#19 [魔王城]RTAの女王は悪魔よりも悪魔らしい[カチコミ]
遅くなった
描写凝ってる+長い故にちょっとね…
「ただいま〜」
>おかえり〜
>おかえりんりん
>おかかおにぎり
7つ目の火山ダンジョンを終えたシェリーは小休止を入れ帰還。先のワイト、リザードマン&赤竜と続いて脅威度が跳ね上がっていた為に一度体を伸ばしてきたのだ。お陰でやる気が湧いてきた。クリエナブースト装填完了。
「腹減るからやめてって〜」
アバターの方でも慣らしの運動。反復横跳びとシャドウボクシング。もちろん高速の方で。視聴者たちも見慣れているからツッコミはしない。
>いやー惚れ惚れする
>俺もできたらいいんだけどな
>理論上可能だがオンゲでやったらしょっぴかれっぞ
「そうだよ〜…よしっ、そろそろ行くか」
シェリーは火山を後にして横へ。まもなくこの空間を一周する彼女が8番目に向かう8層ダンジョンは魔界ダンジョンである。
「どうみてもラスダンだよねぇ」
脇を流れる毒沼を挟む棘山、ガーゴイルの塀に囲われゲート先には暗闇──ではなく、暗い闇の世界の半分が広がっていた。それは紫の大地であり、灰色の道が切り立つ崖の上の城へと続いているのだ。まるで英雄の訪れを招き入れるように。
>殺しに来てら
>なんこの…なに?
>デレデレデェェェェン
「はははっ、一気にすぐ壊れそうになっちゃったね」
けれど物怖じなどするものか。装備中の竜斧槍を笑いながら振り回し、肩へと担ぎ歩く姿は正しく威風堂々。脳漿を満たすクリエナが光のオーラとなっている、のかもしれない。いや普通に幻覚な気がする。このゲームにそんな仕様はないし。
>RTA始まる?始まっちゃう?
>まず壁抜けします
>ホァイ
「古すぎるってwww」
それは人の狂気。あるいは魔の脅威。寄り道なんてなく、たった数時間で世界中のダンジョンを踏破してきた伝説の冒険者シェリー。
>なんかテーマパークに向かうみたいだぜ
>テンション上がってきたな
>お父さんおる
「それじゃ私も盛り上げないとね…っ!」
大扉の前まで辿り着いた。凝られた意匠は圧倒的な威厳と力を誇示するかのよう。それもそのはず。8つ目のダンジョンは魔界ダンジョン。そして『魔界』に在るダンジョンといえば当然……"魔王城"。扉を開ければもう戻れない。
>生きているだけで撮れ高
>でもそろそろ死んで欲しい
>なんだかんだ残機減ってないからな
「ゼロガバでパーフェクトにクリアしてやんよ〜♪」
>フラグktkr
>したり顔たまんねえぜ…
>\[応援]/
さぁ、魔界ダンジョン第一層目。中に入れば大きなホールがお出迎え。当然ながら手前と遠くの両方に扉が一対。鍵がかかっているだろう。天井には大きな大きなゴールドのシャンデリア。紫炎が灯るキャンドルが並ぶゴージャスかつエビルな佇まい。もちろん壁も深い紫に白と黒の差し色で雰囲気は統一されている。
「ふ〜ん……いい雰囲気じゃん。潰し甲斐があって」
>こいつ…負ける気がねぇ!
>負け戦を好んでするやつ……おるか
>おい
>ファインダーさんなんて一言も言ってませんけど?ん?
