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シェリーの昆布巻き配信'sアーカイブっ!(ひきころ短編集)  作者: わけわかめ
1:『8層ダンジョン』編

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24/26

#24 [竜王]RTAの女王に挑む王達[魔王]

昨日投稿しようとして寝落ちしてた

「次はドラゴンか〜……」

 現在も変わらず星海落下中。シェリーは下に背を向けリラックス中。七度目ともなれば慣れたもの。マントの効果でクルクルとミスリルブレイドを回しながら視聴者(コメント)と会話で暇つぶし。

>あの即死攻撃はいかんでしょ

>殺しに来てるよねww

>連発してこないだけマシ

>えっ 大体30秒毎ペースで連打されたんだが

>DPSチェックに引っかかってますね…

「竜の前でチキってんじゃ、ねぇ〜っ!てね?」

 叫びながら竜斧槍を呼び出し、カメラへ向けて斧刃を振り上げ。同時に視点を上に動かし、もう一度追撃し繰り返してみる。

>割り込み…斧…即死コンボ……うっ頭がぁ"っ"!?

>傷はあsうぉぁぁぁ!?

>アイテムなんて使ってる方が悪いのでは…?

>シェリーのせいでまた死人が出てる

>ちょっと火車が通りますよ^^

「私のオファニエルの最強モード(仮)と火車って似てるよね」

 禍々しく深淵な肉々装甲に包まれながら全身を燃やし、石の手甲で足場を生成する上、溶岩の脚甲からは火を噴き出してスラスタのように吹き上がり飛び上がっていく回転鋸使い。ここまでは届かないだろうと思ってもフックショットで飛んでくるオマケ付き。しかも接近されたら倒せない(食いしばり)ので永久機関が完成してしまう。そう考えると悪人の亡骸を攫っていく火車と英雄シェリーは……

>似てねえだろ

>相手が善だろうと悪だろうと関係なく殺してるやろがい!

>ちょっと何言ってるかわからないですね

「分かれよ!!!!!!!しかもあっっっっっつぅ!?」

 言い合っている間にもシェリーは次元を突き抜け火山最奥部の竜の巣へ到達。体の向きを変え着地しミスリルブレイドと竜斧槍を改めて両側に配置。そして手に持つのは相変わらずのアイスソード&鉄剣。初期ダンジョン品なのに可用性が高くて嬉しい限り。

>備えておいて助かった

>シェリーも装備に頼ってない?

>違うぞ、装備の性能を限界まで引き出してるだけだぞ

「いいこと言ってくれるねぇ〜、んふふっ♪」

 竜へと歩いていくたび火山が揺れる。眠れし竜が起き上がり、不敬なる人の子を見下し射殺す──が、下等種族(ニンゲン)は変わらず戦意を湛えたまま。

>シェリーが嬉しそうにしてると俺らもね……嬉しい

>言えたじゃねえか

>素直になれよ

「竜と戦う時っていつもドキドキするからねぇ〜♪」

 目下を敵と認識した赤竜は咆哮。さらに一際大きく火山が揺れ、周囲のマグマ潮位も上がっていく。天然のKBFが成されていく。最早逃げ場はない。怪物の口に見える奥の壁が示すように、ここは竜の縄張り(腹の中)なのだから。

>うるせぇぇぇ!!

>アリサうつってますよ

>狂化は感染病だった…?

>薬で活性化する博士もいるしまぁ

「あははははははっ。これだよコレ、無駄に強がって威嚇してくれるとすっごく助かる。倒した時の優越感が最高だもんね!」

 だがそんな状況下でも大胆不敵を崩さないシェリー。ひんやりする右手(アイスソード)を改めて握り締め赤竜へ対峙。禁忌とも称されそうな竜の体躯の頭部には二つのツノ、腹部には鋭く尖った逆鱗──或いは逆角が生えている。なお先の検証(バトル)に於いてここが弱点であることは判明(リサーチ)済。全力で叩けばすぐに終わる。

>強敵倒した後しばらく放心するわ

>快っ…感っ…!

>俺逆に第二段階がないかと身構えるわ

>私は第七形態まで変身を残しています…この意味がわかりますか?

