#5 [墓地]RTAの女王は祟りになんて屈しない[荒らし]
セーフ。
二十分くらい猶予ある。
ヨシ。
4000くらいにするつもりなのに5000あるのは、謎。
洞窟から抜けてすぐ。元の場所は戻ってきたシェリーは中央にある八角の石に腰掛けていた。テンションを上げすぎたので再び水分
「ふ〜……ちょっと休もう」
>おつ
>トイレ行ってこよ
>てら
「行ってらっしゃ〜い…しかし、今回は杖かぁ〜…」
>シェリーの使わない武器じゃん
>大概近接武器だからな
>杖は近接だろ
杖。正式名称はメイジワンド。武器ナンバーは9。そして特殊効果で『火球』という魔法が込められているらしい。
「まってバーサクメイジいた???」
>いや魔法剣士。杖に剣の要素付与して戦ってる
>そう、いや……えぇ…
>逆にしろ逆に
「変態すぎて流石の私でも引くわ……えほっ」
>シェリはんもそう変わらんよ
>咽せ助かる
>これで今日も生きられる
視聴者を詰ったからか天罰を喰らうシェリー。そもそも喋りながら水分は摂るものではないのだか、いつものことか。
「けふっけふっ……割と酷いところ入った…」
>何やってんだこいつ
>ワシらには救えぬものじゃ
>いつものことだねぇ
>無駄に高い機器により行われる無駄に無駄な行為
>ただの無駄で草
「仕方ないじゃん、トークは止めたくないけど飲みたくなるんだからさぁ……」
>横着するから定期
>名物だし…さては味を占めてるな
>ちなみに今日は何飲んでるの?
「アップルジュース」
>……普通だな
>はよ杖試せ
>あくしろよ
「反応薄くない!?はぁ……いいよ、とりあえずダンジョンに入るから」
草原、洞窟と並んでシェリーを3番目に迎えるダンジョンの名は墓地ダンジョン。枯れ木に挟まれいかにも洋風のホラー映画が如き様相を醸し出している。
「……みんな心臓大丈夫?」
>\[4日徹夜経験よくあります]/
>ミーシャ?
>ウチは……まぁ、リアルおるよ
>大丈夫だ、問題ない
アリサは部活、バレッティーナは別番組に出演中なのでこの配信は見ていない。あとは雑多な視聴者達が適当に余裕アピールをしている。見栄っ張りの配信には見栄っ張りが集うらしい。類は友を呼ぶとはこのことか。
「んじゃ突入〜♪」
>れりごー
>パッパッパヤッパ☆
>あぁ…亀の声が…聞こえる…
>さっさと巡礼してどうぞ
勇み込んでシェリーは墓地ダンジョンに突入。装備は一旦メイジワンド、脇には鉄の剣もあるがまずは試射からだ。特に特殊効果付き武器なんて心が踊る。
「さてさて〜、今度の敵はなーにかなぁ〜っと」
砂利ッと鳴った地面の通り、墓地ダンジョンでも非舗装の道が続く。道らしき直線は灰色で、両脇には墓墓墓が並ぶ緑の芝生。枯れ木にツタが寄りかかり、ぶら下がり。墓穴が掘り返されているのが見える上棺桶だって朽ちたり開けられたりしているのが見える。リアルなら凄くバチ当たり。シェリーと相性悪くない?
>墓地こわ……
>Gray……Rave……
>早まるな墓守
「槍は帰ってどうぞっ!」
様式としてはヨーロッパの墓地だろうか。一部の墓関係者がキレかけているように荒れ果てているのだが、シェリー以外に生きている人の子らの息は聞こえない。彫られた名前にも見覚えはないけれど。
「すぅ……はぁーっ……」
>早く現実見てどうぞ
>こっちをみろ…
>熱源探知君はコンロに釣られてどうぞ
今度の敵は幽霊三匹。あからさまに物理の通りが悪そうなヤツ。というか効くのかアレ。霊体は物理無効が標準装備な気がするが。
「土葬じゃうまく眠れなかったのかな!綺麗に纏めて火葬してやんよ!」
幸い今のシェリーは魔法持ち。そんなの気にせずブッパできる。杖をクルクル回し構えてロックオン。狙いは勿論正面ドストレート。
「求むるは火、撃滅の焔なり」
瞳を閉じ、シェリーがそう少し力を込めて唱えれば、魔力が杖に宿り、集っていく。そして臨界に達した赤い宝玉が赤熱。焔が生まれ、一つの球になった。
>珍しい
>シェリーの詠唱ktnr
>●REC
>切り抜き確定やな
「『火球』!」
開眼。放たれたソレは揺らめく亡霊をぶち抜いて焼却。燃え尽きるように消えていった──!
