小さな王子様と一つ下の弟の話 ①
「ラト君も結婚かぁ。なんだかメリちゃんの兄妹、結婚ラッシュだね」
ラッザがそんなことを言うのには理由がある。
――それは一つ下の弟のラトが、結婚相手を連れ帰ってきたからである。
マリッサが結婚して一年ちょっと。
その間に、ソルとケーシィも帰ってきて結婚式をあげ、ラトも結婚するって言いだしたのだ。
うん、結婚ラッシュよね。
「私もびっくりしたわよ。ラトってば、どれだけ周りに迫られても全然関心ありませんって顔してたのに。急によ」
騎士として働いているラトが結婚相手を連れてきたのは本当に急だった。
仕事で遠征している中で出会って、そのまま連れて帰ってきたというのだから私の弟たち行動力ありすぎでは? と思った。
だってソルはソルで、冒険者として動いていたかと思えばケーシィを連れ帰ってきてもう父親になっているし。
ラトはラトで、仕事に行ってきたかと思えば女の子連れ帰っているのよ? そういうことをさらっとやってしまうあたりびっくりよね。
それに二人ともなんか演劇とかになりそうな感じじゃない?
ケーシィは冤罪で貶められていたっていう令嬢で、ラトのお相手は一度結婚をした後離縁された子で元夫たちから貶められていて……うん、というかろくでなしのお相手の家族から自分でためたお金を払って搔っ攫っていくって、我が弟ながらなかなかかっこいい行動している気がする。
「でもペネちゃんはよかったね。ラト君に出会わなかったら大変だったんでしょ」
「そうよ。あのままだと好きでもないずっと年上の相手と結婚させられるところだったの。それも売られるように。その伯爵は元々評判が悪かったから、お母さんが怒って飛び出しちゃったのよね。お母さんからしてみれば可愛い息子の連れてきた義理の娘になる子にひどい真似しようとしていたんだもの、怒るわよね」
ラトのお相手のペネローラは、ラトより五歳年上の令嬢だった。一度結婚していたけれど、白い結婚をしていて出戻りになって、そして家族たちからひどい扱いをされていたらしい。あと元夫とその恋人が「子供が出来ない」とかいろいろいって社交界でペネローラのことを貶めていたので、その噂はフロネア伯爵家が総出で払拭している。
私たちを……というよりお母さんとお父さんを敵に回そうって人はまずいないので、ペネローラの元夫の立場は悪くなっているらしい。いい気味だと思う。
「女の子にひどいことしちゃだめなのにね」
「そうよね。まぁ、他人にひどいことはしない方がいいのよ。本当にペネローラの家族も、元夫も、ペネローラを買おうとした伯爵も問題児だわ。そういう人たちに囲まれてきたペネローラだからこそぜひ幸せになってほしいわ」
「ラト君が幸せにするから大丈夫だよ」
「そうね。私の弟だもの。好きな女の子の一人ぐらい幸せにするはずだわ。大体、幸せにしなきゃラトがお母さんに半殺しにされるのは目に見えているもの。お母さんって、本当に力で分からせる感じだからね。自然体であの調子だからお母さんってすごいって思うわ」
ペネローラは、私よりも年上の女の子だけどなんというか普通の令嬢って感じで周りの人たちがひどい人たちばかりで大変だったんだと思う。
――それにしても、そういう境遇の女の子をさらって攫って救うって……ラトもなかなかやるわよね。
「マリアージュ様は本当に凄いよね! 騎士見習いやっているとマリアージュ様にあこがれている人沢山いるんだ。でもマリアージュ様が社交界にあまり出ないからって、見た目とか性格とか勘違いしている人も多いみたい」
「あー、お母さんはあんまりパーティーとかでないからね。お父さんは着飾ったお母さんをあんまり外に見せたくないみたいだし」
お父さんってお母さんのこと大好きなんだよなね。いちゃいちゃしているなぁと思っていつも見てしまうもの。
着飾ったお母さんをあんまり外で見せたくないって思っているみたいだし。
お父さん自身もそこまでパーティーにも出ないし。フロネア伯爵家だからこそ、そういう立場が許されているんだろうなとは思う。
代わりにお母さんの部下の文官とかがいったりとかが多い。
ラッザと同じ年頃ぐらいの子だとお母さんとお父さんを実際に見たことない人も多いし、あの二人って実際と違う噂も結構出回っているのだ。
「仲良しでいいね!」
「そうね。仲が良いのはよいことだわ。時々目のやり場に困るけどね」
子供の前だろうと、イチャイチャしている時あるもの。
でも私もラッザと結婚したら仲が良い夫婦になりたいわ。周りから見て、仲が良いのが分かる感じ。それでお似合いだって言われたらすごくいいと思う。
なんだか少しずつ近づいてきている未来に、よく妄想をしてしまっているわ!
出戻り令嬢~の後の時系列