「いつもありがとね……で、なぁにあれ」
しかも床は大きな白黒のモザイクタイル。シェリーはそのうちの二つを挟んで立ち、向かいの扉を守護するように居敵を観察。それは頭部に大きな大きな山羊角を生やし、人の身では辿り着けぬような筋肉を誇る。その上で脚のアダマントの蹄の前では生半可な防御は命乞いよりも意味がない。そして服装は暗い、暗い、黒色。腕に持つ逆さ十字の剣と合わせて見れば"闇の司祭"と言い表すのが適している。
>お前を殺す為に現れた悪魔だぁ…
>あ、あくまたん…
>筋肉の悪魔だね
「同じ名前の悪魔は二体いないんじゃないの?」
それが……二体。アレは悪なるものに連なる魔性、人を堕落させ闇の世に誘う人類の天敵にして永遠の友。悪魔である。
「さ、殺すよ」
>判断が早い
>これには鬼狩りの天狗もニッコリ
>西洋にも天狗がいるのか…
作戦決定。俊足で前へ。悪魔らも反応し同じく前へ、もちろん速度は人外の領域。シェリーは竜斧槍を反転し石突側の刃で薙ぐ。同時に宝玉を起動。
「竜よ 竜よ 古の鼓動を響かせよ 『竜衝』」
>ひゅーっ!
>これも詠唱付き!?
>ああ…また増えるんだろうな…
唯人と見誤った悪魔Bは逆十字剣にて受け止めた。止めてしまった。故に死は確定。純粋なる竜の鼓動か伝わり、余すことなく悪魔Bの全身へと炸裂。多々重複したダメージにより爆発四散。悪魔Aも弾けた同胞の姿に警戒、刃からは逃れた。けれど。
「えっこれそんなに強いんだ」
>本人が驚いてんじゃねえよwww
>うーん、草
>シェリーの槍捌きうまくない??
澱みなく武器は言の葉とは逆らって再び反転。刃は後ろへ、矛が前へ。竜を穿ち得たシェリーが操るのだ。命を奪えぬ道理がどこにある。
「獲ったァッ!」
避けた、先を狩る。戦場の鉄則が一つ。予測できる事象は必然でしかない。矛を突き立てる速度、着地する位置、それらが重なる一瞬を狙って、放てば。
>死んだ
>可哀想…
>最後になっても変わらないじゃないか!
爆散。敗者はポリゴンとなって消えていくのみ。鈍い金属音がホールに響き、進めるようになったとシェリーを確信させる。そのまま納刀。
「いやいや。私が雑魚戦で死ぬなんてそうそうないから」
>ケルベロス
「ごめん」
ここは過去作参照。
>草
>トラウマ持って来るなww
>今晩もよろしくお願いします
「報告すんなぁっ!」
顔を赤くしながらツッコミ。流石にここは少女らしい。視聴者の痴態にため息を吐きつつ奥の扉を開放、ここからは異変が待っている第二階層だ。
「さてさて異変はどこかなと」
悪魔は2体。位置に服装は同じ。床も64面の白黒タイルに変わりはない。構造が単純な故に異変の確認は困難。目印や変わりそうな部分がコレまでと比べ然程ない。かの廃墟ダンジョンと比べても、だ。
>[ここに異変はありません]
>異変だー!!!!
>嘘ついてんじゃねー!
「それくらい簡単だといいけどね〜」
一通りの目視確認を終え、眼と眼が合ったらバグモンバトル。接敵した初撃は悪魔側から。怪力に任せた逆十字剣の振り下ろし。神を冒涜し、嗤う悪魔の斬撃。それをシェリーは避けぬらしい。
「ちょっと試すよ」
>検証キター!
>俺は遠距離から弓でチクチクで倒しました…
>弓でw獣に挑むなどwww
矛先を下に。指先を前に。悪魔Aの動きを三角測量、自身のアバターと武器長を考慮に入れながらも──縦回転。いくら判断力が高くとも行動が制限されていれば意味はない。跳ね上がる矛槍は剛剣を横に弾き、生まれた間隙へ斧刃を捩じ込み。悪魔の腹部には深い深い裂傷が。
「ま、ノーバフだとワンパンは無理か〜」
>ラスダンやぞ
>当たり前だよなぁ
>悪☆魔☆退☆散
当然の事を確認。オーバーキルだったという憂いを断ち、一周した矛が裂傷を更に深くする。しかし背後からは別の悪魔Bが。彼らは二体。1人に集中していてはバックスタブを取られ放題。ならば攻防一体の動きをすればいい。
「遅い遅いッ!」
>痛そう
>抉られてて草
>心臓を捧げよ!
