#12 [自然の]RTAの女王よりもデカいヤツ[驚異]
なんかもう1時前ですね…ごめん。
「終わったぁ……」
長い時を経て第七階層。第六階層は長い戦いであった。ツルツルと滑るがシステム的には強制移動のようで岩に激突するまで直線的に滑り続ける上、方向も十字方向にしか進めないので斜めに滑ってインチキなんか出来ようもない。その上カメラに向かってポーズを取ったりツッコミを入れるのについ足を広げてしまったらそれが移動開始のトリガーになってしまい滑走開始激突確定になるのがしばしば。最終的に振り出しに4回も戻された後粛々と煽りまくってくるコメント欄を見なかったことにしながら全集中で突破。今に至る。
>おつ
>目が怖かったっすね…
>こんな顔だったよな→( <θ>ι<θ>)
>ぶっ
>音声入力ニキが誤爆してる…………
「そんな顔してないから……ないよね?」
震える子鹿のような顔でクエスチョン。ストレスが極限に達すると変な顔になるのは稀によくあること。酷い時は髪が逆立って金色になる(※要出典)。
>しとったで
>[してましたよ]
>言い逃れはできないんじゃあないかなぁ
「嘘でしょ……」
ただしシェリーに自覚はない。切り抜かれ投稿された後に動画を見ることで気づいている。今回は訓練されていない視聴者がバラしたのが原因だ。まぁ気づいたからといって何かあるわけでもなく懲りないのだが。
>そんなことより異変ですよ異変
>ウルフヨシ!魚ヨシ!
>総長!敵は見えません!
「よーし周囲を警戒しつつ微速前進っ!」
容易く流されて本題へ。氷壁の巨大生物は生き絶えているし、目前ではウルフが吠えているのだから今回も問題なく進めそう。
>不意打ちされたらいいのに
>親方!空からウルフルズが!
>人間じゃねえか!
「古いってww」
笑いながらも視線は前方に。右の岩、ヨシ。左の岩、透明。奥の……待った。
「カエル消えてんだけど…っ!?」
殺気。類稀なるシックスセンス=サンを発揮しシェリーは連続側転。舌の長いアンブッシュを退けたところで今回の異変とご対面。
>!?
>避けれんだそれ
>やっぱシェリー天眼持ってない?
「持ってたら苦労はしない!」
>[エルダーフロッグ。寒く長い氷河期の中、氷岩に閉じ込められながらも生き抜いたアイスフロッグが進化した姿。氷との親和性が上がり低体温の中でも十分に動けるようになったそれは、不自由な氷上で戸惑う獲物らを刈り取る老獪な暗殺者のよう……]
「説明あんがとね!」
無論妄想設定ではあるがこのフロッグの性能は間違いなく脅威。大きさはシェリーよりも二回り、三回り、あるいはそれ以上だし、飛ぶし舌は連発してくるし。流石に分が悪いと武器を変更……銀の短剣に。
>用意してたんか?
>多分思考入力
>それはやめとけ
>色々な入力方法があって多様性を感じるまるでアッハイ
「だーかーらー、戦いたくなかったの!」
避けて、避けて、舌を切りつけ……るのを諦めまた避けて。なんとか近づけても対空技を放って下がられる。見えないはずなのに逆立った金髪が見えてきた。シェリーも覚醒するしかないのだろうか……そんなスキルもシステムもないが。
>オファニエル縛り大変ですね^^
>草
>煽りの内容が絶妙
「ほんと攻防一体系の高速移動手段が欲しい…!」
相棒の不在に悪態を吐きつつそろそろ動きが読めてきたので舌をパリィし氷裏へ。魔導杖を召喚。当然のように複製で詠唱開始。
「求むるは火、撃滅の焔なり──」
>当然のようにダブルスペルですね…
>魔法って噛むから難しいよね
>ろくでなしはちゃんと詠唱しろ
魔術杖より二つの炎が生まれ、出て、集い、纏まり。シェリーの周囲を周回して魔力を充填。放たれる事を望んで待機。狙うは一瞬。
「『火球』っ飛べ!」
シェリーを見失ったフロッグはウルフへも舌を伸ばしていた。余所見など油断するにも程がある。唯一の弱点である『舌を伸ばした瞬間』に火球二発という最大の瞬間火力を叩き込む!
