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第一王子の誕生日パーティー①

そして殿下の誕生日パーティー当日になった。



私は舞踏会用のドレスに着替えて王宮に登城していた。

もちろん彼へのプレゼントも持ってきている。



(……何だかドキドキするわね)



婚約者である私は殿下と共に入場するので、控室へと通される。

プレゼントを渡すということもあって、いつもよりだいぶ緊張している自分がいた。



「フルール公爵令嬢、こちらです」



殿下の侍従に案内され、彼のいる部屋へと向かう。

私は侍従の後ろについて歩いた。



しばらくして、殿下が待つ部屋へ到着した。



「殿下、フルール公爵令嬢がお見えです」



侍従が部屋の中に向かってそう言い、私はそのまま中へと通された。



「殿下、失礼しま――」




(…………ッ!)



部屋の中に入った私は思わず固まってしまった。

中には髪を整え軍服を着ている殿下がいたからだ。

いつもとかなり雰囲気が違う。



(……久しぶりに見たわ、殿下の正装)



前世ではよく見た光景だが、今世では久しぶりだった。

それと同時に思い出すのは前世の彼に対する私の感情。



(そうだ、前世の私はこの姿の殿下が一番好きだったんだ。前世で見た殿下よりはかなり幼いけれど……やはりかっこいいわね)



殿下はオルレリアン王国の男性の中で最も美しいと言われていた。

眉目秀麗で文武両道な誰もが憧れる王太子殿下。

それがグレイフォード殿下だった。



「……」



私はしばらくそのまま見惚れてしまっていた。



「……何をそんなにじろじろ見ている?」

「……!」



私がぼーっとしているとそれを不審に思った殿下から声がかかった。



「えっ、あっ、申し訳ありません……」



私がそう言うと殿下は私からぷいっと視線を逸らした。

いつも通り無愛想ではあるがもう気にしないことにした。



(……プレゼントを渡すなら今よね)



私は今がチャンスだと思い、懐からリボンがかけられた小さな箱を取り出す。



「殿下、私からの誕生日プレゼントです」



殿下はそれを見て眉をひそめた。



「おい、プレゼントは必要ないと……」

「受け取ってくださいッ!」



私は殿下に無理矢理その箱を持たせた。



「お、おい……」



殿下は不満そうな顔をしていたが渋々受け取ってくれた。



「開けてみてください、殿下!」

「……」



殿下は私の言った通りリボンを解いて中を開けた。

そして見事に固まった。



「…………なんだこの歪な刺繍は」



殿下が中に入っているハンカチを見ながら言った。



(や、やっぱりそうなるわよね……!)



刺繍の出来は正直イマイチだった。

人名はカーブが多くて初心者である私にとってはかなり難しいということに途中で気付いたのだ。

それに殿下の名前は長い。

実際、これを作るのにかなりの時間を費やした。



(だけど大事なのは出来じゃないわ!気持ちよ!)



「殿下の名前です!とっても素敵なプレゼントでしょう?」

「……」



私のその言葉に殿下は黙り込んだ。

彼はハンカチを手に持ってじっとそれを見つめている。



(き、気まずい……!)



気に入らなかっただろうかと不安になった。

元々好かれていないのだからこれ以上嫌われるのは避けたいところだ。



私はすぐに殿下に謝罪しようと口を開いた。

しかしそれよりも先に声を出したのは殿下のほうだった。



「……フッ」



(え……?殿下が声を出して笑った……!?)



何と彼はハンカチを見て声を上げて笑ったのだ。

彼のこんな姿は前世でも見たことがない。



「殿下……?」



私は心配そうに殿下を見た。

すると彼は笑いながら言った。



「あぁ、悪い。まさかお前がこんなものをくれるとはな」



(意外だって言いたいのかな?)



私は殿下のその言葉がどういう意味なのかが分からなかった。

しかし、その次に彼が発した言葉は私をさらに驚かせることとなる。



「……………ありがとう」

「!?」



(殿下が私にお礼を言った!?)



一瞬聞き間違えかと思った。

私はそのことに驚きながらも言葉を返した。



「い、いえどういたしまして……」

「それとお前、刺繍をちゃんと一から学ぶべきだ」



(よ、余計なお世話よー!)



殿下はそう言って私のハンカチを箱に戻し、侍従に預けた。



「殿下、そろそろ……」



箱を受け取った侍従が遠慮がちに殿下にそう言った。



「おい、そろそろ行くぞ」



それを聞いた殿下は私にそれだけ言ってさっさと会場に続く扉へと歩いて行ってしまう。



(いつものことだけど会場までエスコートもしてくれないのね!)



私は心の中で悪態をつきながらも走って殿下について行った。

走るだなんて未来の王妃としてはいけないことだが今は仕方がない。

私を咎める者など誰もいないのだから、少しくらいはいいだろう。



「待ってくださいよ、殿下ー!」



殿下はそんな私の声を気にも留めず、先を歩く。

私は彼に追いつけるよう、早歩きして後をついていった。



会場に続く扉の直前で私はようやく彼に追いつくことが出来た。



「……」



私は彼の横に並んで立ち、殿下の顔をじっと見つめてみる。



(何だろう……何か……)



彼がいつもより上機嫌に見えるのは私の気のせいだろうか。



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