小さな王子様と参加する姉の結婚式 ①
「マリッサの結婚式に、ラッザも一緒に参列しようね」
「うん」
私とマリッサは、もうすぐ十八歳になる。
マリッサは、ようやくジェズアルド様と思いを通じ合わせることが出来、結婚することになっているのだ。
マリッサは昔からジェズアルド様のことが好きで、ずっと一途に思っていたからマリッサの結婚式だと思うとなんだか感慨深い気持ちになる。
……だけどちょっとだけ寂しさを感じるのは、やっぱり双子の姉であるマリッサが離れていくような気持ちになるからかな?
「マリちゃんの結婚式、結構人が来るのかな?」
「そうね。沢山来ると思うわ」
「そこに参加するの、ちょっと緊張するかも」
「ふふ、大丈夫よ。ラッザは私の未来の旦那様なんだから、身内として参加するのは当然だから」
ラッザはもうすぐ十一歳になる。まだまだラッザのご両親は元気なので、ラッザはこのまま騎士見習いになって騎士を目指す予定らしい。ラッザの家は、頃合いを見てラッザが継ぐことになるんじゃないかな? って感じみたい。
少しずつラッザの背は伸びていて、少しずつだけど大人に近づいてきている。
可愛いラッザも好きだけど、大人になったラッザはどのくらいかっこよくなるのかしら? と私はドキドキしていたりもする。だって今だってラッザはとってもかっこいいのよ? それなのにラッザがもっとかっこよくなるなんて……想像しただけでもドキドキして仕方がないわ!!
「メリちゃんがそう言ってくれて嬉しい」
「当たり前よ。ねぇ、ラッザ。騎士見習いになったら色んな人と会うことになると思うわ。嫉妬深いと言われるかもしれないけれど、なるべく女の子とは仲良くしないでね?」
私はラッザが女の子と仲良くしているのをいやだななどと思ってしまう。私の方が年上なので、もっと余裕があった方が大人の女性って感じでよいと思うのだけど……でも私はラッザが誰かと仲良くしていると寂しいと思ってしまう。
余裕のなさになんとも情けないとは思うけれどね。
「うん。もちろん、メリちゃんもあんまり男の人と仲良くしないでね」
「当たり前よ。そもそも私、社交界に出ても家族と最低限のダンス以外もしていないもの。ふふ、面白いのよね。社交界の場だと私男にも結婚にも興味ないって思われているのよ? ラッザっていうお相手がいるのに」
私は結婚していてもおかしくない年だ。
だけれども誰とも結婚なんてせずに、異性とも仲良くしていない。だからこそあんまりそういうことに興味がないと思われているようだった。
あとは周りにいる家族などの男性がハイスペックなので、そのあたりで理想が高いのではと思われていたりもする。
まぁ、確かに私のお父さんも弟たちもかっこいいとは思うよ。でも、私にとって一番かっこいいのはほかでもないラッザなのよね。ラッザだからこそ私は一番かっこいいって思うの。
私がお母さんとお父さんの娘だから、私のことををお嫁さんにしようとする人は今もいる。しつこい人はお母さんとお父さんが追い払ってくれた。あとマリッサにも年の差のあるジェズアルド様じゃなくて自分の方が――なんて馬鹿なことを言う令息もいて、思いっきりマリッサにぶっ飛ばされてた。目撃者多数だったし、マリッサがとがめられることもなかったけれど。なかなか良いストレートだった。
「僕が社交界デビューしたら、僕といっぱい踊ってね。メリちゃん」
「もちろんよ。むしろラッザと以外、そんなに踊る気はないわよ」
私がそう言ったら、ラッザは笑ってくれた。
ラッザの笑みを見ていると、私はやっぱりラッザのことが大好きだなってそんな気持ちになる。
ラッザが社交界デビューした後に、私がラッザと仲良くしていたら色々噂になりそうだけど……まぁ、問題ないわよね!
むしろ私がラッザを独り占めする形になるから、いろいろ周りから言われる可能性もあるわよね。お母さんとお父さんのおかげでそこまで露骨には来ないだろうけれど、そういう時に負けないようにしないと!!
そんなことを考えながら、ラッザと楽しく話した。
私はマリッサの結婚式の準備のために、王都とフロネア伯爵領を行き来して忙しくなった。だって双子の姉であるマリッサの晴れ舞台だから、私もめいいっぱいお祝いしたかったんだもの。
お母さんも凄く楽しそうにしていた。というか、張り切りすぎだと思った。
あとうちの屋敷の侍女たちはお母さんが久しぶりに着飾るからって、すごく張り切っていた。
お母さんって貴族らしくパーティーとかにもそこまで出ないものね……。でも流石に娘の結婚式だからって、お母さんもちゃんと着飾ることにしたみたい。
お母さんは魔力量が多くて、それでいて体中をうまく循環している――《循環者》と呼ばれる存在だ。だからこそ本当にびっくりするぐらいいつまでも若々しいし、元気なんだよね。お父さんもハーフエルフだから、人間よりも老いるのが遅いし。
私の両親って、一緒に居ると両親だって思われなかったりするし。
そういうお母さんとお父さんを着飾らせるの、使用人たちは凄く楽しいみたい。
そしてそうやって準備をしていれば、マリッサの結婚式の当日になった。
時系列 伯爵令嬢は騎士様に恋してる。のすぐあとぐらい。




