小さな王子様への恋心。
「メリちゃん、こんな感じ?」
「そうよ、そういう感じ。やっぱり素振りは大事だもの!」
「それにしてもメリちゃんって、剣を振るっている時は雰囲気が違うね。とってもかっこいい!!」
「ふふ、ありがとう。ラッザ」
今日はラッザに訓練をつけている。
ラッザの両親は私が剣をたしなむのに驚いていた。まぁ、私もマリッサも剣はそこまでたしなんでないものね。そもそも私の弟たちの方がそういうので有名だったし。
そもそも私は両親に比べたら全然なのよね。
お母さんなんて、まるで自分の手足を扱うかのように剣を振るうの。その強さは圧倒的で……だからこそお母さんは《炎剣帝》なんて呼ばれている。お父さんだってお母さんのような苛烈さはないけど、英雄で強いしね。
それにしても今の私は髪を一つに結んで、令嬢らしからぬ動きやすい服装で剣を振るっている。
そう言う私を見ても、ラッザはかっこいいと言って笑ってくれる。
ラッザはまだ幼いし、剣を習い始めたばかりだ。だけれども筋は良いと思う。
将来的にラッザは騎士になるのだろうか? ラッザのお父さんは背が高い。ラッザも背が高くなるのかな? きっと大きくなったラッザはかっこいいだろうななんて妄想をしてしまう。
お母さんは幼いお父さんを引き取って育てて、その時に将来素敵に育つのを楽しみにしていたらしい。……私もラッザに似たような気持ちを抱いているかと思うとちょっとだけ何とも言えない気持ちになった。
一生懸命剣を振るうラッザは、とても可愛い。
まだまだ子供で、これからどんな風に成長していくのかとても楽しみだ。
私とラッザは時々会って、こうして剣を振るったり、お茶会をしたりしている。
もちろん、私は仮にも英雄の娘なので他にも交流を持たなければならない人もそれなりにいる。お母さんとお父さんの知り合いたちや、その子供達。あとはマリッサに付き合ってマリッサの大好きな騎士様の所へ行ってみたりとか。
そして私に来るお見合いについてとか。……まぁ、大体がうちの家との繋がり目当てだし、私自身のことを好きになってくれているわけでもない。
結局、私は英雄の娘という立場は私にとって切り離せないものだ。
――それでも、私は自分自身を見てくれる人が居ればなと思う。
あとは幾ら私自身のことを好きでも、私にとって好きな人じゃないと意味がない。……うん、そんな風にどうしても思ってしまう。
私はどういう人が好きなんだろう。
私のことを大切にしてくれる人、あとは優しい人がいいな。
強さは正直、どうでもいいかなって思う。私にとって好きな人ならば、私が守ってあげればいいし。
お母さんも子供たちを強くしようとしているけれど、強さを絶対的にしているわけではない。強いことはそれだけ力だから、なるべく強くなるようにお母さんは訓練をつけはするけどね。
私も自衛出来るだけの力は持ち合わせているし。
特に魔物とかが多いエリアに行くとそういう力を持ち合わせていないと大変だもの!
そんなこんな考えながら、ラッザと一緒に過ごしている。
ラッザと過ごす気持ちはとっても楽しくて、何だか自然体で居られて、凄く穏やかな気持ちになれる。
ラッザは私に対してこう……何か求めているわけではないから。
私と仲よくしようって人は、お母さんと仲良くなりたいとか、私の家と交流を持ちたいとか、そういう人たちが多い。
そういうのは当然だと思う。
私も誰かと交流を持つ時、そういう風にかえってくるものを期待したりする。
でもラッザは子供だからというのもあるのか、そういう性格なのか……、私と仲よくするからこそかえってくるものに求めていない。
一緒にいて楽しくて、このまま一緒に居れたらいいなって私はそう言う気持ちが徐々にわいてきている。
マリッサにそのことを言ったら、「メリッサはその子のことが好きなんじゃない?」って言われた。
私はそんな言葉に驚いて……だけれども、凄くしっくりきた。
私とラッザは年の差があって、そういう気持ちを感じるなんてお母さんみたいな変態っぽいのかも……って思ったけれど。
でも年下の男の子だから好きじゃなんじゃなくて、ラッザだからこそ私は好きだとおもっているんだ。
もちろん、大人になったラッザが今のまま育ってくれるかは分からない。
私にとって望まない形に成長することもあるだろう。……でも好きだなって思った気持ちは本当の気持ち。
年の差もあるし、ラッザが大きくなるまでは時間がある。
それまでに私の気持ちも変わるかもしれない。それでも今感じているのはそう言う気持ちだ。
しかし気づいたところで、どう動いた方がいいんだろう?
いきなり年上の私から好きだっていうのもどうなのかな? 気持ち悪いって言われちゃうかな?
お母さんとお父さんの場合だと年下のお父さんの方がお母さんのことが好きだったんだよね。
私とラッザの場合、逆だしなってそんな気持ちになった。