墓」
ふんすと胸を張る。でっかい。
>これまで犠牲にしてきた世界線達の…
>多分没記録のことだと思う
>いや待て、全てガバの記されたレコードなのでは?
「違うが。決してガバではない。いいね?」
>あっはい
>はい…
>ウイッス
そして視聴者に圧をかけつつ当然直進。霊など今更苦でもなし。
「もーとーむーるーは──」
先と同じく杖で殴る撲る撃つの魔法的暴虐行為を行い除霊終了。道も当然開かれた。
>もう突っ込まないぞ
>お前も仲間だ
>ボスくらいちゃんと魔法だけで倒して欲しい
「んもー、視聴者どもわがままだなぁ」
>杖が泣くぞ!?
>杖は打撃武器だった…?
>そうだぞ
「そうだよ?」
>じゃあもう次のボスは魔法だけ使って倒せよ…
>賛成
>はよ
「はいはい、魔法だけね」
なんて戯言を唱えながら霧を越えればボスエリア。ここは広い円形の広場であり、中央には大きな石碑。宝箱もその下に見ゆるのだが、いかんせん今度のボスは頭が多い。というのも、再びアンデットなのだが。
「ゾンビ6体!?」
>6体に勝てるわけないだろ!
>早く捕まって
>シェリーアンデット堕ちくるー?
驚き叫んだシェリーを振り返る六つの頭。十二本の手がシェリーの追跡を開始する。
「いやーっ!普通に物量が怖い!!!」
>わかる
>ちょっとグロいのやめろ
>wwwww
「ああもう、魔法ね!魔法だけね!?」
>そう
>みたいな♡
>さっきの魔法使いとしての誉なかったからな
ほう、と深呼吸。あまり慣れてはないが見せてやろうと意志を込めて。
「──求むるは火、撃滅の焔なり」
育つ。生まれる。増える。宝玉から取り出された火は、今度も球を形成していく。……三つも。
>……ん?
>おや、シェリーの声が
>なんか、遅れて、きてない?
>音ズレ?
「──『火球』っ、もう一丁!」
魔法の三重詠唱。これもアンリアルエンジンの技術の一つ、複製。これは音や思考をトリガーにする効果や技を重複して発動させるもの。これは開発設計時点での対策も簡単なのだが、このようなインディーゲームだとたまに使えるのだ。ちなみに今回は普通の発言と腹話術、そして更に脳内でズラして入力していた発言コマンドで並列三発動していた。……ちなみにこれも前提のRTAチャートがある。
>うわぁ
>ゾンビが燃えてるよ
>一瞬で終わった
>やっぱお前魔法使うな
>お前の魔法はおかしい
故にゾンビは纏めて爆散。宝箱も無事解錠されダンジョンクリア。あとは宝を取るだけだ。
「ふっ、褒め言葉して受け取っておくよ」
>ほめてねーよw
>こいつすぐに図に乗るからな…
>許さん
コメントの賛辞を笑って受け流しながらも宝箱を開封。とりあえず柄を手にとってみる。なるほどこれは綺麗な細工だ。しかも銀製でこのダンジョンを周回するには役立ちそう、なのだが……
「細剣かぁ………」
>そうだね
>草
>突けってことだよ
細身の刃を持ち騎士の剣とも称される(要出典)銀のレイピアを得てシェリーは中堅にランクアップ。墓場ダンジョンもノーミスクリア。
「好きだけど嫌いなんだよね」
>わがまま多いなぁこいつ!
>好き嫌いは許しませんよ
>ウチを100通りのやり方でボコったこと憶えとるよ
>草
>怨みこもってるな…
>もしかして今回の敵全部ファインダー?
「だったらもっと簡単だった」
>シェリはん?
そして再びシェリーはダンジョンの外へと戻されるのだった。
tips:ノンフィクションエンジンならではのグリッチ その3
複製
詠唱をはじめとした音声認識系統のシステムを口の形と腹話術(詠唱破棄系のスキルがあるならそれも含めて)同時に二つ以上の魔法を放つ。オンラインゲーで使うと大概BANされるがオフゲーなら余裕。CT式だと魔法の発動後に発生する仕様じゃないと使えない。




