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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
17 トップ冒険者の伝説
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トップ冒険者の伝説 4

 カニの後ろから出現したのは、熊だった。目の前の大きなカニにはあまり恐怖を感じなかったのにも関わらず、その熊の威圧感にサクラの心は既に負けていた。それは当然かもしれない。元の世界でカニは食用であるが、熊は一番身近な出会いたくない動物なのだ。ライオンや狼は動物園などに行かないと会えないが、熊はそうではなかった。彼女の住んでいた場所にも、山から出てきた熊が餌を求めて歩いているなんてことは、夏になれば何度かあるのだ。そして、彼女は窓越しではあるが、大きな熊が町を歩いているのを見たことがあった。その熊が一瞬だけではあるが、彼女の方を見た。口から覗いていた歯は鋭く、我が物顔で人の町を歩ているのだ。窓があっても、自分が得物だと理解できる程度には恐怖した。だから、異世界に来ても元の世界の大剣が無くなるわけではない。彼女は熊に出会う恐怖が蘇っていたのだ。


 その熊の得物はカニだ。倒れたカニの甲羅を含めてバキバキと食べている。甲羅の緑の部分が熊の口の辺りについて、それが顔に広がった。明らかに緑の毒が広がっているのにも関わらず、熊はそれを気にせずカニを食していた。サクラは完全に足が地面にくっつているかの如く、動かない。その間も熊はカニを食べ続ける。やがて、緑の広がりが治まったと思ったら、その緑の範囲が徐々に少なくなっていった。最後には既に緑色の部分はなくなっていて、元の熊に戻っていた。そして、食事に満足したのか、熊がサクラの方に視線を向けた。


 熊は二足で立っていて、その高さはカニより高い。サクラの二倍くらいの背の高さで、彼女を見下ろしている。口元にはカニの甲羅の破片が付いているが、それをお茶目と笑える見た目ではないのだ。手の爪は鋭く、体が大きく、周りの機など簡単になぎ倒せそうだと思わせる見た目。その怖い見た目でサクラをじっと見ているというのは、サクラにとっては気が気ではないことだ。


 グルゥ……


 熊が少し唸るだけで、サクラの肩がびくりと上がる。熊は前足を地面に降ろしてサクラに近づいていく。サクラはかろうじて、ハサミを構えることが出来たが、立ち上がるのにはまだ時間がかかりそうだった。それでも、彼女は恐怖と戦い何とか戦おうとしていた。片方のハサミを杖にして立ち上がった。


 グゥルゥウ……


 相手の口から唾液が地面に落ちていた。明らかにサクラを食料として見ているのだ。今倒したカニがどんな味なのか知らないし、知りたくもないが、カニだけでは足りなかったのだろう。それに熊にとってはサクラがどんなことをしてして生きているのかは関係ない。彼女がいなくなると、この森の魔獣が多くなるが、熊が負けるわけでもない。結局、目の前の熊には関係ないのだ。食欲を満たす。目的はそれだけだ。


 熊が目の前まで来る。彼女は立つので精一杯だ。しかし、ここで負ける食われるわけにはいかない。まだ、この世界でやるべきことも、やりたいこともできていないのだ。こんなところでミラクルガールがやられるわけにはいかない。


 彼女がそう考えるだけで、ハサミが淡く光る。その光が、サクラの体に移動して、微かな光は彼女の手の甲から彼女の体内へと吸い込まれた。その瞬間に胸の辺りに微かではあるが熱を感じた。心に火を灯すというのを、感じられるとすれば、こういう感覚なのかもしれない。既にハサミの支えが無くとも立つことが出来る。恐怖に勝ったというより、それが気にならなくなるほどのやる気、闘志が溢れているという感覚だ。


「これなら」


 彼女が両手のハサミを構えて、戦闘態勢を取る。熊も彼女の闘気を感じたのか、二足で立ち上がった。先ほど感じていた威圧感はなくなっていないが、それに抵抗することが出来る。この闘志がどれだけ持つのかはわからないが、彼女は今、戦うことに集中することにした。


 最初に動いたのは熊だ。前足を振り回して、サクラに当てようとしているのだが、狙いを着けていないせいで、サクラは簡単に回避している。相手の攻撃を潜り抜けながら、ハサミを元の形に戻して、相手の胴を開いた刃の間に入れた。そのまま、刃を押し付けながらハサミを閉じる。かなりの抵抗があり、ハサミを閉じることは出来なかったが、相手の両の横腹から血が流れていた。熊が後ろに引いたため、その傷が腹の方まで斬れたが、痛みを感じていないのか、熊には傷ついた様子はなかった。それどころか、熊は自身の前足を口に突っ込んで唾液でべとべとにすると、それを切り傷に塗りたくった。唾液の塗られた部分は赤く滲んだが、出血が止まったようでそれ以上、血が流れている様子はなかった。まさか、唾液で止血するとは思わなかったため、サクラは内心驚いていたが、それを表に出すことはない。彼女はハサミを再び分裂させて、相手に追撃しようと前にでた。

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