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小さな王子様との穏やかな時間。



 小さな王子様と過ごす時間は本当に穏やかだ。

 ラッザは私のことを、最初はお姉さんと呼んでいたけれど、仲良くなってからは「メリちゃん」と呼んでくれるようになった。


 私はそんな風にあだ名で呼ばれることがとても嬉しかった。

 



「メリちゃんは色々出来て凄いよね」

「私は両親とかに比べたら全然だけどね」

「そんな風に言う必要ないと思うよ? だってメリちゃん凄いもん。もっとすごい人がいるからメリちゃんはそう思っているのかもしれないけれどメリちゃんは十分凄いんだから」


 ……ラッザは何だろう、私が凄い人ばかりいるので比べてしまうけれど……私のことを見てくれているのだ。私自身を見てくれていると思うのが嬉しくて、年下のラッザと話していると何だか妙に自信が溢れていくというか。



 なんだろう、もっと前向きに、私は私でいいんだと思えるというか。

 周りの期待とか、周りが何と言おうか……、そういうのは私にとって何も関係ない事なんだって。



「ラッザと話していると、私、自分は凄いんだって思ってしまうわ」

「メリちゃんは凄いよ?」

「ふふ、本当にラッザがそう言ってくれて嬉しいわ」



 年の差はあるけれども、二人だけのお茶会。

 それがとても楽しい。私は嬉しくて、穏やかな気持ちになって……、何だかこの時間が好きだなと思う。



 でもそういうことを考えて、ラッザは同年代の子とじゃなくて私と話すことを退屈していないかな? と少し不安になった。


 



「メリちゃん、どうしたの?」

「ラッザは私と話していて、退屈だったりしない? 私は凄く楽しいけれど……」

「僕、メリちゃんと話すの楽しいよ。メリちゃん、優しいし可愛いもん」



 ラッザは私よりもずっと年下なのに、私は何だかその言葉にドキッとしてしまう。年下の男の子にこんな風にときめいてしまうなんて、自分で驚いた。


 だって私は……お母さんとお父さんの娘として、色んな人が色んな思惑で近づいてきたけれど……こんな風にときめきを感じたことはなかった。

 でもラッザと一緒に居ると、心が温かくなって……何だか穏やかな気持ちでいっぱいになる。





「ラッザもとってもかっこいいわよ。ラッザは私の小さな王子様だわ」

「じゃあ、メリちゃんはお姫様?」

「ふふ、私はお姫様って柄じゃないわよ」

「ううん。メリちゃんは可愛いお姫様だよ」


 そんな可愛いことを言ってくれるラッザに、私は嬉しい気持ちになった。だってとてもかわいらしいもの。


 こんな可愛いことを言ってくれるラッザを見ていると、嬉しくて仕方がなくなった。




「ラッザは最近何にはまっているの?」


 ラッザは最近何をしているのかなと聞いてみる。



「僕? 僕はね、本を読んでいるの。あとはちょっと剣も習っているんだ」

「剣も習い始めているのね。私も教えようか?」

「メリちゃんが?」

「うん。私も少しは武器の扱いを習っているから」



 私はお母さんとお父さんがああいう英雄だからというのもあって、少なからずそういう訓練を積んでいる。

 大体お母さんが……、自分のことを基準にしているから結構私たちに無茶ぶりしてくるのよね。

 まぁ、第一子と第二子であるマリッサと私がお母さんほどおかしくはなかったから、「昔の私と同じようには出来ないのね」ってそこで理解したっぽいけど。うん、私の弟と妹たちはそのおかげでお母さんの無茶ぶりに付き合わなくてよくなっているのよね。

 そのことを話したらラトたちに感謝されたっけ。


 マリッサと私は、お母さんとお父さんの子供とはいえ両親程強くはないもの。だから前に死にかけたこともあったし。本当に死ぬ前に助けてはもらったけれど。



 だから少しは剣だって扱える。

 私は魔法とか、その研究の方が好きだけれども。



 だからしばらく武器を振るっていなかった。時々、身体がなまらないように鍛錬しているぐらい。

 でもラッザに剣を教えられるなら自主的に剣を振るうのもいいかなって。

 こういう気持ちに私をさせてくれるのも、ラッザがラッザだからだと思う。他の人から剣を振るうように言われたら絶対私は頷かなかっただろう。

 そう思うと、何だかすごく不思議な気持ちになった。




「メリちゃんが剣を使うのかっこいいだろうなぁ。見たい!」

「ふふ、じゃあ今度遊びに来る時に武器も持ってくるわ。一緒にやりましょう」

「うん!!」



 ラッザは嬉しそうに、期待するように笑ってそう言ってくれた。

 私もその笑顔を見て、嬉しくなった。




 家に戻ってから長剣を探していたら……お母さんに「剣を振るうの? 一緒にやる?」とか言われた。

 やらないといったらちょっと寂しい顔をされたので、今度付き合ってあげようかと思う。

 ……私はお母さんを変態だとは思っているけれど、こうやっていつまでたっても無邪気に笑って、その性格がぶれないお母さんのことは尊敬している。

 私の言葉一つで、お母さんは「約束ね」といって嬉しそうに笑った。





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