メイドインベントリ
冒険ギルドの裏は広い運動場になっている。
「ここでいい?」
私はギルドの解体人に聞いた。
討伐したドラゴンを渡すためだ。
「だ、出してくれ、ルリさん」
解体人が言う。
”メイド”とは、清らかなる乙女を表現する最上の言葉であり、体現する存在である。
乙女の最上位種である、”メイド”のスカートの中身。
そこは、……神秘の領域だ。
天上の世界、もしくは、桃源郷につながっていると言っても過言ではない(キリッ)。
世の殿方がうかつにのぞき込もうものなら、昇天してしまわざるをえないのだから(キリリッ)。
自分のロングスカートを両手でつまんだ。
「百八あるメイド殺法その17、”メイドインベントリ”ッ」
ヒラリッ
両手でスカートをひるがえす。
一瞬、黒いショーツとガーターベルトが……見えないっ。
ズズウン
私は、スカートの中からドラゴンを取り出した。
視界に広がる、半ばまで首を断たれたドラゴンの死体。
ちょっとした小山くらいの大きさだ。
「ひえええ、相変わらず強烈だなあ」
解体人が肝を冷ましたような顔で言った。
改めて、私はスカートを両手でつまみ、解体人に完璧なカーテシーを返した。
メイド殺法その17、”メイドインベントリ”




