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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
16 悪に沈む
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悪に沈む 2

「なぁ、サクラ」


 オブの見舞いに来たサクラの様子が少しだけおかしいことに、オブは気が付いていた。最初にいつものように振舞ったのは、サクラのいつも通りの様子を見られるかもしれないと思ったからだ。結果は、サクラの元気がないということが分かっただけ。そして、彼女は口は悪いが、多少なら相手のこともわかる人だ。一緒にいた時間が長い、サクラならなおのこと。全部察しているというわけではないだろうが、自分を見る度にすこし悲しそう感情が見えるのがわかってしまった。


「サクラのせいじゃねぇんだよ、この傷は。オレが、あの瓢箪を倒したと思ったのがわりぃんだ。てめぇを責めんじゃねえ」


「……でも、私が、気が付いてたら、きっと、こんなことには、ならなかったんです。アクアリウスに岩の魔法なんて使わなければ、もっと良い方法があったはずなんです……」


 サクラの言葉を聞いて、オブは少しだけイラついていた。サクラにもむかついていたが、何よりあの時にサクラの実力に依存して、油断してしまったことにむかついていた。油断していなければ、躱せたかもしれない。少なくとも、腹に穴を掛けられるなんて、馬鹿なことにはならなかったはずだ。彼女も冒険者なのだ。それくらいの反射神経はある。


「サクラ。オレはサクラに守られ続けるほど弱くないつもりだ。オレもサクラも冒険者だ。自分の身を自分で守れないのは、そいつが悪い。そうだろ?」


 オブがそう言っても、サクラは納得していない、と言うか、不満そうな表情をしている。オブは一つ吐こうとした息は喉から先には出ず、それを飲み込んだ。それから、彼女は静かに声を出す。


「正直、サクラに守ってもらおうなんて思ってねぇんだ。オレはオレで戦いたい。それとも、サクラはオレの実力を信じられないか。守ってやらないと、一緒に戦えない程、オレには力がないって、そう思うか?」


 彼女自身、ずるい聞き方だと思った。その言葉は誘導していると言ってもいい。しかし、サクラが本当に実力がないと思っているなら、それに嘘はつかないとも考えていた。だから、本当に力がないと彼女が言うのなら、これ以上、ああいった強い敵が来るときに手を貸そうなんてでしゃばるのを止めようと思っている。


「……弱いのは私も同じです。オブ姉はきっと、私より強いんです。今だって、私のための怒ったり、諭したりしてくれてる。そんなあなたの実力を誰が疑うんですか。……オブ姉、ごめんなさい。少し頭に血が上っていました。全部自分のせいだなんて、自分を過信しすぎてました」


「ああ、それでいい。……なぁ、怪我が治ったら、またリキュアライフに行こうぜ」


「そうですね。快気祝いをしましょ!」


 それから、サクラは元に戻ったかのように屈託のない笑顔を浮かべるようになった。


 ラピスはその笑顔をみて、安心した。それを彼女は自覚した。安心は、こんな風なのか。自分に心がないと思っていたが、サクラと出会ってからは、そんなことはないんじゃないかと思えるようなことが沢山起きている。朝、サクラと会って、挨拶を擦るだけで、胸の辺りが軽くなるような気がする。彼女に食事を作って、美味しいと食べてもらえれば、無いはずの心臓が強く鼓動するような感覚がある。彼女と別れる時は、胸の辺りが重くなるというか、水を含んだような気分になる。彼女が隣にいない時間は、無くて当たり前のはずの心臓が鼓動しないのが空虚で寂しいと感じる。これが心なのかもしれないとなんとなく、そう思った。彼女にとって、なんとなくとか、理由もなく、何かを感じるというのはおかしなことだった。彼女が起こす全てには大なり小なり理論や理由がある。その理由は基本的には命令されたから、頼まれたからなのだが。それでも、この心をなんとなくで感じる、と言うのは、彼女にとっては不安でしかないことだ。最初からあったわけではない心を信じてみるというのだから、怖くないわけがない。それでも、サクラと一緒にいれば少しは怖くなくなっているのだ。そして、サクラの感じているもの、ことと同じようなことを感じることが出来るなら、それはとても素敵なことだ。オブとサクラが話している傍らで、彼女はそっと胸の辺りに手をやった。オートゴーレムの格は腹の辺りだ。そして、心臓はない。しかし、彼女はその胸の辺りに確かにこころがあるのだと、そう思えた。そうでなければ、この目の前の光景を見て、感じているこれをどう説明するのか、わからない。この光景に何かを感じているその理由を心以外で説明するのは、彼女にはできなかった。


 オブとサクラが話を終えて、ラピスと共に部屋をでた。どんよりとした雰囲気を纏っていたサクラが晴れのような笑顔を見せていたため、ギルドにいた冒険者たちも笑っていた。彼女には笑顔でいてほしいと他の者たちも思っていたのだった。

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