>解説動画そのうち作れよほんと
>説明されてもわからんぞ
>多分ニュータイプの言語で書かれてる
「よ──っし命中っ!」
火球らは見事誘導追尾され着弾。舌は焼け焦げ文字通りの口内炎を引き起こす。ひっくり返る勢いで怯んだのを見てシェリーは俊足。
「やっほークソ蛙死ねやボケぇ!」
>スピード感がありますね…
>ここ突き出しRTA
>おつまみシェリー
顎下に短剣をブッ刺し自分を固定。魔導杖を再び両手剣に変え天に掲げ、重力を利用して力強く振り下ろす。
>重量斬り好き
>どかーん!
>痛そうな描写はポリゴン隠蔽されるのよき
「まぁ音は大概そのままなんだけどね!」
ゴキゲンに脳内再生オファニエル。カエルは柔く一刀両断。呑まれたウルフらもまとめてポリゴン爆散。先への道は開かれた。
「よしよし次々〜♪」
>戦闘自体はスピーディだよな
>見つけるのが簡単な異変が難しい
>だからこそ地味異変が効くんですね…
「おう私のことを煽ってんな!?」
自意識過剰になりながらも第八層。とりあえず一見して異変発見。
「狼出勤サボってんな」
>なるほどね
>これいつものパターンでは?
>俺もそう思うな
狼がいない。氷岩の中にはカエルがいるままだし、壁の中には巨大生物がいる。けれど狼はいないし鳥も飛んでいない。とりあえずこういう時はさっさと進むに限る。
「うんだから走ろ『BaKyAAAAAAAA!!!!!』っるっせぇーーっっ!!??」
流氷をカチ割って川の中から現れたのはクソデカい蛇。シーサーペント、或いはリヴァイアサンと呼ぶべきか。咆哮を上げ威嚇した後、シェリーに向けてその顎門を開いて……
「ぁぁぁブレスやめろぉぉぉ!!!」
反応する前に駆け出していたシェリーの背面にウォーターブレスがブッ刺さる。氷の大地が水圧で切断されていく。多分当たったら死ぬ。
「なぁーんでこのゲーム私を走らせるの多いんだよーっ!」
>異変だからな
>敵からは逃げろってことだよ
>そうかな…そうかも…
全力疾走。青い槍兵が如き素晴らしきランニングフォームで回避に次ぐ回避。見る人が見ればスカウトが飛んできそう。
「よぉぉぉっし逃げろ逃げろぉぉ!!」
滑走で速度を維持しながらの跳躍の応用で細切れなステップを踏む。まるで雷神のようにジグザグな経路だが相手の攻撃を避けるには最適。AIが追いつけない速度で逃げ続ける。
>戦わないんすか?
>逃げるなぁぁぁ!!卑怯者!!!!
>まぁシェリーは本能的に長寿タイプだからな
「あんな即死ギミックの塊に構ってられないってぇぁっぶぶぅぅっ!」
>カット入りまーす
>お客さん髪長いっすね!
>ウザい美容師やめてクレメンス………
「あはは、行きつけだともう会話にも慣れたもんだよ」
まもなく次の階層といったところで膝を折り、リンボースライドで肩目掛け飛ばされた水刃を見送り。そのまま第八階層から離脱。シェリーは最終階層へ。
>配信者は陽キャ………配信者は陽キャだからなぁぁ……
>隠のオーラを感じる
>ざーこざーこww
「はいはいちゃんと画面は見ててよ!」
走って走って走り抜けて。とりあえず武器はミスリルブレイカー。シェリーのプレイは大剣巨撃主義。パワーイズジャスティス。ダメージフロムウェイト。
>了解!
