表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シェリーの昆布巻き配信'sアーカイブっ!(ひきころ短編集)  作者: わけわかめ
1:『8層ダンジョン』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/26

#22 [次元]RTAの女王は勇者になってもまだ世界を救うようです[探索]

ちなみにグリッチはネタ切れしました

「なんだよそれぇぇぇ!!??」

>ふざけんなwww

>俺もう終わりだと思って家にピザ頼んじゃったよ

>ワイは特上寿司

>[今夜私が頂くのはヘルシェイクロコモコです]

>草

>ごめん続きよりそっちが気になる

>名前のインパクトがすごい

>えぇ…w

「ちょっと待ってミーシャ今ボケをぶっ込まないで私が反応できない」

 増す頭痛の種に脳を圧迫されシェリーは頭を抱える。状況を整理しよう。シェリーは魔界ダンジョンを踏破し、宝箱を開け、赤いマント……王の外套を手に入れた。故に冒険者ランクはカンストのSSSランク(勇者)に至った。ここまではいい。ここまではいつも通りだったのだ。魔王のクソ能力には手を焼かされたが。

「……ダンジョン……増えた?」

>増えてますねぇ!

>後ろにあるよ♡

>まさかこの中央の石がフラグだったとは…

>確かにゲートだけどさぁ…w

 装備を手に入れ、いつもの空間──ダンジョンらのハブとなっているここへと戻って来る際実績取得に紛れて信じられない、信じたくない情報が見えたのだ。


 【全ダンジョンの完全踏破を記念して 新たなダンジョンが開放されました!】


 ……と。しかも入り口はシェリーが腰掛けて雑談背景にしていたくらいにはただの装飾(オブジェクト)だった中央の円盤。9つ目のダンジョンへの入り口となってからは中心から大きな次元の罅が走っている。入るにはここへ飛び込めば良いのだろう。知らんけど。

「まだ…まだ終わってない…!?」

>はい。

>まだありまぁす

>ケヒヒ 苦しめ苦しめ

 あれだけかっこよくキメたのに。終わりだーって雰囲気だったのに。というか"ダンジョンのゲート"だけが集っている場所なのにゲートでないオブジェクトがあるわけがなかった。つまりシェリーが目星致命的失敗(ファンブル)して本物の察しの悪いシェリーになっていたというわけだ。視聴者の皆も大概気づいてなかったのに薄情なものである。ほっぺを叩いて気持ちをリセット。

「ぁぁ〜〜っ……もう、言っても仕方ない。えっと、次のダンジョンは……"次元ダンジョン"?」

>超越…魔女?

>ぅっ頭が

>ァァァァァァ!!!!

>ターンが…ターンが回ってこない…!

>なんだよもぉぉ!!またかよぉぉ!!

「お前ら……はぁ」

 またオールドゲームの話してる視聴者に呆れながら王の外套を装備。冒険者スタイルだったシェリーにはよく似合っている。冒険者の頂に辿り着いた成り上がりの王と称すのがよさそう。

>おぉ

>派手…でもないな

>……なんか蠢いてね?

>まーた呪い装備か

>こいつの装備いっつも勝手に動いてんな

「いやいやそんなわけないじゃん。ねぇ?」

 ねー。

>おいww

>コレはクロですね…

>今完全に頷いてたぞwww

「気のせいじゃあないかな!そんなことより見てよコレ!」

 竜斧槍を取り出し、追加で(・・・)アイスソードと【旧融ノ砲哮(Big・Bang)】を装備(・・)。シェリーの周囲を漂い舞う。

>こいつ遂にサイコキネシスまで

>ねんりきでは?

>コレがシェリーの第3の腕…!?

>第4まであるんですがそれは

「思考操作の追加装備枠!自身の周囲で二つまで武器を装備できる!」

 クルクルとぶん回しアイスソードを射出、即時次弾装填(ナイフ装備)。魔王討伐の報酬と考えれば適正だろう。何せ某金ピカ英雄王モドキの真似事ができるのだから。

>おいおい遠距離攻撃だよ

>慢心が増えそう

>調子に乗るからすぐガバる!

「馬鹿野郎私がガバると思っていたのか!?」

>はい。

>はよガバって茶菓子を提供しろ

>[お茶どうぞ]

「くっそぉぉぉ!!!」

 乗せられちゃったシェリーは次元の裂け目──即ち次元ダンジョンへと飛び込んだ。そして深く、深くへ落ちていく。当然、円盤の厚みを越して。

>そういや裏ダンの説明あるの?

>いやここまで不親切だったしないだろ

>そうだよ

「あるよ」

>あるのかよ!?

>はよ

>俺らは読めねえんだぞ!

 仕方ないなー、とシェリーが口を開く。当然ながら次元ダンジョンは特殊なダンジョン。簡単に言えば"ボスラッシュ"だ。あらかじめ開示されていた情報によると森林のレッドキャップから魔界の魔王戦まで順繰りに戦っていくため八層全ての階層構造が違う。その中で元のボス階層との異変を見つけながら進まなければならない。

「倒した後に裂け目が出るから異変なら青、異変じゃないなら赤に飛び込めってことらしいぜ」

>宝箱どこ…?

