自己愛
楽な方へ逃げるな。
なりふり構わず血肉を啜れ。
家畜に紛れて揺らぐことのない信念を磨け。
甘えるな。
最悪を想定するんだ。
疑え、この目に映した者共の真実を忘れるな。
綺麗事って所詮は貧乏人の理想でしかないんだよ。
己を守れる者は己だけだ。
戦え、俺は男だろう。
優先するべきものは既に分かっている。
細かいことはいい。
この命を賭したとしても。
燃え尽きることのない確固たる自我を保ちつつ、
胸の内には何者も入れるな。
大丈夫。
例え屈辱に塗れようとも、この培ってきた炎が消えることはない。
泣かないでいいよ。
俺だけは、俺のこと、分かっているから。
嫉妬の波も乗りこなせ。
クソ煩わしい羽虫が。
見下しは必然的に拒絶へと移り変わっていった。
恵まれたが故の怠慢か。
一体何が、どれが、それのどこが、普通と言えるのか。
狂っているのは俺の目の方か。
齧ったパンは無味無臭。
際限なく欠落した曖昧な質感に反吐が出た。
いつまで囚われているのか。
頭では分かっていても、
何重にも絡まった縄が解けることなく、首を絞め続けている。
ずっと、最悪だったよ。
人の形を模しただけの屑が、肉を、悪事を、要求を、美化して、正当化しながら、傲慢に貪っている。
理想と実情のズレに、無垢だった幼子は致命傷を負ってしまった。
手繰り寄せた意味すらも呪いに思えて、人間不信に陥った。
俺と言う名の虚像を信仰する愚か者共に集られ、彼らの人生やらを考え始めた途端に、一人で抱えるには重過ぎる責任を感じてしまって、影響を及ぼしたり、介入したりすることに凄まじい危機感を覚えた。
この身一つ、とてもシンプルな話に思えたが、
操作する己が全てを拒んでいる事実に、弁明する気も消え失せ、心は容赦なく潰えてゆく。
ねぇ、何の不自由のないクソが簡単に言うなよ。
狭間で口を結ぶ幼子は耐え忍ぶ以外の方法を知らなかった。
複雑に絡み合った何もかも、必然的に簡単な解決方法へと自我は傾いてゆく。
無駄を挟むことのない純粋な愛が欲しかった。
この失望は己自身の生命をも執拗に蝕んでいる。
醜い。
俺はお前の自尊心を満たす為の道具じゃない。
理想も、期待も、押し付けるな。
俺のこと、知っているようで、何も知らない。
俺のこと、見ているようで、何も見えていない。
あー、そんなもんか、人間って。
くだらんな
ぼーっと、考えながら。死ぬ前に、愛する我が身への思いや通じ合えた者への愛情を少しずつ吐露した。ついでにペンも走らせる。漠然と時間を消費している内に、幾分か落ち着いた。俺が今もいるから、続いている。そんな苦痛を伴う問答が室内を這いずっている。一言、滴り。途方もない年月と共に、脳天から五臓六腑へと風穴を通す。とても口にするのは憚られる情けない言葉。全てが敵に映った。唯一無二の理解者たる己でさえも、命永らえたいのならば戦えと腸を抉った。問題提起?何者でもない俺に、宣う権利はないだろうと。嘲る内心を納得させる何かを欲して、思い知った。俺には誇るべきものがない。