君を待って
短いです。
僕と彼女は、結婚した。
錬金術師の僕は、初めて好きになった優秀な治癒師の彼女と、晴れて結ばれた。
新築の一軒家を買い、二人の家にした。
その頃は有頂天だった。
毎日彼女の姿が見れて、毎日彼女と会話できて、毎日彼女の笑顔をもらえる。
これ以上ないくらい、幸せな日々だった。
そこに亀裂ができたのは、結婚からひと月ほどたった頃。
魔獣の大規模侵攻が予測され、当時名を馳せていた彼女は、戦場へ駆り出されることになったのだ。
対して僕は錬金術師。魔術はできなくはないけど強くなんかない。錬金術とは何かを創り出す仕事だったから。
僕は主に薬師のような分野を得意としていたため、彼女の出立までに回復薬なんかをできる限り用意した。
別れはなんともあっけなかった。
転移陣に乗り、戦場付近まで行ってしまった彼女を、僕はただ見送ることしかできなかった。
それから、僕は近くの山に籠もるようになった。
次は、僕も力になりたくて。せめて、もう少し役に立つものを創れるようにしたくて。
侵攻の終結を知ったのは、それから数ヶ月後のことだった。
彼女に会える。そう信じて、僕は待ち続けた。
一日経った。彼女はまだ来ない。
二日経った。彼女はまだ来ない。
三日経ち、四日経ち、五日経ち…一週間が経ち、二週間が経ち…一ヶ月経っても、彼女は現れなかった。
彼女が僕を忘れるなんてわけない。まして、死んだりなんてするものか。
あの日、僕達は約束したんだ。きっとまた会える。
僕はまた山に籠もった。
家には置き手紙を残した。
『帰ってきたら、教えてください』と。
そうして月日は流れ…
一年が経ち、二年が経ち…幾度か季節を繰り返したところで、数えるのはやめた。
僕は信じるだけだ。
彼女は、きっと帰ってくる。
一時間後に次話投稿あります。