>燃え尽きたぜ…完全にな…
>悪い子は焼却よ〜
>(´・ω・)そんな〜
「……厨二ぃ……!」
右腕をを押さえつつ頭を抱える。シェリーは女の子だがオタクの例に漏れず、あるのだ。黒に葬られし禁忌の書が、英雄安らかに眠る床の下に。その量大長編ノート三冊分。今思えば浪漫に取り憑かれていたのはその頃からだったかもしれない──。
>まぁ銀髪赤目巨乳で配信してる時点で結構
>な
>いつもあざとかわいいよ!
「テメェら慰める気あるぅーっ!?」
ブンブン獲物を振り回して反抗しつつ魔法の仕様を確認。このゲームに於いて魔法は詠唱をトリガーにし、魔法名の宣言で魔法が発動。その後にCT処理が始まるらしい。これはまた技術が使えそうだと内心ほくそ笑んだ。
>ないです
>シェリーは面白いからな
>この程度でへこたれないって信じてる…!
「嬉しいけど喜べない信頼だなぁ!?」
最後、墓の形状が基本キリスト式なのを確認して霧の中へ突入。墓地ダンジョン第二階層。
「んー、どこだろ……って言うまでもないねあれ」
>黒ぉい
>まっくろくろすけ!?
>お前の手を煤だらけにしてやろうか
シェリーがジト目で睨む先には大きな人型の黒い影。ガチのホラゲに出てきそうな、触れたら死んじゃいそうな怪物の影。
「何かメッセージないかなぁ」
>さっさと突っ込んでどうぞ
>逃げたな!?
>死ね…っ!さっさと突っ込んで死ね…っ!
これはギミック系じゃないかと周囲を見渡す。枯れ木、なし。柵、なし。棺桶も先程と同じ。となると気になるのは墓石。幸いここのマップは道の横にも歩けていけるようで、外を囲む生垣まではMAP内。この仕様に少し嫌な予感を覚えつつも仄暗い敷地を探索。
「あの影、ずっとこっち見てるような気がするんだよねぇ……」
杖を付き、シルクハットを被り、タキシードまで着こなしているように見える影は確かに浮遊しながら回転して、シェリーらに正面を見せ続けているように見える。
>自意識過剰か?
>俺たちはずっと見てるよ
>ファンだからね!
「はいはいありがと、愛してるぜ視聴者ども」
>\\[ ]//
>なんか喋れや
>限界化しようと思ったら冷静になったわ
>草
「んー……」
しかし見た目は手がかり。他の目ぼしい人工物を探していると……とある紙を見つけた。日本語ではない別の言語で書かれているようだが……
>なにそれ
>新聞?
>悪い、メリケン語はさっぱりなんだ
「いやこれエゲレス」
それは立派にロンドンタイムズと記された古新聞。そして時代は1889年とくれば見出しは……当然、アイツ。
「……なるほど」
いや急にこんなところで推理を出してくるななんて思ったりはするが答えが記されているだけマシだろう。
>読んで
>……あー、うんなるほど
>だからどうしろとは思うけどな!
「切り裂きジャックとかどうやって倒すんだよふざけんなぁーっ!」
見出しには[切り裂きジャック、霧の都に現る(日本語意訳)]と記されていた。その犯人予想図は、かの黒い影にそっくり。それどころかシェリーが叫んだと同時に影は地を踏んで、シェリーの方へと歩き始めた。
「よし逃げよう!」
>判断が早い
>これには天狗もニッコリ
>卑怯とは言うまいな
アレは戦うべきではない。シェリーは確信した。英雄の自分でも倒せないだろうと。というか動きが速すぎる、目に身体が追いつかない。けれど足は追いつかれた。
『──!』
「危なっ!?」
仕方なく右手で鉄剣抜刀パリィ。振り下ろされた銀のナイフをシェリーはなんとか弾いた。隙間でステップを踏む…が、完全に出口は塞がれている。突破するにはもう一度、あるいは倒すしかないか。
>なんで当たるんだよ
>俺でも見逃しちゃったね
>ちゃんと告白できてえらい
「考えろ考えろ……」
倒すことを想定されたつよつよ徘徊ボス。そう考えるのが妥当だろうか。森林のミミックと同じくEX武器になりそうな……
「ん、武器?」
そうだ。このゲームは武器を集められる、のなら。
『──♪』
鼻歌混じりに次々突かれる銀のナイフ。紙一重で鉄剣と魔道杖の変則二刀流で防ぎながら、次の隙を虎視眈々と狙う。
>格ゲーか?
>VRゲームそういうところあると思う
>これ自作ってマジ?
>らしいよ
『──────♪』
ここでシェリーが姿勢を崩す。影の口元が歪んだ気がして、再び大きくナイフが振り下ろされ……なかった。
「ウオルァ倒れろォッ!」
ガラ空きの腹に悪質タックル。男女の差があるとはいえここはVR世界。力の差はあまりなく。ミスを演じての不意打ちはAIにはよく効いた。
>痛そう
>というか相手ちゃんと実体あるのか草
「はい取ったー!私の勝ち!じゃあねー!」
>やり方が強盗犯なのよ
>通報か?
