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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
15 アクアリウス
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アクアリウス戦の後に

  アクアリウスのみずがめ座の力を封印した後、サクラは何とか一人で歩ける程度には体力が回復しているようで、ハサミを杖代わりにして立っていた。彼女はフローに肩を貸して、二人で支えあうようにして立ち上がった。アクアリウスが憑りついていた瓢箪の欠片が辺りに散乱している。そこにあるどの欠片も既に動く気配はなく、アクアリウスはどこかに消えた。力を封印したのと同時に、消失したのかもしれない。どちらにしろ、力は封印したのだ。もう、こんな問題を起こすほどの力は持っていないだろう。


 ラピスはオブの近くに立ち、体に空いた穴を見ていた。出血が少なく見える分、死には遠いように見えなくもないが、腹の穴がそう思わせない。彼女はまだ息をしている。死んではいない。しかし、どれだけ持つかわからない。


「ラピス……。ナチュレさんの、ところに、行きま、しょう。あの人なら、きっと、な、治してくれ、ますよ」


 サクラもフローももはや限界だろう。ミラクルガールで強いとは言え、それを貫通して火傷を負わされている。服は解けていないが、その服の下がどれだけ酷いことになっているのか、想像もしたくないだろう。ラピスはサクラの言葉に従い、オブを背負った。彼女の背中にオブの血が付いた。ラピスはその血に熱と生を感じていた。この人を生かしたい。死なせてはいけない。彼女はサクラを置いて、ギルドに向かった。サクラもそれで安心したのか、その場にしゃがみこんでしまった。フローもそれに文句は言わない。


「ごめん、なさい。フロー。ほんとは、」


「いいんだ。私は、サクラの、為だったら、」


 もはや、かすれた声が外に出ても言葉にはならない。サクラとフローの変身が勝手に解除された。それぞれの足の上にそれぞれの鍵が落ちた。二人は手を握りあい、路地裏で身を寄せながら疲れを癒す。眠ることもなく、とてつもなくハードな戦闘をこなしたのだ。今、休憩することくらいはきっと誰もが許すだろう。


「休憩、してから、ラピスを負いま、しょう」


「わかった。少し、休むとしよう」


 今にも眠りそうなセリフだが、二人が眠ることはなかった。サクラが路地の狭い通路から空を見上げて、そこには白い雲が敷き詰められた。晴天ではなかったが、それが今は心地が良かった。




 ラピスは町中を疾走する。二人とすれ違う人たちは二人を見ていたが、ラピスが本気で走れば、振り返った時には既に遠くにいる程度の速度で走ることが出来た。しかし、彼女が何者かわからなくとも、彼女の背に背負っている物を見て、すれ違った人は全員、目を丸くしていただろう。中にはその痛みを想像して、苦々しい表情をする者もいた。しかし、誰一人として悲鳴を上げることはない。それは魔獣と戦った冒険者がたまにそんな状態になって運ばれることがあるからだった。


 冒険者ギルドの扉が思い切り引かれた。その音に、全員が出入り口の方をみた。そこにオブを担いだラピスがいる。その様子を全員が不思議そうに見ていたが、やがて受付にいたナチュレが彼女に近づいていく。


「すみません。何か御用ですか」


「あの、ナチュレさんと言う方に、この方を治していただきたいのですが、可能でしょうか」


 ラピスは焦りながら、早口にまくし立てる。ナチュレは彼女の早口を聞き取り、彼女が背負っていた人物に目を向けた。その人物はもちろん彼女も知っている人だった。


「まさか、オブシディアンさんっ? そんな、彼女がこんなになるなんて。いや、今はそんなことは良いわ。こちらへ」


 ナチュレはラピスに師事を出して、ギルド内のベッドのある部屋に通された。そのベッドにオブを寝かせて、ラピスはベッドから離れた。それからはナチュレが治癒師としての腕を振るい始めた。ラピスは治療は彼女に任せても大丈夫だと判断して部屋を出た。彼女は向かう場所はただ一つ。未だこのギルドに来ていないサクラとフローのいる場所だ。あそこまで傷ついて、いつも通り歩けるとは思えない。彼女はギルドを出て、今来た道を走って降りていった。


 ラピスがサクラとフローを迎えに行っている間、二人は未だ路地に座り込んでいた。来ている洋服は綺麗だが、彼女たちの体には火傷の後はまだ残っていた。もし、その様子を通行人が見れば、すぐに助けを呼ぶような状態だった。


「サクラ、フロー。まだ、ここにいますか?」


 路地の通りの方から、ラピスの声が聞こえた。サクラは返事をしようと声を出そうとしたが、空気が喉につまり声が外に出ず、咳き込んだ。その咳を聞いて、ラピスが二人のところまできた。ラピスは二人を見て、戦闘していた時より傷がひどくなっているようにみえた。傷の大きさは変わっていないが、変身の影響で体が丈夫だっただけで、それが解けてしまった今、二人は自身の抵抗力で紫の液体の効力に抵抗しているのだ。さらに戦闘中の消耗はそのままだ。二人がぐったりしているのも無理はない。ラピスは、サクラを背負い、フローを横抱きで持ち上げた。その状態ではオブを運んだ時のような速度は出ないが、一人ずつ運ぶよりは速い。ラピスはその状態で再びギルドに戻った。

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