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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
16 悪に沈む
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悪に沈む 6

 フローは相手の攻撃を盾で防ぎながら、剣で攻撃できそうなタイミングを計っていた。今、彼女は盾で攻撃を防ぎ、防ぎきれなかった攻撃を回避している。その中に未だ、攻撃できそうな隙が見つからない。正確には、攻撃できるタイミングはあるのだが、攻撃するために手を出せば、次の攻撃が防御、回避が出来なくなるのだ。攻撃をもろに一撃でも食らえば、体勢を立て直す時間を貰えるわけがない。一度、体勢を崩されたら、戦闘するより逃げるのを優先しなくてはいけなくなる。


「防いでばかり、逃げてばかりだな。そんなで戦っているというつもりか? 本気を出せ!」


 怒声と共に、重いパンチを盾に受けた。今までよりも、強い衝撃が加わり、彼女は後ろへと飛ばされる。翼を器用に使い、衝撃を宙へと逃がして、地面に足を付けた。そこへ、相手の追撃が彼女を襲う。何度も何度も繰り出されるパンチとキックを盾と剣で捌いていく。もはや、攻撃できる隙など無い。連撃を捌くだけで精一杯で、攻撃に思考を回すことすらできない。盾もかなり凹んだりかけたりしたが、彼女の超能力で盾を再構築して、盾を元に戻していた。しかし、それもずっとできるわけではない。ミラクルガールに変身しているとは言え、その力はずっと使える万能の力ではないのだ。連続で使用していれば確実に疲れが出てくるし、体がミラクルガールの負荷に耐えられなくなれば、勝手に変身は解除されてしまう。彼女もそれを理解していて、少しばかり焦りを感じ始めていたのだ。焦り始めると、相手の攻撃を捌く技術も徐々におざなりになっていく。そして、彼女は防ぎきれなくなり、肩に重い拳を軽く受けたはずなのに、その拳の衝撃に耐えられなくなり、地面を転がった。


「焦ったな」


 フローは回転が止まった先で変身が解除され、胸の辺りに鍵が乗っていた。息は荒く、肩の骨が砕けているんじゃないかと思えるほどの痛みが肩にある。彼女は胸に乗っていた鍵を手に取り、再び胸に差して捻る。変身は出来るものの、先ほどより全身に力は入らない。それは変身したからと言うよりも彼女自身が体力を消耗したからだろう。彼女には魔法を使うという選択肢もある。しかし、変身が解かれたことで、より焦りが表に出てきている。それを相手も理解しているのだ。


「ふん。さて、どうする。命乞いをするか、まだ戦うか」


「私を逃がすのか?」


 フローは肩を抑えながらも、相手を見つめてそう訊いた。最初の相手の様子から、この戦闘に負けることがあれば、確実に死ぬだろうと覚悟していたのだ。それがいきなり、そんなことを言われた。彼女が疑問に思うのも当然かもしれない。


「そうだな。本来なら邪魔になるミラクルガールは今、始末するのが良いんだろうが……」


 相手は腕を組み、彼女をじっと見ていた。相手にも何かりゆうがあるのかもしれない。フローは逃げる問う選択肢を選びたくはなかった。しかし、ここで死んで何もできないままと言うよりは、ここで何としてでも生きて帰ることが出来れば、リベンジもできるだろう。そんなことを考えていた。


「生きて帰れるなら、そうしたい。命乞いとは、どうすればいい?」


 相手が完全に返事をする前に、フローが先に問うた。相手はその声にフローに視線を向けた。だが、再び何かを考えているかのように、視線は宙にある文字を読むかのように動いていて、彼女のことを放置していた。それがやがて終わり、彼女の前へと移動した。


「その闘志、熱意。熟れる前に狩るのはもったいないな。次は殺すからな、それまでにより強くなっていることを願う。ではな」


 相手はそれだけ言うと、森の中に消えていった。彼女は再び、変身が解けて、地面に座り込んでしまった。鍵は彼女の目の前に落ちて、小さな金属音を鳴らした。座り込んだまま、立てない彼女はそれでも鍵を回収した。


 何とかなった。生きている。それが今の彼女の感想の全てだ。明らかに負けた。その事実は彼女をさらに落ち込ませる。それでも、戦闘で得たものはあっただろう。見えていた課題、この戦闘で気が付いた課題。サクラと肩を並べて戦うにはまだまだ、鍛えるべきことはたくさんある。しかし、今だけはあの戦闘で生きて終わることが出来たことに、心の底から安堵してもいいだろう。何度か深呼吸をして、息を整え、動悸を収める。それに伴い、多少は心も落ち着いていた。


 彼女はこの戦闘のことが重くのしかかる。冷静になったからこそ、自分が何もできなかったことを思い知らされたと思っていた。彼女が感じた通り、レオとの戦闘で彼女は全くなにも出来なかったと言っていい。傷一つつけられなかったのだ。今までの彼女があしらってきた敵は明らかに違うもの。彼女は改めて、サクラと一緒に戦うことの厳しさを思い知った。それと同時に、もしサクラが何も気にせず、心の底から本気になったとすれば、レオもきっと敵ではないのだと感じた。その背中に追いつくことを彼女は改めて目標にしようと、決意していたのだった。

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