>宇宙の帝王風に魔族の王を表現するな

>ゴールデンに輝かれたら勝てんよあれww

「こいよドラゴンッ!」

 戦闘開始。ドラゴンは初手牽制の鉤爪振り。竜にとっては小手調べのそれも人間サイズではまだまだ大振り。身体を反らしたまま滑走(スライド)で下を通過。まるで氷上の妖精よう。ここ火山だけど。

>あれすると筋肉痛なる

>動いてないのに痛いよ〜><

>おじさんたち無理しないで…

「注射針入りま〜すっ♪」

 すれ違い様に鱗の隙間へ矛を差し込んでみる。案の定効果アリで赤竜は急いで前脚を引き戻す、が。

>あ、シェリー乗ったw

>あーあ、もう終わりだなこりゃ

>ライドオンなんて度胸ないよ俺には…

>お前チーキン

「ごめんねドラちゃんまだ注射分のお駄賃いただいてないよ?支払いはニコニコ現命払いで夜露死苦ゥ!」

 俊足(スキップ)で切り返してきたガラの悪いシェリーが前脚に相乗り。一旦鉄剣と竜斧槍の装備枠を入れ替えブッ刺さった状態の竜斧槍に捕まって身体の近くまで移動。もちろんグリグリして細やかなダメージも稼いでいく。赤竜はその度に苦悶を漏らす。

>かわいそう…

>これがね、弱肉給食なんだ。

>給食で草

>ただのインフラじゃないか…

>弱者はこうして出荷されるのです

>そんなー

「ほらほら気持ちいい?このまま命を頂戴してもいいよねぇ〜っ?」

 調子に乗ったメスガキシェリーはくすくす笑いながらさらに奥へ刺していく。効果があるかないかはともかく──隙はできている。

>ぐっ…この……

>予防接種もこんなのだったらいいんだけどなぁ

>Mの方でいらっしゃる?

「ほ〜らこの突起病気ですか触診します…ねぇっ!」

 逆角を回転加速させていたミスリルブレイドで触診。けれど藪医者故か赤竜は苦しんでばかり。前脚を振るって診察拒否。

>ブンブンしてらww

>うっ……注射を打たれた俺の右腕が疼くぜ…

>草

>それは病院行け(

「っお弾かれたぁ〜っ!?」

 同時に赤竜は翼をはためかせ上へ。風圧(ノックバック)を受けたシェリーは落下、尻餅をつく直前に武器は回収したがこの構えには覚えしかない。

>うわでた

>シェリー!逃げろー!

>……あれ?岩落ちてこなくね?

「待って私死ぬ」

 KBF中心上空に到達した赤竜は地脈からエネルギーを吸い上げ、顎門を開きエネルギー充填。一対の頭角と腹部の逆角を錘状にし殺意(ダメージ)を溜めていく。それに対し火山は悲鳴を上げるかのように揺れがひどくなっていくが……不思議と岩が降ってこない。瓦礫がない。ただただシェリーは逃げ惑うしかない。

「有識者ァ!こっから生き残る方法はあるぅ!?」

>ないです

>大人しく死ね

>お前の負けー!

「クッソがァァッッ!!」

 隠れ場なしのシェリーの憤怒を他所に、臨界に達した熱エネルギーの一雫が地面へと零れ落つ。此なる技の名は『極融ノ雫』。凡ゆる色彩(イノチ)を塗り潰す『白』である──。
















































 ──のだが。ミスリルブレイドを盾に足掻いていたシェリーは無事生存。なんなら暑くもなかった(・・・・・・・)

「………なぁぁぁぁんでぇぇぇぇ………???」

>草

>また何か、変…

>流石に気付け

>信じられないって顔してる…w

>驚きましたか?

 第七階層(ドラゴン)の異変はまさかの必殺技が"スカ"。ハリボテの必殺に惑わされてしまったシェリーは怒りを露わに口を開く。

「竜よォ 竜よォ! 古の鼓動を響かせェよ!」

>キレててマジ草

>言い方がヤンキー

>メンチ切ってそう

 竜斧槍とミスリルブレイドの両方をぶん回し、アイスソード&鉄剣による連打(クラップ)準備。何事もなかったかのように優雅に降りてきた赤竜にカチコミ。狙うは逆角の60、150、240、330の四箇所。

「『竜衝ドラグノヴァ』ァァンッ!」

>ヒャッハー!

>決まったァーっ!

>雫連打されニキ何してたん?

>このタイミングで回復してた…

>本当にチキってたからじゃねえかww

 ヒット。ヒットヒットヒットヒットヒットヒットヒット──ッ!重なる打撃に斬撃、技術(グリッチ)仕様(スキル)が合わさりバグに見える。

>痛そう

>『衝撃』を潜航させた…

>内側からブッ壊すんだぜ!