突き刺した矛を支点に跳躍、半月のような軌跡を描いて悪魔Aの頭上へと移動。BSはFFFに。
「ざぁ〜っこざぁ〜っこ♪」
>ヌゥゥゥーーーーッ!
>伝説のメスガキ・トーチャリング!?
>ただの煽りなんだよなァ…
悪魔Aはポリゴン爆散。跳び越したシェリーは矛を地面に突き刺し勢いそのままポールダンスが如く回転、踵が悪魔Bの方へと向いたところで手を離し飛び蹴りをキメる。
「シルバースラストァッ!」
踵が角を蹴っ飛ばし、空いた手で装備した銀のレイピアをガラ空きの額へ叩き込む、押し込む、捩じ込む、奥へ、奥へ、奥へ。
>決まったーッ!
>ただの格闘なんよ
>なんなんだ今のは…
「オラオラオラオラァ!」
ここに居る悪魔は受肉済み。身体に受けたダメージはそのまま魂へと届く。故に破邪の力を持つ銀製の武器は特効を持つ。アンデッドよりは効きにくいがそれでも十分。
>ヤンシェリー
>[シェリーのメンヘラヤンデレラブラブASMR求ム]
>希望は置いといたる
>もっと高いのやらないから………
「オラァッ!」
十分突き立てた上からダメ押しの蹴りジャン、竜斧槍を抜き腰を落とす。悪魔Bは痛みによる混乱で反応不可。回避不可。防御不可。死ぬが良い。
「ドタマ獲ったァァッ!」
シェリーは魔神が如く斬りかかった!
バコォォァァンンッッ!!
「かいっしんの一撃!」
>音がやべぇww
>ノンフィクエンジン根幹システムに難ありマジ?
>コレみるとマジかもしれん
防御のぼの字もない圧倒的無防備な頭蓋に致命的な一撃を喰らわせ悪魔Bはポリゴン爆散。もちろん扉の鍵もオープン。
「あははっ。だと楽しいよね〜、こうして思いっきり楽しめるわけだし♪」
>製品としては問題アリでは?
>対処はできるからモーマンタイ
>いうて俺らも好きだし何も言えん
「さてさて異変はどこかな〜」
無事開いた扉は一旦候補から外し床、壁、天井と瞳を滑らせる。先ずカラーの変更はない。アハ体験が一番キツいので今回は幸運だとして。
「本当に何もないねぇ……」
窓はあるにはあるがただただ黒雷雲が立ち込めているだけ。徐々に目が慣れてきて見えてきたが相変わらず他の生物は一つたりとも存在しない闇の世界しか見えない。というか立地がクソすぎて魔王とその配下しかこんな場所に来ないし。つまり魔王はボッチ。Q.E.D.
>なーんか静かですねぇ
>人類の戦力は軒並み戦争に回してんのかもな
>ま、そんなのシェリーには関係ないけどな!
「上機嫌だねみんな……って」
呆れるように呟いて上を見る。そして違和感に気付いた。この部屋が暗くなっているのだ。その理由はシャンデリア。
「キャンドル溶けてんじゃん…!?」
>あーもう準備の人変えるの忘れてるじゃん
>ただの電球切れだから戻ってくださーい
>気のせいじゃないかな
「お前ら一致団結して私をハメようとするんじゃねえよ!!絶対異変じゃんアレ!!」
キレながら奥の扉へ爆走。シャンデリアが消えてしまう前に駆け込んで第三階層へ突入。
>チッ
>騙されろよ
>そうだそうだー
「嫌だし……って、なんじゃこりゃぁ!?」
シェリーは定位置の手前2タイルを踏み締めているが……前方には想い想いの衣装に身に包んだ小悪魔が8体。イケナイお兄さん達が思わずスタンディングしてしまうような造形が一列に並んでいる。まるでアイドルのコンサート。
>FOOOOAAAA!!??
