メイド桃色吐息
「はあ……」
ルリは熱い吐息を吐いた。
「アレクさん……か」
鉱山都市で一緒にクエストをしてからしばらくたった。
その間に何度か二人でデートに行っていた。
――飛竜商人で、メイ竜騎士……
彼の笑う顔が脳裏に浮かぶ。
「ほう……」
左手の甲にうっすらとメイド紋が輝いた。
辺りにピンク色の空気が流れた。(←「八つ〇村」、横〇正〇著より一部抜粋、キリッ)
わいわい、がやがや
と、にぎやかなギルドの酒場。
実はあまり広くない。
その一角にいつものようにルリが座っていた。
「おいっ」
「ああっ」
「うちのメイドさんが色っぽいなあ」
「最近、彼氏が出来たんだろう」
「なんとっ」
「美人だけどお付き合いしたくない、メイドさんランキング上位のルリさんがかっ」
「きれいだけど残念さが隠しきれない、メイドさんランキング上位のルリさんだ」
「知的に見えて実は脳筋な、メイドさんランキング上位のルリさんだよ」
「俺の許しもなく、だれだあっ」
「お前はルリさんの父親かっ」
「最近街に来た飛竜商人だよ」
「あっ」
「ああ……」
「メイドゥーン王国出身の……」
「メイドグッズしかあつかっていない……」
「たまに自分自身がメイド服になる……」
――あの変〇かあ
妙に納得したような、残念なような、微妙な空気が流れる。
そのとき、
「……あなたたち、好き勝手言ってくれているわねえ……」
――ひっ
ルリの地獄の底から響いてくるような声が、ギルドの酒場に響いた。