 そのままドラゴンは完膚なきまでにほぐされてドラゴンステーキ……にはならずポリゴンとなって消えた。これが現実ならさぞ美味しい料理になってくれたろうに、出来上がるのは青赤二つの裂け目だけ。

「さ、暑いの嫌だしさっさと次行こう」

>だな

>よろしくね〜☆

>次は魔王が蹂躙されるんですね…

>魔王は勇者に倒される運命だからね、仕方ないね

 涼しげな青の裂け目へGO。ある種心臓に悪く生命が助かった異変へギリギリ感謝できないが面白かったよとだけはいい残し星海へ。

「次魔王だけど……異変なんだろ」

>悪魔大量

>呼ばれてきますた

>経験値だぜ〜!もぐもぐもぐ〜!

 ボスが生きているうちに、攻撃を受けてみないとわからない異変は難しい。シェリー的には一発受けたら負けな故に。それはそうと結局この空間はなんなのだろうとも気になるがまた流す。

>玉座が空っぽ

>ドヤ顔ツイン大鎌

>流石に邪魔だろ

>喋る時常に変なポーズ

> またボコボコにされちゃうんろうなぁ…

「そのどれかだといいね」

 だってわかりやすいから。殴ること以外を考えなくていいのはある種幸せ。次の一撃をどうやって叩き込むかを考えている方が楽しい……このゲームの趣旨をぶち壊している気がするが気にしない方向で。

>次は魔王ですけど意気込みは?

>いやー、あのうぜえ魔王が再臨するということでね

>お前じゃねえすっこんでろww

「じゃ、もうついたみたいだし一言だけ──」

 星海を降り続けた続けたシェリーは暗闇の扉の前へ。辿り着いた。十数分前に開いた記憶のあるソレに触れつつカメラ目線で力強く。

「──(シェリー)が負けるわけないでしょ?」

>そうだな!

>なおガバには勝てない模様

>運命を変える!(クソ乱数)

「も〜……」

 折角カッコつけたのにコメントのせいで締まらない。これが昆布巻きクオリティ。笑い酒の肴にでもなればいいのだ。一部狂人が貢ぎまくってるだけで。

>\\[頑張ってくださいね勇者様]//

>もうこいつ姫だろ

>王女の(カネ)

>本家は一応必須アイテムの位置を教えてくれてるから…

「あいよ〜っ!」

 応援(スパチャ)でテンションアップ。クリエナチャージも完了させドアをプッシュ。勿論その先はさらに、さらに、暗い闇で。魔の根源がここにいるのだろうということだけが理解できる。

「じゃ、いってくる!」

>いってら〜

>みんなもバケモン狩猟じゃぞ〜

>ネタが混ざってるっピ!























『再び来たか冒険者よ』




『吾輩は魔を統べし王たる"魔王"である』



 

『吾輩は、待っておった』



 

『其方のように命知らずでありながらも勇者と讃えられる者を』




『もし吾輩の味方となれば──』




『──この世界の半分をやろう』




『どうだ、今度こそ吾輩の味方にならんか?』




「面白そうだねぇ──」

 相変わらずのムービーシーン。流石にここはカットされなかったか、と悪態を吐く暇もなく武器セット。最大火力の竜斧槍を、盾兼継続火力のミスリルブレイドを浮遊。この組み合わせがなんだかんだ鉄板。そして本体が持つのはアイスソードと銀ナイフ。聖なる力を試してやるのだ。

>お?乗るのか?

>闇の世界キタ♪───O(≧∇≦)O────♪!

>わぁっはっはっは

「──だが断る」

 俊足(スキップ)で超スピード。魔王が反応する前に距離を詰め、浮遊する『竜衝ドラグノヴァ』の射程内で戦いたいところ。相手は比較的小さいからか知能が高い。無理に近寄れば引き撃ちで逃げるだろうからやはり目指すは速攻撃破。

>はい。

>闇の世界、興味ある

>やめとけやめとけ、パンイチで小さい塔に閉じ込められるゾ

>こわ……

『呵呵!やはり愚か者よな!虚空の果てで身の程を思い知り悔いるが良い!!』

 それを見た魔王は無詠唱で弾幕をばら撒く黒球とポータルを生成。普通ならばソレで終わり……のはずなのに。シェリーは加速(・・)してしまう。ポータルへ引き寄せられているのだ……しかし行き先は?

「これ、っ……ブラックホール…!?」

>どうなの有識者

>うーんエフェクト的にはワープ系なんだけど……

>あ、これ行き先NULLのゲートだ

>無に接続してる…ってコト…!?

