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頭に「か」のつく映画といえば?

 知ってました? 


 亀の甲羅って、背骨と肋骨が変化して出来たもので、そこには神経も血管も通っているので、甲羅が傷つけば痛みもするし、血も出るんですって。

 カタツムリの渦巻きの殻と違って、それを取ってもハダカのまま生きていける、ってワケではないらしいですよ。

 

 世界最大のカメは2mを越えるとか、5月23日はアメリカの非営利団体が定めた「カメの日」だとか、亀の雑学をお送りしたところで、頭に「か」のつく映画、今回は……。


「亀は意外と速く泳ぐ」を紹介します。


 2005年の邦画。監督・脚本は三木聡、出演は上野樹里、蒼井優、岩松了、ふせえり、松重豊、要潤ほか。


 あらすじはこちら。


 主人公は、片倉スズメという23歳の平凡な主婦です。


 夫が海外に単身赴任中で、いつも家にひとりです。

 毎日、何も起こらない生活で、退屈をもてあましています。

 

 夫からの電話は、「ペットの亀に餌をやったかどうか」という心配ばかりで、何度も確認してくるので少し辟易しています。


 そんな中、親友の扇谷クジャクから電話がありました。


 クジャクとは、生まれた病院が一緒の幼なじみです。

 久しぶりに会うことになり、待ち合わせ場所の喫茶店へ向かう道中、石段の手すりのポール部分に貼ってあった「スパイ募集・委細面談」の貼り紙(プリクラみたいなサイズですごく小さい)を偶然見つけたスズメ。


 クジャクと会って話し、そこそこの味のラーメンを食べて別れた後、クジャクのダイナミックで自由な生き方と比べて、自分はなんて平凡でつまんない人生なんだろう……と悩んだスズメは、さっきの「スパイ募集」の貼り紙を思い出します。


 非日常に飛び込んでみるつもりで、書かれていた連絡先に電話してみると、すんなりと会うことになりました。

 安アパートの一室の事務所で、「ある国のスパイ」だというクギタニシズオ・エツコ夫妻と面談し、「平凡なところがいい。スパイ向きだ」と褒められたスズメは、活動資金としてポンと500万円を手渡されます。


 その日から、「何か指示があるまで、スパイとして、平凡な主婦を演じてこの国に潜伏する」ことになったスズメ。昨日までと同じ日常生活を送るにしても「スパイとして、普通の主婦を演じている」と考えると、なんだかワクワクしてきます。


 スパイになった記念として、店先でサングラスを買ってみます。かけてみて「うん、これでスパイっぽい」と悦に入っていると、突然エツコから電話がかかってきます。

 どこかで監視されていたのです。スパイっぽい小道具を買って、スパイっぽくしたことを咎められてしまいました。(何回スパイって言う気だ)

 とにかく、指令が来るまでは、静かに暮らし、目立っちゃダメ、と念を押されます。


 近所の豆腐屋の主人や、そこそこの味のラーメンを出すラーメン屋(なぜか食後に出すエスプレッソが旨い)、商店街の身近な人たちも実は、クギタニ夫妻と同じく、潜伏しているスパイでした。


 平凡を演じて、目立たない生活をしていたはずが、小さなトラブルに巻き込まれてニュースに取り上げられ、目立ってしまったスズメは、スパイの動きをマークしていた公安からも目を付けられる騒ぎになってしまいます。


 そんな中、商店街のスピーカーから「南国モードで疲れたアナタをお出迎え。グランドキャバレー<ファイヤーダンス>は冬でも熱気ムンムン」とキャバレーの宣伝の放送が入ります。


 実は、これは緊急事態を告げるスパイ同士の暗号なのでした。

 緊張感を帯びるスズメ。そして仲間のスパイたちも慌ただしく動くことに。

 果たしてどうなってしまうのか……といった感じのコメディです。


 スパイという言葉が頻出しますが、シリアスな要素はほぼありません。スパイを扱った作品でありながら、「007」シリーズのような緊迫感が微塵も見られず、逆にスパイが主人公の映画で、ここまでのほほんとしていていいものか、と不思議になるほど、まったりとした日常を描いています。


 監督・脚本の三木聡氏は、この映画のあと、テレビドラマ「時効警察」シリーズや、「熱海の捜査官」を手がけました。これらのドラマを知っている人なら「あー、あの感じね」と雰囲気が分かると思いますが、想像のとおり、あの感じです。

 ヘンなキャラクターがいっぱい出てくる、ホントに、ゆる~い空気に満ちた、脱力系コメディ。


 コメディではありますが、見終えたあと、一抹の寂しさや、絆の大切さを感じると同時に、なんだか妙に、そこそこの味のラーメンが食べたくなります。


 最近、物忘れが増えてきた私にとっては、作中である人物が発した「生きるってことは、思い出せないことを増やすことかも知れないねえ」という言葉に、深く共感するのでした。


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