>もしもしポリスメン?
倒すことはできない。けれど、奪って逃げることならできる。悪質タックルで腹を抉られた影は手が緩み、そこをシェリーがナイフを掻っ攫って影の方へと駆け出した。いくつか墓石が壊れた気がするが私は悪くない。こんなところで眠っているアイツが笑いんだ。
「セーフだしセーフ!それにほら、装備増えたから攻略完了!」
第三層に駆け込んだところで実績[切り裂き魔を切り裂いたもの]を獲得。EX装備欄には先程の銀の短剣が増えていた。ちなみに場所はミミックハンマーの次の次の次。
>特殊効果ある?
>こわ…
>あの今日は存在に正面から行くやつがあるか
「まぁ……なんとかなるかなって思ったから」
というわけで早速装備。装飾はシンプルに祈りの詞と花の模様が彫られているだけ……だが、これは"銀"だ。というわけで。
「どう見ても日本人な霊ぶっ殺して進むよ」
>うっす
>尺八吹いてて草
>マップもあからさまに日本なのよ
周囲のイギリス風の雰囲気は消え失せ全ての墓が四角く四角い和型、灯籠とかあの塔婆とかいう木の板もある上柳の木も雰囲気を出すのに一役買っている。まるで作者がどっちも作ってしまったから悩み抜いた末に異変として捩じ込んだかのよう。
「悪霊退散☆」
それに乗っかってシェリーもご機嫌に銀のナイフを五芒星の軌跡で振るう。勿論虚無僧の霊は祓われポリゴンに。一応銀のナイフは問題なく霊体に通るらしい。
>助けてもらおう陰陽師!
>哀れなり……
>出オチ要因でしたね
「…ね。いやごめんね、観光したいんだけど異変は進まないとだから……」
>くるくるナイフを振り回しながら言うんじゃありません
>セリフが悪役のそれなのよ
>殺したいけど殺したいわけじゃなかったやめろ
>チンピラシェリー
「お前らジャンプしてみろよ、あァ?」
カメラを近づけ銀製のドスを効かせた脅しボイス。一部の視聴者層に効果は抜群だ。
>\\[はいっ]//
>へっ
>ひぃっ 赤スパっ
>今日何回目?
>しら そん
「はいはい次行きますよー、次!」
流石に見慣れすぎて別の意味で怖くなってきたシェリーは話を切り上げ第四階層へ進んだ。しかし強敵→超変化とレア異変を二連引いたとあってシェリーはイヤな空気を感じている。
「異変………ある?」
そう、地味異変だ。鮮烈な印象を残してきた切り裂き魔に虚無僧はあまりに印象が強く、第一階層の記憶を失わせるには十分だった。
>そこになければ…ないですね。
>じゃあ戻ろうぜ!
>えぇ…(困惑)
「いや流石に探すから」
砂利道を俊足で進み、短剣でトリプルスピアー。的確に霊核を抜かれた幽霊らは霧散してポリゴンに。枯れ木に纏わるツタが揺れて笑っている気がする。
「それでさぁ……墓は十字、円と四角、十字二連……って順番だっけ?」
>見直したらわかるが見直したら負けかなと思っている
>知ってるけど言わない
>悩んで欲しいから言わない。
「はぁぁぁ……???もう知らない!配信映えしないことする!」
これにはシェリーもストライキ。砂利道をから外れ草原を歩きガス灯の灯るベンチの下へ。少し朽ちてはいるが許容範囲。壊れ朽ちた棺桶ら、掘り返された墓穴を憐れみつつ……精査。やっぱり木が笑っている気がして腹が立つ。
「これ……進むべきかなぁ……戻ったほうがいい気がするけど……」
>さぁてねぇ
>ニヤニヤ
>美酒は入れてあるんだが
「んんんん………」
わずかな記憶から元の風景を捻り出す。なんだかんだでノーミスだったのだ。ここでミスりたくはない。
>悩むシェリー珍しくない?
>基本即決即断だしな
>ウチが見たかったシェリはんの姿見れて満足や
「あー……もうっ、わかんないっ!」
ついには天を仰いで叫んだシェリーは、しばらく……"ガス灯が薄く灯っている"ということに気づくまで、周りを探し続けたのだった……。
Tips シェリーの武器評 短剣編
嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけどねー、軽すぎるのがちょっと気になるよね。軽くて手が滑りそうでいつもヒヤヒヤしちゃう。
武器には適度な重さってのがあると思うんだよねー
いやオファニエルはいい感じの重さでしょ。
というか重いからこそあの扱い方ができるの。
そもそも小物武器と重量武器って比べるものじゃないから。本当に。