>ガバを見逃さないようにしておくね
>シェリはんの一挙手一投足は録画しとるから安心し
「うん頼んでるとはいえ堂々としたストーカー宣言ありがとね!」
>す、ストっ!?
>百合ィ?
>そうだよ
>ちgwこんのくぁwせ
「焦ってて可愛いねー、っとこれはまた……」
表現ダンジョン最深部。待ち受けていたのは巨大な……牙を持った巨大な象、いいやマンモスか。氷雪を身体に纏い、近づく者らを容赦なく踏み潰さんとするこのダンジョンの主に相応しい出立ち。
「弱点は脳震盪!異論は!」
>ないです
>お前が思うならそうなんだろうお前の中ではな
>[シェリーの かっこいいところ 見てみたい]
「オーケーミーシャ、サクッと殺るから!」
マンモスは法螺貝が如き重低音を響かせた。それに合わせてシェリーはコンソールを開いてタイマーセット。つまりRTAの始まりだ。
「マンモスぶっ殺しRTAはーじまーるよーっ!」
>レギュは両手剣な
>変な動きも使用可能
>Any%って、こと…!?
まずは振り下ろされた鼻をジャスト回避。衝撃は両手剣の腹で地面何がしながら体を捻って鼻の上へ移動。その際に切り付け斬り心地を確認。問題はなさそう。
「使っていいなら、私は遠慮しないからね」
そのまま前方へ走りながら鼻の角度を確認。走り幅跳びの要領で突っ込んで、連族跳躍で翔け登る。斜め前が故に足裏の調整も容易。
>うっわぁ
>短時間でカカッといったな
>こーれ裏で相当やってますよ
「練習しなきゃ、本番で使えないからねぇ!」
そのままのコブように膨らんだ頭部をも追い越して更に上へ。白い太陽は階層中の氷を、ミスリルブレイカーを輝かせ神秘的な雰囲気を漂わせる。
>黄金のガバに誓って
>指輪は求めなくていいから…
>すでに女王本人なんだよなぁ
「いぇーいアイアムクイーンっ、バスタァーーッ!」
キラッとウインクもキメつつ狙いも確定。眉間のど真ん中一直線で一撃必殺。脳を破壊すれば大概の生物は死ぬから。両手剣を空中で振り回し加速、回転。三半規管を生贄に火力を増幅。
>その重心変更is何
>なんか…こう……バグ?
>草
「死ねぇぇぇいっ!」
ドタマへバッコォォォンッと最大火力を叩き込んでフィニッシュ、タイマーストップ。タイムは余裕で1分切り。満足のいく結果にシェリーは着地してVサイン。
「どうどう、かっこよかったでしょ?」
>\[いつものシェリーでした]/
>素材ほくほくで助かるわ〜
>ボスといえども呆気ないのぉ……
「ふふーん、でしょでしょー♪」
ニッコニコの笑顔へ鍵の開いた宝箱へ移動。混じり気のない可愛さを見せつつ開封。中身は……片手剣。手に取って刀身を眺めてみる。
「ふーん、冷たそうな剣じゃん」
それは持ち手から先が永久氷でできた絶対零度の
>ねんがんの アイスソードを 手に入れたぞ!
>ころしてでも うばいとる
>このゲームに属性相性は……あるか
「アンデッドに銀が効くのと同じだろうねー。それじゃ次も頑張ろー!」
また視聴者の間で殺人事件が起こっているが気にしない。これにて氷原ダンジョン踏破。シェリーはエリートにランクアップし、例によって元の空間へと送り返されるのだった。
元々2話構成でグリッチと武器評を交互に入れる予定だったから3枠目に何入れるか全く思いつかないです
意見あったら教えてください




