小さな王子様と私の家族。①
「ラッザは可愛い子ね!」
「お母さん……だらしない顔をラッザに向けないで」
「ふふ、嫉妬しているの? メリッサも可愛いわね! はぁ、私の子供たちは凄い可愛いわ!!」
「息荒くしないでくれる?」
お母さんがにこにこしながらラッザのことを見ていて、それでいて息を荒くしている。
あの日、私がラッザと心を交わしてから一年が経過した。
私とラッザは家族に私たちのことを話した。だって私の家はともかく、ラッザの家がラッザに婚約者を作ったら困るもの。
ラッザのご両親は驚いた顔をしていたけれども、私とラッザで説得したら……まぁ、私たちが真剣なのを知ってラッザが大きくなった時にその気持ちが続いていたらってうなずいてくれた。
私の家族たちは、全然反対しなかった。むしろ喜んで応援してくれたのは、お母さんとお父さんも年の差結婚だからというのもあるだろうか。あとお母さんに関しては子供に恋人が出来るのが嬉しいみたいで、すごく興奮していた。
……というか、私たちに恋人が出来れば自分に子供が増えた気分にお母さんはなっているみたい。
ラッザを家に連れてくることも多くなったのだけど、お母さんはラッザを見てにこにこしていた。
それにしてもラッザって、お母さんと話していても私のことを優先してくれているというか、私のことを見てくれていて……そういうのが好きだなって思った。
私の家族たちともラッザが仲良くなってくれて嬉しい……のだけど、お母さんは息を荒くしすぎだと思う。
「ねぇ、ラッザ。お母さんのことうっとおしいって思ったら言っていいからね?」
「え、マリアージュ様のこと、うっとおしいとは思わないよ?」
「天使か! 天使よね。素直で可愛いわね」
私の言葉に無邪気にラッザが答え、そしてお母さんが興奮している。
ラッザはなんというか、優しいのよね。お母さんにもそうだし。
「私のグランも子供のころ、本当に最高に天使だったけれど、ラッザも天使だわ。やっぱり小さい子ってのは天使よね」
「お母さん、変態っぽい」
「マリアージュ様とグラン様も年の差なんだよね? 何か大変なこととかあったの?」
そういえばそうよね。
お母さんとお父さんの関係って、私たちと逆なんだよね。
「うーん、いや? 私は全然。というか、私はなにも苦労していないし。苦労したのはグランじゃないかな。色々言われてたっぽいし。周りって本当にうるさいよね」
「……あー、戦争の報酬でお母さんと結婚したいって申し出てきたんだっけ。大人になったお父さんが」
「うん。びっくりした! いやー。本当にグランが私のこと好きだとか全く考えてもなかったし」
「でもお父さんは昔からお母さんのこと好きだったんだよね。うん、私たちのことで参考にするのならばお父さんに話を聞いた方が分かるのかもね」
お母さんはお父さんが子供のころから英雄だった。それこそ私と同じ年ごろからずっと英雄として生きている。そして身体は一切衰えていない。そしてそんな英雄のお父さんはお母さんのことが好きで、それで結婚したんだよなぁ。
ふふ、私とラッザが結婚とかになったら、みんなお父さんとお母さんのことを思い起こしたりするのかな? その当時、両親の結婚は噂になっていたって聞いてるし。
「そうなんだ。なんかきっちり認めさせて、結婚させるのってグラン様もかっこいいね」
「ふふ、そうよ。私のグランはかっこいいわよ」
「僕もメリちゃんと結婚するためには頑張らないと」
気合を入れるラッザの言葉に私は胸がきゅんとした。だって、嬉しいこと言っているんだもの。
私と結婚したいって。
一年たってもそういってくれていることが嬉しい。
ラッザは同年代の子たちとも交流を持っているからそういう子たちにひかれることもあったら……って思うこともあるけど、私のことを好きだっていってくれている。
私も婚約を申し込まれることとか、いろいろあるけれどラッザしか見えてない。
なんだろう、私もマリッサもだけど一度好きになったら一途な方なんだと思う。
でもラッザはまだ社交界デビューをできないから、一緒にパーティーでダンスも出来ないのよね。いつか大きくなったラッザとダンスを踊れたらきっと幸せだわ。
「私もラッザにふさわしくなるために頑張らないと」
私にとってラッザはとっても素敵な男の子なの。
優しいし、絶対将来もっと素敵になると思う。そうやって素敵になったラッザと、結婚する時にお似合いだって言われたら私は嬉しい。
逆にお似合いじゃないって言われたらへこんじゃうもの。いや、まぁ、周りの評価なんてぶっちゃけた話どうでもいいのだけど……でもお似合いじゃないって言われるより、お似合いだって言われている方が断然いいわ。
私はお母さんとお父さんほど、英雄になれるだけの器はない。
それでも出来る限りのことはやっていきたいって思っている。
「ふふ、互いに思いあって頑張ろうとしていて可愛いわね。強くなりたいなら私が幾らでも鍛えてあげるからね?」
……そしてお母さんは私たちの会話を聞いて笑った。