表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シェリーの昆布巻き配信'sアーカイブっ!(ひきころ短編集)  作者: わけわかめ
1:『8層ダンジョン』編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/26

#16 [火山]RTAの女王と汗と涙の結晶[危険]

サティスファクトリーはやばいゲームです

 多重武器操作による一撃必殺(略して剣)でボスを抹殺し、鏡のような盾を手に入れた冒険者シェリー。当然のようにいつもの謎空間に戻されたシェリーはとりあえず中央の円盤に腰掛け雑談開始。話題は武器について。

「盾って使い道に悩むよねー」

>おう悩むも何も一択だろ

>守って。どうぞ。

>シェリーの背中に隠れたい

 ……ただし初手から戦の火の玉ストレート。盾を武器としか見ていないあたり別の意味で脳筋極まれり。こいつにとって防具とはバフ以上の意味はほとんどない。ゴリ押しできる程度の耐久があれば善し。

「今から……避けるね」

 だって全ての攻撃を避ければ防御性能など必要ない。強いて必要なのは攻撃を逸らし突撃を補助する能力だけだ。パリィで体制を崩した隙にボッコボコのボコにする時が一番生を実感する。というわけでシェリーの後ろに立ったやつは攻撃の的にされて死ぬ。

>ウグーーッ!!

>割と余裕ありそうだな

>もっとトドメ刺せ

「なるほどなるほど〜、耐えられるんだ──」

 例外は全ての攻撃を受けるなり弾くなりで捌いて突っ込んでくるアリサ、銃で行動を制限しながら近距離遠距離問わず攻撃を射ち落す(・・・・)バレッティーナ、インチキにも程がある完全無敵中のファインダー。あとはノリとテンションだけでどうにかしてしまいそうなレファくらいだろうか。……例外に含まれていないスターシャは直接戦闘能力は低いので多分死ぬ。よくて相討ち。

「──おめでとう。君は戦場の最前線に送られる。シェリーの昆布巻き配信に栄光あれ」

 あえて低い声で。とはいえシェリーと無名の一般視聴者ではプレイの上手さに山と天くらいの差がある。下手なプレイを目にしたら任せてはおれんとシェリーは自分から最前線に殴り込みに行きそう。つまりこいつに元帥は向いていない。よくて精々が革命の英雄。終わった後に殺されるやつ。

>嫌だなあ

>お?シェリー同志に逆らうのか?

>西側のスパイですぜこいつ!

「さぁスパイくぅん……キリキリ情報を吐いてもらおうかぁ……この隅で君の頭を殴ったら痛そうだよねぇ……」

>ヒ、ヒィーッ!

>おいこの拷問官ちょっとフェチいぞ

>普通に殴って、どうぞ

 粘着質な声と共に縦の縁を撫でるシェリー。おそらく疲労でおかしくなってきた。或いは……次のダンジョンから漂ってくる(視覚的)熱気(・・)がシェリーのテンションを狂わせているのかもしれない。

「仕方ないなぁ、溶岩殴って満足してあげるよー」

 >助かった

>お前はマークフォーデスされている

>知らんのか?シェリーからは逃れられない

 7つ目のダンジョンは火山ダンジョン。溶岩と黒曜石からなるゲート、垂れ落ちるマグマ。苦い虫と氷の結晶を混ぜて飲み干したい。しかしないのでクリエナ補給、体を潤して戦闘準備。

「今度の視聴者参加型配信では優先権あげるね」

>わ、わーい!

>終わったな

>まぁ、いい奴だったよ……

 装備選択はとりあえずアイスソード一択。そこに関してブレることはない。あとは左手分なのだが……金銀銅製武器らは耐熱性が低い。ミミックハンマーとミスリルブレイドはデカい。魔術杖は論外。というわけで選ばれたのは……鉄剣でした。別の武器も検討はしたがやっぱりこれが定番。

「れっつごー」

>おーきーどーきー

>おういぇ

>ヤッフー

 ゲートを潜れば第一階層。前後両方に暗闇の洞穴、それを結ぶように溶岩の道が形成されているものの、周囲にも移動できる構造は墓地ダンジョンと似ている。ただし道以外の足場は飛び石のようであり安全とは言い難い。

「熱っつう……」

 しかしそれ以上に厄介なのは水なんて秒で蒸発してしまう熱気。何度も何度も念押ししてかたるくらいには皮膚を、肺を、舌を、空気の触れるあらゆる感覚器を熱さで潰してくる。仮想空間ならではの感覚調整がなければ生身では耐えられないことだろう。観光も命懸けということか。

>熱くて干からびそう……

>お?感覚共有配信民か?

