メイドカーテシー
アレクは、なるべく音を立てずに静かに、ギルドの扉を開けた。
「こちらにメイドさんはいますか」
一瞬、ギルド内にいた人たちに緊張が走る。
商人の姿をした自分を見て、何故かほっとしたような雰囲気になった。
「ルリちゃん、今度こそメイドさんでないお客さんだよ」
――メイドさんでないお客さん?
――そんなに沢山のメイドさんがいるのか
少しワクワクした。
「むむっ」
少し離れた所にあるテーブルで、ギルドの職員とお茶をしているメイドさんを発見。
「ルリにお客さんのようね」
ギルドの職員だ。
「……? 何か御用ですか?」
怪訝そうにこちらを見てくる黒い瞳。
黒髪のひっつめ髪がエキゾチックである。
西方の主流は、金髪青い目。
祖国ではあまり見ない色だ。
「よ、良い」
少しの間、凛としたメイドさんの姿に見とれた。
「……ちょっとというか大分あやしくない……」
「……た、たしかに……」
二人の小さな声。
「あっ、いえいえ」
「百八あるメイド殺法その0、メイド立ち(スタンディング)」
自分の知る、相手に対して最も敬意を表す姿勢を取る。
例え、今は商人の姿をしていても一柱のメイドになるのだ(キリツ)。(←一柱:日本の神様を数える単位)
ジラントに止められているので、メイド体型でメイド服を纏うのは自粛しているぞ。
「えっ」
「メイド……」
「男……」
何故かギルドの中の人たちがざわめく。
ふふふ、メイド姿の自分を幻視しているのであろう。
「はっ」
黒髪のメイドさんが何かに気づいたように、テーブルの横に立ち同じ姿勢に。
敬意には、敬意で返す。
――ふふやはり、良い
美しい姿勢だ。
ではっ、いざ勝負っ。
「「百八あるメイド殺法その1、”メイドカーテシー”ッ」」
自分たちは、同じタイミングで完璧なカーテシーをした。
「……うわあ」
職員の女性の声だ。
――ふふふ、両手でつまんだエアロングスカート
180センチ近い身長。
大柄な体格。
エアメイド服。
自分のカーテシーは、そう、まさに、”咲き誇る大輪の花”のように見えているはずだ。
対して、目の前にいる女性は、
純白のヘッドドレス。
真っ白いエプロンとシックな紺色のメイド服。
白い指がスカートの裾をつまむ。
「ほうっ」
自分の感嘆のあつい息。
まるで、一輪の、”凛と咲く百合の花”のようだ。
「……あなた、ヤルわね……」
メイドさんの小さな声。
自分は、その声に応えるようにカーテシーの姿勢を崩さない。
クスリ
小さく笑うメイドさん。
お互い何か通じ合うような空気が、周りに漂う。
「なんだこれ」
隣にいたギルドの女性職員が、何とも言えない声を出した。
メイド殺法その1、”メイドカーテシー”




