小さな王子様と初めての姪っ子と ②
ソルとケーシィが帰ってきて数か月がたち、子供が産まれた。
私にとって初めての姪っ子の名前は、シィルネ。産まれたばかりの小さな赤ちゃんは、とっても可愛いなぁと思った。
ケーシィに似た赤髪で、瞳はソル似の水色なのよ。
「とっても可愛いわ。ずっと見ていたい気分」
「だよね。メリちゃん。赤ちゃんって可愛い」
私とラッザは産まれたばかりのシィルネを見によく屋敷に戻るようになった。ちなみにルドさんは毎日のように来ていて、ケーシィに「産後でつらくないか?」などと言って過保護になっているらしい。
ソルはケーシィの傍に大体居るけれど、四年も前から一人で冒険者として動いて自立しているのでお母さんたちにお世話になりっぱなしというのも嫌みたい。それでフロネア伯爵領の冒険者ギルドですぐに終わる依頼を受けて金銭を稼いでいるみたい。こういう時ぐらい甘えればいいのにと思うけれど、そういうところがソルらしいと思う。
「メリ姉さんも、ラッザもまた来ていたのか?」
冒険者としての仕事から帰ってきたソルには、そんな風に呆れたように言われた。
「だって可愛いんだもん。王都でシィルネにあげるお土産も買ってきたの」
「……みんな買ってくるから、すごいたまっているんだけど」
「だってお母さんたちにとっては初めての孫で、私たちにとっては初めての姪っ子だもの」
私たち兄妹は初めての姪っ子が産まれたことで、沢山プレゼントをあげてしまっている。だって可愛いもの。
お母さんもはしゃいでいるし、お父さんも嬉しそうにしているし。
フロネア伯爵領は、領主様の初孫だーってめちゃくちゃ盛り上がっているわ。
お母さんとお父さんの資料館では、割引していたりとか、私たち兄妹のことをまとめた特別展とかしているみたい。……なんだか私たち兄妹は両親ほど何も起こしていないのだけど、そういう風に展示されると恥ずかしかったわ。
これから常設にしたいとか交渉されているらしく、まぁ、いいかということで承諾しておいた。だってどちらにせよ、私たちはお母さんとお父さんの子供として記録に残るわけで、どうせ残るならちゃんと残っていた方がいいもの。
「喜んでくれるのは嬉しいけど、こんなにもらっても全部は使えないからなぁ」
「いいのよ。もらってくれるだけで。もう少し大きくなったらシィルネにも好みが出てくるだろうし、好みじゃないものは使わなくても問題ないもの」
まだ産まれたばかりで、シィルネは好みとかもなさそうだわ。でもそれでも赤ちゃんって可愛いのよね。これから大きくなったら私は伯母さんって呼ばれるのかしら。伯母さん呼びもいいけれど、メリちゃんとかで呼ばれたいわね。
ソルは剣の腕前がすごくて、ケーシィは魔法がすごいから、両方とも得意な子になるのかしら? まぁ、その辺は完全に遺伝するわけでもないし、まだ分からないわね。
「メリちゃん、見てみて。シィルネが僕の手握ってくれているの」
私がソルと話している間、ラッザはシィルネを見ていたのだけどシィルネがラッザの指をぎゅっと握っていた。
その様子を見て私は可愛いと思わず頬が緩んでしまう。
ラッザもシィルネも可愛い……。
私はいつかラッザの子供を産めたらってそのことまで妄想してしまうわ。
「メリちゃんと子供が出来たらこんな感じなのかなぁ」
「きっと可愛いわ!! 私、ラッザの子供、沢山産みたいわ」
ラッザも同じことを考えてくれていたことが嬉しくて私は食い気味にいった。ちなみに隣で話を聞いていたソルはちょっと呆れた目で私のことを見ていた。
私が沢山の兄妹の中で育ったから、一人っ子よりも兄妹が多い方がいいなって思っている。
もちろん、子供ができにくかったりもするから分からないけれどそれでも産めるなら幾らでもうみたいわ。
だって大好きな人の子供ならばきっと可愛いもの。
私の言葉にラッザが照れたように笑って、「僕もメリちゃんとの子供沢山ほしいな」って言ってくれてすごくうれしかった。
それにしてもラッザってこういうことをさらりと言うまま大きくなっていて嬉しいわね。
私の兄妹はお母さんがあの調子だから反抗期らしい反抗期はなかったけれど、ラッザも反抗期になったりするのかしら。
私にも素直じゃなくなったら……ちょっと悲しいけれど。
でもラッザはなんだか今のまま大人になりそうな気がするわ。
ただ、素直じゃなくても実は私のことを大好きって示してくれているのならばそれもありだと思うわ。だって可愛いもの。想像の中のラッザが可愛くて、私は思わず笑ってしまう。
「メリ姉さん、すごいだらしない顔してる」
「ソル、うるさいわよ。だって幸せな妄想しちゃったから仕方ないじゃない!」
「ソル君、メリちゃんはこういうところが可愛いんだよ」
ソルに言われた言葉に反論すれば、ラッザが笑ってくれて……私はやっぱりラッザが大好きだなと思った。




