トップ冒険者の伝説 1
サクラは冒険者ギルドに一人で来ていた。ラピスは彼女のことを心配していることは心配しているが、今は一人で行動しても大丈夫だと考えているため、ラピスは来ていない。彼女は町長から頼まれた用事を済ませるとサクラに言っていたので、サクラはそれだけで納得して一人でここまで来ていた。オブのお見舞いをしてから、ギルドの掲示板を見ていた。魔獣討伐の依頼がほとんどで、他の依頼のスペースが圧迫されている。それも仕方のないことで、この町の一般的な冒険者の強さでは敵わない魔獣ばかりなのだ。そして、つい先日もフローの試験をした冒険者であるフィムストのチームが森の中で大変な目に遭ったところを男性に助けられたという話もある。試験官が出来る冒険者でも敵わない可能性がある魔獣がいる森となれば、それ未満の実力だと理解できている冒険者はまず手を出さない。フローが魔獣の討伐を行っていることを知っているが、一人でどうにかできる依頼の量ではないのだ。むしろ、彼女がかなりの数の魔獣を討伐しているからこそ、町にはほとんど影響が出ていないと言っていいだろう。隣街から来る商人も強力な魔獣に遭うことなく、この町に通常通りに商品を届けてくれているのだ。商人もこの町が異常な状況は知らされているが、彼らが見えている範囲では、その異常なことに遭っていないため、通常通りに商品を届けてくれているというわけだ。その街道をフローは知らずに守っているということになる。
サクラは掲示板の依頼を見て、何枚か手に取った。そこに書かれた魔獣の名前を見ても、それがどんな魔獣なのかわからない。一応、彼女が知っている単語も入っているが、その単語が彼女の知っている単語と同じ意味なのかは分からないのだ。彼女が手に持っている依頼書には、フォレストキャンサー異常種の討伐と書かれていた。人と同じサイズだと書かれているらしいのだが、もしこれがカニだとするなら、かなり大きなカニだ。少なくとも、サクラの元居た世界には、そんな大きさのカニなんて聞いたことがない。と言うか、そんなカニがいれば話題にあるどころか、討伐のために軍が動いただろう。そういうニュースなんて聞いたことがない。依頼書を見ながら、そんなことを考えていた彼女は久しぶりに受ける依頼をこれにしようと決めた。この雷所を見る限り、そこまで強い魔獣には見えない。ハサミに挟まれないように気を付けること、背中の緑の模様には触れないようにすることと言う注意事項は書いてあるが、きっとそれを守るのは難しいことではないだろうと楽観視して、その依頼書をナチュレに渡した。彼女はサクラの顔をじっと見ていた。
「本当に、この依頼を受けるのですか。この魔獣の毒はかなり強力です。サクラさんの実力は知ってはいますが、この緑の毒に侵されたら、本当に死にますよ」
彼女の真剣な瞳を見て、サクラはどのを鳴らす。彼女がここまで言うのは珍しい。フローと一緒に受けた魔獣軍団と戦った時も止めようとはしなかったのだ。今回だけ止められるというのは少し不思議だった。
「この魔獣は異常種です。元の魔獣とは比べ物にならない程、強力になっている可能性があるのです。絶対に油断しないでください。この依頼書に書かれている注意事項は全てではないと思ってください。この魔獣の全ての行動に対して注意していてください。良いですね」
ナチュレが饒舌に話すのを聞いたことはほとんどない。ましてや、サクラが依頼を受けるときはほとんど何も言わないことがほとんどで、何か言っても二、三言くらいだ。それがここまで言うということは本当に危ないと思った方が良いのだろう。変身してもそれを貫通してくる攻撃があるのはアクアリウスとの戦闘で理解していた。ゾディアックシグナルだけの力だと思わない方が良いのだろう。彼女は肩慣らしと考えていたが、そんな考えで受けるべきではない。しかし、彼女はその依頼を受けることにした。理由は簡単だ。それだけ危険な魔獣を放置すると、いつか町の人にも被害が出ると思ったからだ。
「この依頼、受けます。本当に気をつけていってきます」
サクラが真剣な面持ちでそういった。ナチュレは彼女のその表情を見て、結局依頼を受けるのを認めてしまった。一人で受けるべきではないが、他の冒険者は彼女の足を引っ張るのは明らかだ。サクラの性格を考えるなら、一緒に来た仲間が危なくなれば庇うだろう。それは明らかに足手まといなのだ。フローは庇う必要がないと信じているため、彼女が庇いに行こうとはしない。それ以外の冒険者は明らかに肩を並べられるほどの実力の物はいなかった。
「では、行ってきます」
サクラはそのままギルドを出ていった。