>動いてないのに熱いよー

「本当は家でエアコンの効いた部屋にいるんだろうお前らはァ!」

 と叫ぶ本人はアイスソードで涼んでいる。シェリーがかろうじてふざけていられるのもこれのお陰。人間が正気を保つには適した温度が必要なのだ。グッピーみたいでかわいい。

>ははは。

>麦茶うめぇwww

>許せねぇ……やっちまってくださいシェリーさん!

「っし殺ったるか!」

 マグマの滝に岩壁から生えている鉱石、遠くに見える蝙蝠などの周囲観察を終え視点をようやく前へ。今回の敵はこんな危険地帯に似つかわしい赤肌のリザードマン。そう、人型(マン)である。廃墟で散々戦ったワイトどもと同じように武器も剣と盾、槍、斧持ちの三種が存在しているようだが……コイツらはワイトにない厄介な点がある。

「でも飛べるの羨ましいなぁー、バーニングリープが欲しいかな!」

>あれ熱くない??

>跳べよぉぉぉ!!!

>攻撃受けて痛いより避けて熱いほうがマシ

 背翼と尻尾の存在。人間の限界を超えた力を引き出されていたもののワイト達とは平面(二次元)戦いだった。けれど飛べる相手にはその限りではなく、容易立体(三次元)の戦いを要求される。追いつけない射程外からの急襲でもキツいのにそれらが組み合わさるなんて地獄以外の何物でもない。けれど。

「サクサクっと殺してエンディング見るぞー!」

>RTAマダー?

>(チャートが)ないです

>だったら走ればいいだろ!

 仁義なき戦い。俊足(スキップ)滑走(スライド)で勘違いから突っ込んで盾の内側から前方へ切り上げ。即死。平面跳躍(クライム)でベクトルを斜め前方に変更し洞穴の上を蹴り再跳躍(クライム)

「見えた!隙のガバ!」

>ここ、隙とガバは重言です

>国語の教師かよお前はよー!

>でもこの指摘さんは妥当では?

 三角跳びの要領で上を取り落下。呆気に取られたリザードマン君は脳天より真っ二つ。人間らしい判断能力を持っているが故にシェリーの奇行に対応できなかった。どれだけ技術を高めようと奇人変人の類には対応できないのだ。

「いやー、大変だねこれ」

>変態なのはシェリー定期

>今日のお前にだけは言われたくない配信はここですか?

>もっと人間の動きして

「十分人間だが???????????」

 だって四肢も首も繋がってて喋れるし、実写配信もしたし、実在しているはずなのにちょくちょく実在を疑われる系配信者シェリーはカメラに説教。相変わらずの手応えの無さに呆れ納刀。死体は捨てるまでもなくポリゴンに還る。

「しっかしここはランドマーク少ないねえ」

>非建築物だからな

>天井に化石が見えるぜ!

>溶岩魔人きそう

 奥へ奥へと流れていくマグマに浮かぶのは岩、岩、岩。足場にした途端沈んでしまいそう。遠くを眺めても黒煙で見せてくれやしない。シンプルイズザディフィカルト。

「地形が襲ってくるのは嫌だなー、殴りにくい」

>これがフラグですねわかります

>つまりこのダンジョンのボスは……

>ネタバレ禁止!

 一通り確認し終えたシェリーは進んで第二階層。相変わらずの熱気にリザードマンらがシェリーを歓迎。地形に変化はない。

「こんな終盤のボスでクソボス出してきたらキレるよww」

>じゃあ俺全回復するから

>はい回復反転の霧

>ミ"ッ"

 ラスボスよりはその前座が強いというのはまま聞く話。第二形態になると弱体化というのもド定番。ラスボス戦が実質イベント戦で対配下時だけがガチバトルとか、時を奪ってくる老婆がさらに強くなって全てを奪うようになったがレベルを上げてのゴリ押しが可能になったりとか。そもそもエンカ率がクソ高すぎて道中でくたばる可能性まである。あった。

「んー……ちなみに聞くんだけど、リザードマンがトンファーってアリ?」

>……マジじゃん

>この武器、何か変…?