>あるわけねーだろ

>無限強盗編なんぞさせるか!

「──っと、そろそろ最初の……」

 周囲の星海が切り替わる。森林のテクスチャが貼り付けられていく。木が生え、草原が生まれ、赤頭の小鬼(レッドキャップ)が三匹作られていく。そしてゆっくりとシェリーは手前に着地。5秒くらいは準備ができそうだ。

>見覚えがある

>鉄剣の名産地

>俺は鉄斧だったんだが…

>ワイは鉄トンファー

>マイナーすぎて草

「もっといい武器だったらよかったねぇ…」

 装備はとりあえずアイスソード&鉄剣を両手に、竜斧槍とレイピアを周囲に。両手武器と片手武器で使用感の違いを検証だ。その間にレッドキャップは完成、シェリーへ向かって──発砲(・・)。三発の鉛弾が襲いかかる。

「ウッソだろお前ぇぇ!?」

>蛮族が文明の利器持ってて草

>ウッソだろお前www

>見てから反応余裕なシェリーも中々にイカれ

 グギャグギャ笑いながら拳銃を構えるレッドキャップ共。オートマチック拳銃ゆえに次弾も間も無く飛んでくる。

「異変異変異変異変〜〜〜っ!!!」

 とりあえずレイピア射出、片目を瞑り狙いを定めていた一匹を刺刑。弾丸は竜斧槍を回し弾く。操作感度に重量質量は関係なさそうだが放ったものの回収はできないのでミスリルブレイドをセット。こちらも回して攻防一体の遮蔽にする。飛び道具に対してはコレだけやれば問題ないだろう。

>ずっと回ってんだけど

>有識者難易度教えて

>動かす座標と回転させる速度を常に意識し続けろ

>……それを二つ分?

>おう

「慣れりゃ簡単だって!」

 当然接近、レッドキャップは焦って明後日の方向に鉛を飛ばす。当然隙だらけ。そのまま射程内に入った二匹を竜斧槍とミスリルブレイドで擦り潰し殲滅。二つの裂け目が開いた。

「ね、簡単でしょう?」

>そうはならんやろ

>無理だってww

>通販よりも無茶なプレゼンするな

「あはははっ、じゃあ洞窟へレッツゴー♪」

 シェリーは当然青い裂け目に飛び込み正解。再び周囲の視界がが星海に変わってさらに下へと落ちていく。

>しかしコレ落ちるんだな

>深いところに行くのってなんか怖いよね

>深淵を覗く時深淵もまたお前を覗いているのだ

>向かってんだよなぁ…

「割とスカイダイビングみたいで楽しいよ」

 しばらく雑談していれば今度は周囲の星海に岩肌が張り付けられていく。ところどころ水晶のような鉱石が生え、菌類からなる茸も繁殖。相手になる大きな蜘蛛も今作られているところ。

>それはお前だけ

>イマドキでスカイダイビングとかマイナーだから………

>は?

>ちょっとこいつ許せないっすね

>ウイングスーツでライダーキックすんぞ

「ゲームでもフリーフォールはやるでしょ……」

 というわけで猶予期間の間に装備変更。両手の剣はそのままだが浮遊枠には顎門銃と魔術杖をセット。

>前回は速攻だったからな…

>横の武器の選択何?

>あー、熱?

「そうそう、糸燃やしてみよっかなって」

>人の心とかないんか?

>中から焼き潰せば楽だしな

>そう上手くいくかねぇ

 ちょうど出来上がった大蜘蛛が脚を振り上げキシャァーと叫び戦闘開始。シェリーは顎門銃には熱を充填し魔術杖は少し後方に配置して接近。

「いくかじゃない、いかせるのっ!」

 払われる脚を鉄剣の腹で上に逸らしアイスソードで節を狙い刺す。蜘蛛は怯むが逆の脚を振り上げシェリーを刺し返さんと狙いを定める。やはりボスは軽い一撃では止まってくれやしない。

>ここかっこいい

>武器で流すときに出る火花好き侍 義により参戦致す

>もっと大胆なこと、してみない?

>それは花火!!

 しかも口を開いて糸を絡ませるつもりらしい。回避しなければ今すぐに、回避すればその先で絡め取られてしまうだろう。ならば想定通りのチャートを試してやろう。

「求むるは火、撃滅の焔なり」

>お、詠唱きた

>糸くるけど大丈夫か…?

>燃やすから問題なし!

