メイドタンデム
街道にあらわれたロックワームの群れ。
災害の原因はロックワームだったようだ。
ルリさんと二人で追い払った。
インベントリにメイ竜騎士の装備を収納する。
ゆったりとした商人の格好になった。
「大丈夫でしたか」
自分はルリさんに声を掛けた。
まわりは、ロックワームに耕された?山の街道。
足場はかなり悪い。
「ええ、助かりましたアレクさん」
「あなたは、……強いのですね」
スッとこちらを探るような目。
「いえいえ、言うほどのものでは」
彼女からの視線を外した。
「え~と、ルリさん」
山道の端は厳しい崖になっている。
いくらルリさんクラスのメイドでも徒歩で越えるのは危険だ。
「どうですか、街まで飛竜に乗っていきませんか?」
ジラント(飛竜)の背中には補給物資をのせた鞍。
ルリさんのスカートの中に物資を入れれば、二人乗り(タンデム)が可能である。
「そう……ですね、また街道にロックワームが出るかもしれませんね」
ルリさんが顎に指をあてて考える。
自分は静かにうなずいた。
「……分かりました乗せていってくれますか?」
「はいっ、よろこんでっ」
~~~~やっ、やったああ、ルリさんと、メイドさんと、あこがれのタンデム飛行だあああ
メイ竜騎士が一度はあこがれるメイドさんとの空の旅。
くううう
喜びをかみしめる。
「?」
少しルリさんが怪訝そうな目をした。
「ささっ、どうぞ」
自分の後ろの鞍にルリさんが横すわりする。
「腰に腕を回してください」
腰に感じるメイド服のスカートのフワリとした感覚。
背中にルリさんの肩が軽く当たる。
甘い香りがした。
八ッ
――おいおい、考えてることがばれると嫌われるぞ
と振り向いてこちらを見ているジラントの目がそう物語っていた。
キリッ
緩んでいた顔を引き締める。
「ではいきます」
ブワリ
バサア、バサア
翼の端に軽量化の魔術陣を光らせながら、ジラントが羽ばたく。
崩れた街道から厳しい崖に飛び出した。
「ひゃあっ」
飛竜で空を飛ぶのは始めてなのか、ルリさんが可愛い声を出す。
「気分が悪くなったり怖くなったらすぐに言ってください」
「わ、わかりました」
◆
厳しい山々。
崖に飛び出すように作られた街道。
下を見ると崖の下には、川の流れが微かに輝いている。
遠くの山の斜面には、ところどころ薄い紫色の霞がかかっていた。
ジラントは、アレクとルリを乗せて渓谷の真ん中を滑るように飛ぶ。
壮大な自然の風景に、
「きれいねえ」
ルリは思わず声を出していた。
「ふふ、少しつかまって下さい」
ヒュッ
ジラントの体を傾け崖下まで一気に高度を落とす。
「きゃっ」
ルリが可愛い悲鳴を上げた。
ザザアアア
ジラントの足を河の水面につけた。
水しぶきが後ろに白い線を引く。
「後ろを見てください」
「まあっっ」
白い線の周りに、丸く小さな虹が出来ていた。
「……きれい……」
ルリの頬が少し赤く染まる。
背中越しにアレクの顔を見上げた。
「どうです」
アレクがルリに優しく笑いかけた。
「とてもきれいよっ」
キュッ
ルリが、アレクの腰に回した腕に力を入れて、体をさらに寄せた。
「うっ、もう一度行きましょう」
アレクの声が上ずった。
「はいっ」
二人は、何度か川面に出来る小さな虹を楽しんだ後、鉱山都市に向かった。