>今、僕は冷静さを欠こうとしています。
>興奮してきてきたなぁ〜
「この変態どもぉ…っ!」
気持ちはわかるが流石にソレは表に出せない。できれば家に持ち帰ってナデナデしながら可愛がってしまいたいが今は敵、殺した後で感コピ(not誤字)したモデルを作成して……なんて考えている暇なんてない。シェリーが竜斧槍を装備しなおす前に彼女らは前に駆け出してきた。もしもこのダンジョンの仕様が予想通りなら、手前の壁に触れさせるのはマズイ。先手必勝俊足で前方の2人を一瞬で薙ぐ。
「バイバイっ!」
>あああああ!!??
>ポニテツインテロリ悪魔たんが死んだ!
>この悪魔めぇーっ!
「いや悪魔なのこのかわい子ちゃん達でしょうがぁーっ!?」
心苦しいがコレもクリアのため。左へ方向転換、斧刃をぶん回しながら突進。メカクレショタ小悪魔、あざといメスガキ小悪魔、真面目風隠れビッチ小悪魔が順に殺されていく。あなたの性癖はどれかな?
>ぉぁ……
>あぁ…………
>推しが推しを殺してるこの状況どうしたらいい?
「笑えばいいと思うなぁ!」
だって当事者の方が辛いし。さすが魔王、人間を傷つける術に長けている。コレは許せない。オファニエルがあれば死ぬまで死んでも永遠ずっとオファニエるのに。しかし左端までたどり着いた間に逆側の彼女らは現在3列目に入らんとしている。残り2列。壁を蹴って切り返し足を止めに入る。
「届け──竜よ 竜よ 古の鼓動を響かせよ!」
俊足、槍を上段に構え滑走で速度を上乗せした全力投擲をプレゼント・フォー・デモンズ。竜斧槍の宝玉が再び輝きだす。
>やるんだな…今、ここで!
>きたわね
>当たるかコレ…?
「『竜衝』ついでに私のお迎えだヒャッハァ!」
イヤイヤ過ぎればガンギレモード。瞳孔かっ開いたシェリーは着弾と同時に竜斧槍の力を解放、ついでにミスリルブレイドぶん回しで神風突撃。『竜衝』で金髪ギャル小悪魔が退場、メガネ優等生風小悪魔がミスリルブレイドで真っ二つ──しかし、一人はうまく逃げ切ってしまった。ケモミミ小悪魔メイドが壁に触れると同時、みるみると身長が伸び、その頭には……なんて悠長なことを言っている暇はナシ。
「見たいけど見たら死ぬんだよなぁ〜っ!!」
>そんなー!
>最初からでもいいのよ?
>成長しないで
仕方なく、辻斬り。成長の悦びに浸り背を向けていた故に不意打ち成功。変身中に攻撃してはいけないルールはここに適応されない。なんとか全員をポリゴンに返して第三階層クリア。鍵が開くと同時にシェリーは壁に寄りかかる。
「きっっっつぅ……けほっ」
クリエナ補給失敗。
>つかれ咽せ助かる
>シェリー短距離苦手だもんな
>区間練習しないんだっけ
「んー、そう…通し練習何回もやる方が好きだね〜……」
雑談で疲労を紛らわせつつ、シェリーはさらに先の階層へと進むのだった。
Tips シェリーの武器評価 斧槍編
これ一つあればいろんな攻撃ができる十得ナイフみたいなヤツ。
槍と違って便利だよねー、刺してよし切ってよし叩いてよし薙いでよし削ってよし……多用途すぎて使えない状況ってなんだろ?ってくらい使いやすい。
なんなら突き刺して高跳びできるし……でもこの武器、マイナーなのか実装がめんどくさいのか定義がややこしいのか、理由は知らないけど存在しないゲームがなかなか多くて寂しいのは内緒。
いやそりゃ私が一番好きなのは好きなのはオファニエルだしその次は双剣だけど斧槍は扱いやすさ的に言えばナンバースリーはくだらないんだよわかってコレは浮気じゃn(以下略