>実は魔王も走者だろ

「エンディングに行っていいのは私だけだが!?」

 タネが分かれば対処可能。この(ポータル)を維持するための供給元か魔法陣を潰せばいいのだ。なら……敢えて近づいてアイスソードを振るえばいい。そしてミスリルブレイドで黒球もぶっ壊す。手数も射程も向上した故に、届く。

>ただの悪あがきをw

>あ、吸い込み止まった

>もしかしてアイスソードの氷属性が魔法ダメージ扱いになって魔法に干渉した…?

>そんなバナナww

>暴論暴論!

『ぬ、ぅぅっ!』

 実はその通り──しかし誰にも信じらぬままパリンとポータルは砕け魔王は怯む。継続展開していた魔法が強制解除され行き場のない魔力が魔王へと跳ね返ったのだ。お陰でシェリーも容易く近寄れる。

「手下が消えてガラ空きですよ魔王様ぁ、ちゃぁんと構えててくださぁい?」

 ミスリルブレイドを首元狙って移動させつつアイスソードで介錯。竜斧槍は魔王の後ろから突き斬りの連鎖で背中の(キズ)を量産。そして銀のナイフは武器を持とうとした手を刺してやるためのもの。離れようとした魔王に突き立てモーションキャンセル。フルボッコ続行。

>ふふ…下品なんですが…

>おいバカやめろ

>テレッテー

>乱舞シェリー来た、これで勝つる

>ハルバードよりは見慣れてるからだろ

>オラオラオラオラ

「私は止まらないからさ……みんなが見続ける限りその先に私がいるよ…!」

 足元から伸びる影鎖はコンボの片手間で弾き避けて対処可能……発狂されない限りは。

>シェリー…!

>パターン入ってるね

>死

『呵呵!我の力にそう恐れずともよい、吾輩まで辿り着いた汝であれば楽しめるであろうよ──!」

「やっべこいつ強制移行あるのかっ」

>草

>こいつも"マント"あるからね♡

>鎌がぐるぐる回ってる…こわ…

 只管ボコられ続けた魔王は突然笑い叫んだかと思えばシェリーと同じように虚空へ大鎌を召喚。同じく黒球がリポップするし影鎖もシェリーへ留め続けられた鬱憤をその身体で晴らそうと殺到。思わずバクステで離れブレイドガード。激しい金属音が耳に絡みつく。

「いやぁぁぁぁぁぁっ!!!」

>草

>調子になるからすぐガバる

>伝統芸能

>ここまでテンプラ

 前方の鎖の対処は可能だが黒球弾幕対応は困難。小玉くらいなら突っ切ってもいい気がするがナメた事をしたら鎌で狩られるだろう。シェリーが離れたことを幸いにし魔王は見覚えしかない構えを取っているし。

『さぁ 行くぞ』

>あw

>はい縄跳び

>来ちゃった♡

 傷だらけの身体を顧みず腰を落とし、魔王は髑髏大鎌に闇い血色の魔力を限界まで注ぎ込む。人類の脅威なる恐慌の饗宴を執り行う為に、死を極めし神の刃を此処に為す。

「来なくていいってのぉ!」

>仕返しってワケ

>絶対に殺すという意志を感じる

>はやく跳ぶんだよあくしろよ

 次に放たれるは部屋全体を覆い尽く推定即死の一撃。前回は消えていた黒球の弾幕と影鎖の奔流は止まず、容易く跳べる筈はないのに──魔王はたった今、終わりを告げる。

『"死ノ宣告(ハーヴェスト)"』

「ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ"っ"っ"っ"!!!!」

 もはや回避不能(間に合わない)。振るわれた死を目前にして……シェリーは、断末魔(ひめい)をあげたのだった。


Tips 仮想世界に於ける死について in ひきころ世界線


世界(ゲーム)、というよりは世界を成立させる法則(エンジン)によって変わるのだが、ノンフィクションエンジンにより作られた世界でのデフォルトの死はリスポーンまでの全感覚遮断。追加で痛覚を与えたり、そもそもリスポーンまでの間がなかったりなどはあるが特に変更がなければそんな感じ。



ちなみにプレイヤー側で全感覚遮断が拒否られる場合はゲーム機が適当な感覚に差し替えてくれるので開発者以外はあまり知られていない事実である。





でもシェリーはあんまり死なないのでこの設定が活かされることはあんまりない。

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