 糸が伸びる。待機(ディレイ)中のシェリーの足先を狙ったそれは……後方から一気に飛び出した詠唱中の魔術杖に巻きつかされた。もちろん火を産んでいる最中の。

「『火球(ファイアボール)』、ついでに【旧融ノ砲哮(Big・Bang)】!」

 杖に巻きついた糸は全焼。しかも開いた口内に熱線がぶち込まれ大蜘蛛は身体の"中"から焼き滅ぼされる事態に。

「熱そうだねぇ!体の芯から冷やしてやるよぉっ!」

>誰のせいなんだろうなぁ

>あいつ

>コレがマッチポンプってワケ

 腹が燃えのたうち回る大蜘蛛の前まで走り抜けるシェリー。身体を横に倒し回転しながら切り下ろせば体力が限界に達したのかポリゴンとなって消えていった。遅れて青と赤の裂け目も現れた。

「……赤でいい?」

>IQ3000の俺もそれでいいと思う

>不安だな…

>数値がバカっぽいんだよな

「不安だなぁ…」

 そうはシェリーは言いつつ赤へ飛び込んだ。一度目の大蜘蛛はサクッと倒してしまったが故に印象浅い。パッと見て変じゃないのだから異変はないと信じて洞窟を後にする。もし間違ってたらもう一度倒せばいいし。

>この剥がれていく演出すこだ…

>わかりみある

>次は…墓場だっけ?

>ゾンビだな

「これ服装違うとかだったら教えてね……」

 深く。深く。尚深く。次元の狭間を降っていくシェリー。視聴者との雑談に勤しんでいるうちに再び周囲にテクスチャが張られていく。まずは目立つ大きな石碑が打ち立てられ、そこを中心に広場が形成。周囲には生垣が生えてきて、ゾンビも床の中から腕を伸ばして這い上がっているのがわかる。その手は……9本。

「ねぇ」

>増えて…………ますね

>ちょっと異変が雑すぎるんと違う?

>まぁ殲滅力上がってるし大丈夫でしょ

「そうだけどさぁ〜っ!」

 武器セレクト。敢えて魔術杖は封印し浮遊させるは銀のレイピアとナイフ。手持ちはミスリルブレイド。両手剣のリーチで牽制しながら銀で浄化する方針だ。

>殺意高い

>武器が多いって幸せだね

>扱うやつも扱うやつなのよ

「さぁこい、ここがお前らの墓場だぁ…っ!」

 這い上がってきたゾンビーズ。猛進して一つ薙げば容易く腕が吹き飛んだ。流石ゾンビだ体が脆い。

>ポロリもあるよ

>無くていいから(良心)

>エロなんてなくてただのグロなのよ

「ははははっ、その程度で私の前に立つのかよざーこざーこっ!」

 数は増えどもその規模は雑魚の範疇。レッドキャップよりは耐久があるだろうがシェリーは特攻(銀の)武器持ち。大袈裟に薙ぎ払ったミスリルブレイドを囮にしてレイピアで的確に脳刺し。ナイフで首斬り。

>先人に敬意を払わない走者のクズ

>もっと可愛く煽ってくれないかな

>へ、変態だー!

>もしもしエンマ君?

>舌抜きは嫌だ舌抜きは嫌だ舌抜きは嫌だ

「なら天界はどう?私の天使(オファニエル)が救ってあげるよ」

>遠慮します。

>いやです…………

>何もかもが嫌になったら……カナ……

 清浄なる(疑問符)銀製品に触れたそばからアンデッドが溶けていく。これが特効の力か。容赦ない浄化(救い)にゾンビたちはその頭数を減らしていく。

「断らななくていいのに、私たちの仲でしょ?」

>いえいえお気になさらず…

>ちょっと恐ろC

>まだ天に上りとうない!

 少し色気ある声で誘いつつレイピア射出で二枚抜き、残り三体故に俊足(スキップ)で踏み込み薙ぎ払い。銀のナイフも添えて二重打点。脆いゾンビらは容易く吹き飛んで終了。青と赤の裂け目が開いた。

「ちぇー、久しぶりにお前らボコりたかったのに」

>こいつぅ……

>許せねえ

>いつも苦しめてくるのただの愉悦じゃねえか!

>こいつ一回何かしらの罪で裁かれるべきでは…?

「あははっ、今日はやってないからセーフだよセーフ」

 8つのダンジョンで集めてきた武器を持ってすれば序盤のボスは迅速殲滅完了。シェリーは青い裂け目へ飛び込み、さらに次元の狭間の深部へと進んでいくのだった。

Tips シェリーの変態性能について


シェリーは単純な賢さだけで言えばそう優秀な方では……あるが"天才“という程賢くない。

単純なINTで言えばバレッティーナの方が上。なのにどうしてシェリーがここまで思考操作や複数行動を得意としているのか。


それは思考の分割に異様に長けているから。

昔から異様に頭の回転が早いシェリーにとって時の流れは遅く、退屈なものであった。例えるなら皆の生きる世界がFPS120だとすればシェリーは360以上。そのため皆と交流している内に思考をタイムスライスして主人格の体感時間を周囲に合わせる技術を会得した。

そしてゲームプレイから余った思考の余裕をマニュアルカメラ操作やコメント欄への反応などに割り当てて配信している。

なんだかんだ一歩引いて判断していたり初見殺しにも強引な対応を行えているのも単純にこれの恩恵。


なお、この設定はシェリーに変なことをさせるためだけに作ったので特にシリアスな裏面はない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