>いやネタ武器扱いされてるけどリアルだと強いからな

 とここでシェリーが気づいた。リザードマンは固定だとしても武器の内容が槍と斧は同じでも両手トンファーはおかしくないかと。熱いけど。

「いや、えぇ……っと、ヤバヤバ」

 困惑しているうちにリザードマンはシェリーを感知。背翼を広げ飛行を開始。こちらも双剣にて受けの構え。どちらが上かわからせてやる。

>お、マジモードだ

>マジになるとどうなるんです?

>知らんのか、俺は知らん

「こぉーんなよっわよわな雑魚ども蹴散らしてやんよやんよーっ!」

 まずは上からの槍を回避、柄を踏んで地面に押し付け。長物武器はこれが怖い。引き寄せられバランスを崩したリザードマンは墜落と同時にポリゴンへ。無防備を晒した方が悪い。

>槍ニキいる?

>なんだよ

>あれされたらどう思う?

>嫌

>そっかぁ

「コメント欄で会話するな私を見ろーっ!」

 その背後から斧持ちが腰を狙って全力攻撃。回避を捨てた渾身の一撃。けれど当然のようにシェリーはバク宙。スカされた斧持ちは返す刃で斬首。となると残りはトンファー持ちで。

>身体能力ェ…

>運動神経だろ

>フルダイブは神経とニューロンだよ ハッカーになれ

「なら干芋のトロ粉末が欲しいかなぁ、っとぉ!?」

 まずは切り上げ、トンファーで弾かれ。体幹を削られたところに反撃の刺突。剣腹で逸らし滑走(スライド)で後退。一歩拍を置いてから俊足(スキップ)で腕を狙う。

>フロッピーディスクでいい?

>古いなぁ

>パンチカードでもいいぞ!

「もっと今らしいもの、ぉっ!?」

>殺ったか!?

>まだだ、まだ終わらんよ!

>しぶとい

 しかしそれすらもトンファーでガード。受け止められた横から襲いくる尻尾。見えているのに避けられず脇腹に被弾。鳩尾への追加攻撃もモロにくらって警告アラート。

「ぃ、っつつぁ……」

 赤く染まり揺れる視界を強引に振り払い前へ。前へ。トンファーで一番強い攻撃はトンファーを使わない格闘攻撃という説もある(要出典)。その点攻撃部位が一つ多いリザードマンとの相性は上々か。

>これピンチですか?

>はい。

>今の痛みで悶えてる 痛い トイレ行ってくる

>共有切れよwww

「もう、それは…見た、ぁ!」

 今度は反省を生かし左から突き。無論弾かれるが時間差をおいて正面にアイスソードをプレゼント。襲いくる尻尾を部位破壊。案の定怯んだ。

>これはスタイリッシュ

>あ、撃墜された

>死んだなこりゃ

「南無三ッ!」

 脳天に一撃。地から再び羽ばたこうとしていた羽根は地に伏して停止。死んだのだ。というわけで洞穴も進めるようになった。

「いやー、危なかった……あと一撃喰らったら死んでたよ……」

>どうして倒れてくれないんだよーッ!

>#シェリー悲鳴部

>いやぁ、乱数に捕まったクソゲー実況は最高でしたね

「ほんっとウチの視聴者は趣味が悪いなぁ……」

 ジト目で流し見。周囲確認もさらっと流して第三階層。再配置されたリザードマンの武装は剣槍斧。予想通りトンファーは異変だった。

>その目もっとください

>興奮してきたな…

>わかるマーン

「こーれ異変は……んー……?」

 遠くを眺めても蝙蝠が飛んでいるだけ。マグマの滝も相変わらずの熱気を放出中。飛び石の配置も変わっていない。横からドラゴンが突っ込んできたら面白いのだが…そんなことはなかった。

>なさげ

>お?異変くんサボってんな?

>いや或いは騙して悪いかもしれんが……

「あははは……ま、変わらず殺ってこっか」

 異変があろうと、なかろうと。目の前に立つのなら倒すだけだから。

Tips シェリーの武器評価 片手盾編

武器……武器?

いや武器じゃないでしょこれ…

まぁなに、武器としては防御力に優れて取り回しのいい打撃武器……って感じ?

正直こんなの使うくらいなら普通に殴って蹴っての暴行したほうが強いと思うんだけど……

打撃欲しいならハンマーでいいし。









というかオファニエルの重量で殴ったほうが効果高いよねぇ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